穴澤 万里子

アナザワ マリコ

演劇身体表現コース

担当授業

【学部】身体表現論概説P/S、演劇身体表現論2年次演習2、西洋演劇研究A/B、演劇身体表現文献講読2A/2B、演劇身体表現論3年次演習2、卒論ゼミナール
【大学院】演劇身体表現論特殊研究IIA/ⅡB、演劇身体表現論演習ⅡA/ⅡB

メッセージ

「演劇」とは何だろう? コース名から想像すると〈身体表現〉? でも演劇って〈台詞〉もあるじゃない? いえいえ、やっぱり〈集団作業〉? 〈総合芸術〉? そもそも〈芸術〉って何?

一人っ子の私は、幼いころから一人遊びが当たり前だった。平凡な子供であったが、ジャンヌ・ダルクとパリジェンヌに憧れてフランス留学を決意したのは小学校時代。そんな私が演劇の道に進んだのは全くの偶然だった。

大学、大学院と憧れのパリで演劇学を専攻した。学問として学ぶ演劇は哲学であり、歴史であった。その大きさに反発して、常に実践の現場に身を置いてきた。そんな折、恩師の作・演出作品に参加する機会を得た。

私が出演したのは、オイディプス王と娘アンティゴネーのその後の物語である。アンティゴネー役を演じなくてはならない若い女優が列車に乗って、国際演劇祭の聖地アヴィニョンに向かうところから話は始まる。いつの間にか眠りに落ちて、列車の中から古代ギリシャへとタイムスリップした主人公は、アンティゴネーの“エスプリ”(私の役!)に導かれ、現在も隠蔽されているフランスの第二次世界大戦の悲劇、ピィティヴィエのユダヤ人の子供移送事件を知るのだ。評価は賛否両論だった。フランスの某新聞は、国際色豊かな俳優陣を演出家の商業目的だとこきおろし、肝心のフランスの歴史の恥部に関しては何も触れなかった。「私達」は抵抗し、劇場を所有している太陽劇団の援助も受けて、3週間のストライキを行った。一人遊びが好きだった私は、この経験を通して演劇という〈集団作業〉に目覚めてしまったのである。この作品に出演した事は今でも私の誇りだ。私の演劇との関係は研究と教育だが、常に実践とアクチュアリティーに寄り添うことを信念とする。研究・教育と現場は本質的に異なるが、影響を与え合い、相乗効果を引き起こす存在でなければならない、と実感、切望しているからだ。

最初の命題に戻ろう。答えは様々だ。ただ私が演劇に関わりたいと思ったのは、自分を1人称単数の「私」から複数、つまり「私達」と呼ぶのが快感だったからだと思う。

明治学院大学芸術学科演劇身体表現コースで皆さんと演劇についてとことん考え、話し合っていきたいと思っています。それが演劇という一期一会の生の芸術を味わう最良の方法だと信じているからです。

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