子どもの世界
開設にあたって なぜ、子どもたちの「心の問題」に取り組むのか
子どもの世界① 「先生が足りなくなる」時代が来るって本当ですか?
子どもの世界② 勉強が嫌い、やる気がない」という子どもたちが増えているって本当ですか?
子どもの世界③ 今、先生に求められている「LD、ADHDの子どもたち」に対する理解と教育
子どもの世界④ 自閉症の子どもたちが求めている理解と支援
子どもの世界⑤ 「不登校」を減らすために必要なこと

自閉症の子どもたちが求めている理解と支援

 「子どもの世界③」で紹介したLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)と並び、今の学校教育の現場で求められているのが、自閉症の子どもたちの心をきちんと理解できる先生の存在です。
 みなさんは「自閉症」という言葉からどのような症状を思い浮かべるでしょう?多くの場合、自閉症は「心を閉ざして自分の殻に閉じこもってしまう病気」だと思われていますが、実はこれは誤った理解なのです。
 自閉症は、LDやADHDと同じ発達障害の一つで、社会性の発達が障害されます。その症状は一般的に、①「社会的相互反応の障害」、②「コミュニケーションの障害」、③「想像性の障害」の3つによって特徴づけられます。
 たとえば、多くの自閉症の子どもの特徴として見られるのが、他人への関心の薄さやその場の空気や他人の意図を読むことが苦手なこと。友だちからのはたらきかけに反応しない、かと思えば急に突拍子もない行動に出て友だちを驚かせる、授業中に全く関係のない話を一方的にはじめる、といったことなどが見られます。また自閉症は言葉の発達が遅れるため、話し言葉によるコミュニケーションが十分にできない場合が少なくありません。知的障害を伴う自閉症の場合には、話し言葉が限られていますし、知的障害を伴わない自閉症(高機能自閉症)の場合でも、一度にたくさんのことを言われたり、見通しの立たないことや曖昧なことを言われたりすると混乱してしまいがちです。言葉の能力が比較的高い子どもの場合でも、比喩的な言葉の表現、皮肉や冗談を理解できないということが多く、先生が叱るつもりで「もう学校にこなくていいです!」と言ったところ、「先生が来なくていいと言ったので、もう行きません」と、次の日から学校を休むようになったなどという話もあります。先生に自閉症についての知識がまったくなかったとしたら、こうした状況にはただただ戸惑うばかりでしょう。けれど先生に自閉症への正しい理解と、適切な会話の方法や声のかけ方といった知識があるだけで、子どもたちの行動や心の状態はずいぶん違ったものになってきます。学校においては、先生たちが自閉症について、まず理解することが何よりも大切なことなのです。

 自閉症の子どもたちも、初等教育の段階で適切な支援を受けて成長していくことで、一人ひとりが本来持っている可能性を大きく伸ばすことができます。学校は社会的な場面そのものですから、自閉症の子どもたちにとって、不適応を起こすことなく十分に学校生活に参加できるような支援が重要となります。
 日本の教育の現場でも、高機能自閉症や、自閉症と同じ社会性の発達障害でありながら、言葉を流暢に話すことのできるアスペルガー症候群、LDやADHDも含めた発達障害のある多くの子どもたちが、通常の学級で学び、同時に障害に応じた特別な支援も受けられる体制がようやく整いつつあります。そこでますます重要になってくるのが、発達障害についての正しい知識を持ち、子どもたちの心を理解し、支援してあげられる先生の存在。みなさんもぜひ、そんな先生の道をめざしてください。
明治学院大学 心理学部教育発達学科 2010年4月開設
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