ソーシャルワーク研究所

−シンポジウム情報−

「第18回シンポジウム」の参加者募集は終了いたしました。(2023年11月22日)

  ・開催要項(PDFファイル)はこちらからダウンロードできます。

◎「第18回シンポジウム」に参加される皆様へ
「第1部−主題の学び−」では、事前に実施する参加者アンケートをもとに講師が「応援メッセージ」を届けます。本日、参加が確定した申込者にアンケート依頼のメールを送信しました。ご協力をお願いします。(2023年11月1日)

◎「第18回シンポジウム」に参加される皆様へ
参加者事前アンケートは締め切らせていただきました。ご協力、有り難うございました。(2023年11月15日)


(敬称略)

第18回ソーシャルワーク研究所シンポジウム

総合テーマ
ソーシャルワーク専門職が取り組むアセスメントの特徴と支援ゴールの設定
−「求められる支援」を届ける方法と課題−


開催趣旨

 2019年12月に中国湖北省の省都・武漢で確認された「最初の感染者」の報告から始まった新型コロナウイルス感染症は、わが国でも多くの人びとが「生活様式」を大きく変えざるを得ない事態をもたらした。その一方で、現在、「ウィズコロナ」「アフターコロナ」を想定した新しい「暮らし」の定着と、それを支える政策的対応の模索が始まっている。
 しかし、「社会問題の個人化論」の浸透と相まって、何がしかの「苦しみの構造」を抱えている人びとに思いを寄せようとしない社会的風潮が顕在している。また、今や社会福祉の制度運営におけるメインストリームとなった「包括支援」に内在する課題も明らかになってきた。すなわち、ソーシャルワーク専門職が担う支援過程に見いだせる、個々人の事情に配慮しない画一的支援のゴール設定や、支援の押しつけ(paternalism)が常態化する事態の拡散である。
 社会制度は、対象となる事象を「マス(mass)=かたまり」と捉えてシステム化するため、「対象の対象化」問題を内在しつつ運営せざるを得ない側面をもつ。その事象に該当する当事者は、抱え込んでいる難題を「他人には理解できない個人的事情による私だけの生活上の問題」と受けとめがちなため、次第に社会の隅に追いやられ、孤立化することも希でない。当研究所は、かかる事態を「制度の狭間」問題と提起してきた。ソーシャルワーク専門職として、「対象の対象化」から派生する「システムエラー」「ヒューマンエラー」の解消を図り、事態の改善を目指して、「一歩前に踏み出す」「ボトムアップ〈bottom-up〉型志向」を特徴とする自らの職業の社会的意義について受けとめ直す必要を問いかけてきたのである。
 当研究所が創刊に尽力した雑誌『ソーシャルワーク研究』(相川書房)編集委員として1980年から参画された故・久保紘章法政大学教授は、他者の「生の過程」に介在するソーシャルワーク専門職への「エール」の意味を込めて「人びとの生活や存在そのものの『重さ』に打ちのめされ、自らのこだわり(持論)が『色あせる』ように感じる経験をする必要はないか。社会福祉実践に関する学びは、このような経験を自ら克服することから始まるのかもしれない」とし、このことを国家資格の取得者として真摯に受けとめ、支援過程で「知識の切り売り」に陥らないよう努めるべきとも語られた1)意味を共有してみたい。
 併せて、私達は、ソーシャルワーク専門職として理論・技能(art)・倫理(価値)や、自らの「専門性(speciality)」に裏打ちされた支援関係の構築を図る努力をなす際、繰り返して指摘されてきた安直な経験至上主義的思考(経験・勘・骨(こつ)・直感)の功罪を自己検証する努力が求められる。つまり、@自分の「こだわり(=持論(practice theory-in-use)」に固執しがちな傾向(bias)を自覚(=自己覚知)し、他の捉え方と相対化する中で、自身のスタンスを絶えず内省的に点検・検証する意識的作業を続けること。さらに、A利用者が直面している「現実」への分析を欠落させない視点(アセスメント:assessment)に立つ介入方法(=他者理解)を身体化(performance)できることである2)。
 ソーシャルワークを論じる際の「共通基盤(common ground)」が未だに定立をみない実態に鑑み、第18回シンポジウムでは、あらためて、ソーシャルワーク専門職が「実践」と「理論」を繋ぐ「視座」を持ち合わせるべき意味を検討してみたい。いわゆる「かかわり困難」事例に「対峙できない理由を探す」のではなく、時に後ろ向きになりがちな「拘り」から身をずらし(=脱構築)、ソーシャルワーク専門職として責務を捉え直しつつ(=再構築)「前に進む」ために、ソーシャルワークの「実践」と「理論」を繋げる作業の「切り口(viewpoint)」として「アセスメントに取り組む作業に内在する課題」を検証(自己覚知)し、「求められる支援」について再考する機会としてみたい。

注 1)久保紘章(聞き手:北川清一)「実践と理論をつなぐもの−当事者・現場の人たちとのかかわりから−」
   『社会福祉研究』第84号、鉄道弘済会、2002年。2時間に及ぶ聞き取りであったが、この「エール」は途
   中の休憩の際に語られた。
  2)北川清一「児童養護施設のソーシャルワーク実践と権利擁護−実践原則の汎用状況を生成する視座−」北
   川清一編『社会福祉の未来に繋ぐ大坂イズムの継承−「自主・民主・平和」と人権視点−』ソーシャルワー
   ク研究所、2014年。


● 開催日時 2023年12月10日(日) 13:00〜18:00
● 開催場所 明治学院大学白金校舎(東京都港区)およびオンライン(Zoom)
● 募集定員 100名(対面型:70名、オンライン型:30名。募集開始は2023年9月15日です。定員になり次第締め切ります。)
● 参加費  5,000円
● プログラム

【開催趣旨と進行方法の説明】     13:00〜13:10
所  長:北川清一(ソーシャルワーク研究所所長、明治学院大学名誉教授)
総合司会:新保美香(明治学院大学教授、ソーシャルワーク研究所相談役)

第1部 【主題の学び】        13:10〜13:45
     〈 応 援 メ ッ セ ー ジ 〉
講  師:渡部律子(日本女子大学名誉教授、ソーシャルワーク研究所相談役)
「クライエント(利用者)と対人援助職の双方が『希望』を持ち続けるには」
司会進行:新保美香

第2部 【指定討論】         13:55〜16:20
     〈 現場実践者が語るアセスメントの取り組み 〉
発題者1:渡辺ゆりか(草の根ささえあいプロジェクト:代表理事)
「生きづらさを抱える子どもや若者の生活・就労支援の方法と課題
−本人と企業を繋ぐアセスメントの特徴と支援ゴール−」
発題者2:山由美子(救世軍世光寮:家庭支援専門相談員主任)
「『子どもの権利』を擁護するために『子どもの声を聴く』方法と課題
−児童養護施設実践を支えるアセスメントの特徴と支援ゴール−」
発題者3:谷  義 幸(公立神崎総合病院:ソーシャルワーカー)
「退院支援から『一歩前に踏み出す支援』の模索
−ソーシャルワーカーの実践を支えるアセスメントの意義と特徴−」
発題者4:安達眞理子(Human Support Believe:代表)
「ピアグループスーパービジョンで実践力を高めるには
−事例検討会で学ぶアセスメントの意義と特徴−」
司会進行:川向雅弘(聖隷クリストファー大学教授、ソーシャルワーク研究所相談役)

第3部 【グループディスカッション】 16:30〜17:50
・六つのグループに分かれて「ディスカッション(質疑応答)」を行います。
・17時20分から約30分間、各ファシリテーターからの「グループディスカッション成果報告」を行います。
・グループ1〜4(対面型)は参加申込み時に希望を伺います。申込み状況によりご希望に沿えない場合があります。
  • [グループ1]ファシリテーター:新保美香+渡辺ゆりか
  • [グループ2]ファシリテーター:沖倉智美(大正大学教授)+山由美子
  • [グループ3]ファシリテーター:稗田里香(武蔵野大学教授)+谷 義幸
  • [グループ4]ファシリテーター:丹野眞紀子(大妻女子大学教授)+安達眞理子
  • [グループ5(オンライン)]ファシリテーター:菅野道生(淑徳大学准教授)
  • [グループ6(オンライン)]ファシリテーター:川向雅弘
司会進行:川向雅弘

閉会の挨拶(総括)          17:50〜18:00
所長:北川清一


● お問い合わせ先

ソーシャルワーク研究所
〒272-0143 千葉県市川市相之川4−6−3−305
TEL & Fax  047-704-8007
E-mail    swkenkyu@mail.meijigakuin.ac.jp
URL      http://www.meijigakuin.ac.jp/~kitagawa/

※お問い合わせはメールでお願いいたします。
なお、回答にお時間を頂戴する場合がございますのでご了承願います。

【過去のシンポジウム】
開催 メインテーマ
第17回
(2022年12月)
暮らしの「転換期」における社会福祉の制度・政策とソーシャルワーカーの役割−一人ひとりの「Life」を支える支援とは−
第16回
(2021年12月)
社会福祉制度の狭間に埋もれる人びとにソーシャルワーク専門職が果たす役割−命と権利と人権の擁護に向けてなすべき支援のあり方−
第15回
(2020年12月)
ソーシャルワーク専門職として支援のウィングを広げる思考の方法−コロナ禍で顕在した生活困難を乗り越えるために−
第14回
(2019年12月)
わが国のソーシャルワーカーは実践の軸足をどこに置くべきなのか−「当事者の暮らし」を支える支援の方法を考える−
第13回
(2018年12月)
専門性に裏づけられたソーシャルワーク専門職が記す「記録」−支援の科学的証拠と説明責任を果たすために−
第12回
(2017年12月)
ソーシャルワーク実践現場における人材育成とスーパービジョンの視座
第11回
(2016年12月)
忘れてはならない地域福祉時代におけるミクロ・ソーシャルワークの視座−「問題認識」の個別化と「問題対処」の個別化−
第10回
(2015年12月)
超高齢・少子社会における「生きづらさ」の諸相とソーシャルワーク−ミクロ・アプローチのゆくえ−
第9回
(2014年11月)
支援困難事例と向き合うソーシャルワークの機能と障壁−専門性を語る視座の進化を検証する−
第8回
(2013年12月)
ソーシャルワークと権利擁護−理念と方略を考える−

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