芸術学科は、学び取る意欲さえあれば、将来の生き方の指針を作ることが出来る場所だと思います

白土 慎太郎
1997年 美術史学コース卒
日本民藝館学芸員

芸術学科で日本美術史の基礎を学び、学芸員資格を取得し、現在は小さな美術館に務めています。そこで作品に具体的に触れるようになり、日本では「美術史」という学問や「学芸員」という資格が存在しない時代から、大切な品物を適切に守るためのノウハウが、千年以上にわたって積み重ねられてきたことを実感しています。モノの損傷をできる限り抑えながら、かつ魅力的に「展示」するという学芸員の仕事には、机上の学習だけではなく、日頃の資料管理や展示作業等を通じて、実物から直接に体感するという積極的な姿勢が不可欠です。私にとってモノを見るための最も大きな要素であるこの姿勢は、かつて文学部芸術学科で美術史の基礎を学んだ際、作品を「実感」することを教えていただいたことが基盤になっていると思います。

そして今、学生時代を振り返って改めて感じるのは、各専門分野で第一線で活躍されている先生方が、幅広い分野でとても贅沢に揃っていたこと、図書館にも専門書が豊富に揃っていたことです。もっと積極的に教えを請い、図書館も活用しておけば良かったと思いますが、後の祭りです。芸術学科は、学び取る意欲さえあれば、将来の生き方の指針を作ることが出来る場所だと思います。

学生へのメッセージ

これだと思う作品や作家がいれば、先生方や図書館の資料を積極的に活用して学んで下さい。過去の定説が正しいとは限りません。突き詰めていくことで裏付けがはっきりし、自信となります。裏付けを得る作業は、情報化社会と言われる今日の生活の面でも、何が正しい情報なのか判断するのに大いに役立つと思います。