公開セミナー
【要旨】
早稲田大学ジャーナリズム教育研究所と財団法人放送番組センターは、2010~2012年の足かけ2年に渡って「放送番組の森」プロジェクト(座長:花田達朗早稲田大学教育・総合学術院教授)を共同で実施してきた。その成果が形となったのが『放送番組で読み解く社会的記憶:ジャーナリズム・リテラシー教育への活用』(日外アソシエーツ)と題する報告集である。
大学の現場では、テレビで放映された様々な番組を教育・研究の素材として利用したいというニーズが幅広く存在している。しかし、著作権の問題を始めとする様々な障壁が存在し、放送番組を教員・研究者が自由に利用できる環境の整備に向けては遠い道のりであるのが現状だ。このプロジェクトでは、メディア・ジャーナリズム研究の一線で活躍するメンバーを中心に、筆者のような「歴史の記憶と表象」研究を専門とするメンバーも加わり、個々に一つの「テーマの樹」を立て、放送番組を活用することによってどのように効果的にそのテーマを読み解くことが可能になるのかを実践的な教材として形にすることを試みた。奇しくも、10名の研究者が選んだテーマの4つが「戦争記憶」に関わるテーマであり、「戦争の記憶」を読み解く際にも、放送番組における表象を有効活用できる可能性が大きいことが証明される形となった。
当日の報告では、筆者が担当した「ヒロシマ・ナガサキの樹」(第一章)の内容を中心に、放送番組が「ヒロシマ・ナガサキ」についてどのような表現をしてきたか、それが戦後から今日に至るまでの「ヒロシマ・ナガサキ」の社会的記憶の形成にどのように関わって来たのかを検証する。更に、「BC級戦犯」、「ベトナム戦争」、「アフガン・イラク戦争」といった「戦争記憶」に関わる別の樹の読み解き方についても事例を紹介したい。
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