卒業生インタビュー INTERVIEW


英文学科を卒業し、社会で活躍する先輩方からのメッセージ

2021年に公開された映画『フィッシュマンズ』の劇中に、ソングライツというサークルの部室が映るシーンがある。永遠とスピーカーからノイズミュージックを鳴らしているような場所。明治学院大学に在学していた当時、現代音楽研究会というサークルと合わせて、僕はそのサークルに所属していました。自分の知らない世界とのたくさんの邂逅がありました。なるべく早く海外で音楽をしようと思っていた僕は、当初は日本で何か音楽的なきっかけを生めるとはあまり思っていませんでした。それでも不思議な縁で、そのサークルで組んだバンドが、卒業後の僕の進路となりました。
文学部の講義も面白かったです。僕は英文学科在籍でしたが、学科を超えて受けられる芸術学科やフランス文学科の講義も含め、文学や芸術の見方に関してとても価値のあることを学べました。とりあえず卒業することを目的に講義をやり過ごす人たちもいましたが、将来何が役に立って何が役に立たないか、その時はわからないことも多い。僕にとって、糧となる講義は多かったです。
文学部の講義を通して、自分が音楽を作り、言葉を書く上で知りたい情報にアクセスできました。Paul Hullah先生の詩の講義で取り扱われたロマン派の詩からロックミュージックの詩までを読み解いていく講義は、自分が正に必要としていた講義でした。この講義を受けたいミュージシャンや物書きは学外にも多いはず。卒業後も、作品を制作する折に詩についてご意見を頂いており、一緒にお仕事ができているのも不思議な縁です。Michael Pronko先生の映画の講義や、陣野俊史先生のフランス社会についての講義などもよく覚えています。その他、興味深い講義がたくさんありました。
僕らの世代はゆとり世代と呼ばれ、真面目に取り組むことを揶揄したり、冷笑的な空気が蔓延していたように思います。ただ、差別の問題、貧困の問題、政治の問題…社会が騙し騙し抱えてきた問題がついにコロナで噴出して、世の中は今まさに大きなターニングポイントにいるようです。当たり前だったはずのことが当たり前でなくなったり、益々世界との距離が近づく中で多様な価値観とのすり合わせが必要になったり。SNSの存在感も、昔とは比較にならないような大きさで私たちの生活そのものになりました。今まで拠り所にしていたもの、信じていたこと、当たり前だったはずのこと。そういう多くのものが挑戦され、見直され、そして日々アップデートされていく中で、深い思考力と柔軟さは生き残る鍵だと思います。自分の中の当たり前を疑うこと。望むと望まないとに関わらず、時代の変化は必ず起こる。自分の知っている当たり前を今一度疑い、そして信頼できる考え方に出会うまで、何にでも疑問を持つこと。自分と違う意見でも一度咀嚼してみる。その上で自分の意見を持つ。益々複雑になっていく世の中で、みなさんが強い信念と足場を築いていけるよう願っています。自分の心に正直に、遊んだり休んだり働いたりしてください。
若いと柔軟とはいうけれど、僕は10代の時こそ、かなり頑固でした。それでも大学に入り、自分が知らないものや価値観、考え方がこれほどあるのかと繰り返し思い知る中で、自分がまだまだ無知なことも受け入れざるを得ませんでした。それによって、本当に視野が開けたと思います。明学では本当に多くのキッカケを見つけました。所謂 「高学歴」と言われるような大学と比べ、偏差値が低いからと明学を卑下している在学生もいるでしょう。でも、学力がどうかよりも、その人自身が何を思って、何をやっているかの方が大切です。色々な進路、選択、挑戦や時には諦めもあるかと思いますが、一般化された安定ではなく、皆さん一人一人にとって必要な環境と将来が開けますように。応援しています。

私は4月に出版社に入社し、7月から漫画雑誌の担当編集をしています。編集者の仕事は多岐に渡ります。雑誌には漫画作品だけでなくグラビアや単行本の広告、次号予告、アンケートページなどが載っています。編集者は一冊の雑誌を世に送り出すまでの過程で様々な人と関わったり、ページ作りの中で一人でも多くの読者に雑誌を楽しんでもらえるように工夫を凝らしたりしています。現在は自分の担当する作品を雑誌に載せて、連載を立ち上げることを目標に日々の仕事に取り組んでいます。
英文学科では「物事を多角的に捉える力」を身につけることができました。一つの文学作品に対する解釈が一つだけではないように、一つの物事も複数の視点から見れば、それぞれ違った見方をすることができます。この力は特に3、4年次のゼミで身に付けることができたと思います。
ゼミでは主に毎週違った短編、長編小説を英語で読み、各自が調べたことや考えたことをまとめ、グループ内でディスカッションやプレゼンテーションを行っていました。 扱う作品もSFから児童文学まで幅広く、楽しく英語を学びつつ文学批評も学ぶことができました。
また、作品を自分の言葉で理解、説明するために必要となる基礎知識や語彙も増やすことができたため、文学は様々なことに応用が効く分野だと考えています。
編集者の仕事においては作品を生み出したり、先の展開を考えたりする際にこの「物事を多角的に捉える力」が役立つと考えています。また、ゼミでのディスカッションで得た経験は作家との打ち合わせの際に役立っています。 学生時代は勉強の合間に書店でのアルバイトに力を入れて取り組みました。 本の流通の仕組みや、店頭での本の並べ方の決まりを知ることができ、さらに実際に本を買われるお客様と交流することもできたため、出版社で働く上で非常に有意義な経験だったと思います。また、ほぼ毎日本や雑誌に触れることで興味関心も広がりました。
是非とも学生の皆様には、在学中に多くの本を読んでほしいです。 明学の図書館は蔵書数も多いため、一つの分野の本を読み漁ることも良いですし、沢山の分野の本を少しずつ読むことも良いと考えます。
中でも将来のやりたいことや目標がまだ明確でないという方は、色々な本を手にとってみてください。漫画ももちろんOKです! 明学での普段の学びの経験や読書体験から、将来自分が何をしたいのかという問いのヒントが得られるのではないかと思います。
私も明学で学んだことを活かして、皆様にも読んでいただけるような作品を作れるように頑張ります!