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明治学院大学の
国際化ビジョン

国際化ビジョン2021 「国際化の土台の再構築:海外への、国内でのそしてオンラインでの国際化の多角的構築を目指して」

 明治学院大学の歴史は、アメリカ人宣教師・医師であったJ.C.ヘボン博士が、開国間もない幕末の日本へ欧米の教育と医療をもたらしたことに端を発します。とりわけヘボンによる和英辞典の編纂と聖書の翻訳は、日本人が海外を理解するための礎となりました。ヘボンは、医療活動を通して見聞きする日本語を学びながら、日本で最初の本格的な英語と日本語の対訳の辞書を編纂しました。他方、旧約・新約聖書の翻訳作業にヘボンは携わり、その結果キリスト教の精神世界に日本人が聖書を通じて触れることができるようになりました。明治初期の近代日本の黎明期より、本学は、国際交流、異文化理解、語学教育といった努力を積み重ねてきました。

 このような歴史を経て、明治学院大学は、現在、専門・教養教育の知識と高い市民道徳をそなえた人材の育成を目指しています。特にキリスト教による人格教育を基礎とした教育理念 “Do for Others”(他者への貢献)を掲げ、次の5つの教育目標を設定しています。

  1. 他者を理解する力を身につける。
  2. 分析力と構想力を身につける。
  3. コミュニケーション力を身につける。
  4. キャリアをデザインする力を身につける。
  5. 共生社会の担い手となる力を身につける。

  「国際化ビジョン2018」は、2025年を目処に次の数値目標を掲げました。1.協定校数83校 2. 単位認定をともなう海外学生派遣学生数 800名 3.受入学生数 600名。2019年度時点で、協定校数は80に達し、派遣学生数は514名、受入学生数は354名に達しました。協定校数については、現時点でほぼ目標を達成していると言えます。しかし、2019年度末から2020年度にかけて、新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延し、派遣、受入は、困難を極めており、留学という学生のモビリティに依存した国際化は、一定の見直しを迫られています。

 2019年度長期留学した学生に対して実施したアンケート調査によると、「母国語の異なる相手とのコミュニケーションを取ること」、「異なる意見や価値観を尊重すること」、「問題解決のための知見や技術の修得」、「目的達成に向かって努力すること」などについて、留学を経験することで自己評価が上昇しています。つまり、上の5つの教育目標のうちの、「他者を理解する力」、「コミュニケーション力」、そして「共生社会の担い手になる力」を向上させる上で、留学経験が極めて高い効果をもたらすことが推察されます。とりわけ、「 “Do for Others”の考えに基づいた行動をする意思」については、顕著な上昇が見られます。ただ、専門・教養教育に根ざした分析力、構想力、そしてその力をキャリアにつなげる力については、留学経験が明治学院大学での学びと結びついて効果をあげる必要があると考えられます。

 そこで、今後の国際化の方向性は、国内に留まるにせよ留学を目指すにせよ、本学の教育目標をより効果的に実現できる体制を整備したいと考えます。留学を希望する学生については、その時間的、費用的コストを最小化し、その上で留学の効果を最大限に引き出すプログラムを開発し、提供します。留学を希望しない学生についても、本学のキャンパスやオンラインでの国際協働授業を通じて、国際的な視野を涵養できることを目指します。そのためには、国際化を推進する仕組みについて質的転換が求められるでしょう。留学の教育効果は高く評価されることから、長期的にはその規模の拡大も視野に入れるべきですが、留学以外の方法も含めて多様な学修者の視点で、国際化の土台構築に努めたいと考えます。

 本学では、数年来すでに、次のような多様な国際化への努力を行ってきています。

  1. 協定校とのオリジナルプログラムの開発:UC(カリフォルニア大学)プログラム、ハワイ大学とのサーティフィケートプログラム、ダブルディグリープログラム、国際貢献インターンシップなど、全学的に様々な留学プログラムが展開されてきました。
  2. オンライン教材の開発:COIL (Collaborative Online International Learning)やMOOCs (Massive Open Online Courses)などのオンラインを活用した教育技法を学長プロジェクトとして試みてきました。
  3. カリキュラム留学による全員留学:国際経営学科、グローバル法学科等の専門教育のカリキュラムに即して、留学プログラムを展開してきました。2019年度の大学全体の国外派遣留学生数514名のうち、カリキュラム留学は、186名を占めます。語学学習、専門教育について学科独自のきめ細かい指導と約半年の留学経験が、高い効果をもたらしてきました。
  4. 内なる国際化プロジェクト:社会学部、教養教育センターを中心に展開されてきました。日本に居住する外国人が日本の生活、教育に適応することをサポートすることを通じて多文化共生の視点を育みます。

 これらの成果を踏まえながら、「国際化ビジョン2021」として、「国際化の土台の再構築:海外への、国内でのそしてオンラインでの国際化の多角的構築を目指して」を掲げます。海外へ向けた人の移動というモビリティの単線的な拡大のみではなく、明治学院大学での教養教育、専門教育を土台とする学びと多角的に結びついた足元からの国際化を可能とする大学環境を構築することを目指します。従来のグローバリズムの延長、拡大ではなく、多様な共生社会で新たに必要とされる意識や価値観、知見や技術を有する人材育成のための国際化を推進したいと考えます。特に、協定関係にある大学との関係強化をベースに、オンライン学習の共同開発を促進するなど、日本にいながらにして明治学院大学のキャンパスで国際的視点を養う環境を整える方針です。



国際化の4つの柱

  1. グローバル市民の育成:大学基盤整備 
    Nurture Global Citizenship
  2. 世界各地域でのパートナーシップ構築:関係強化 
    Build Worldwide Partnerships
  3. 国境なきラーニングの提供:ICT(情報通信技術)の利用 
    Offer Borderless Learning
  4. 多文化共生社会へのアプローチ:国内での国際化 
    Embrace a Diverse Community


1. グローバル市民の育成:大学基盤整備
Nurture Global Citizenship


グローバル化が進む一方、国際的なネットワークの繋がりは、情報技術の進展とともに複雑化しています。研究・教育機関として、将来の国際化に対応できるための、基盤整備を行います。

  • 語学教育の充実
  • 英語教育あるいは初習語教育の成果を測定し、学生の達成目標を可視化し、経年的な向上をサポートする体制を整えます。TOEFLやIELTSなど英語力測定テストを定期的に導入し、CEFRなどの語学力を示す国際標準などで客観的に外国語運用能力を評価できるようにします。国境や言語の枠を超えた教育を受け、さらにグローバルなキャリアを模索するために必要な課題を客観的に学生が認識できるようにします。と同時に、努力水準を高めるインセンティブや必要なサポートを提供し、全学的に語学教育の充実を目指します。
  • 英語ないし初習外国語によるイマージョン教育の実施
  • 外国語による授業を開講しやすい、学内のルールやサポートを整えます。語学教育、教養教育、専門教育それぞれのニーズに合わせてシステム作りをします。
  • 教職員の研修
  • 国際的な視点で大学運営を可能にすべく、教職員の研修制度を拡充します。海外の大学で博士号を取得した教員割合は20%弱、また半数近くの教員が在外研究等を経験していますが、大学運営という観点で教職員の国際化はまだ進んでいません。教職員が協力して国際化を推進するための、研修、人材交流、情報収集を促進します。
  • 留学及び国際教育の効果測定
  • 明治学院大学の教育目標に対して、留学や国際教育がどの程度の効果を有するかを、客観的に測定し、効果をみながら大学の基盤整備を見直していきます。
  • 国際的な研究支援
  • 教員の研究活動の国際的展開、発信、交流を促進します。明治学院大学の国際的プレゼンスを高めるためには、本学の研究が国際水準を満たすものであることが前提となります。国際的共同研究やシンポジウムの開催を大学として推進し、援助します。


2. 世界各地域でのパートナーシップ構築:関係強化
Build Worldwide Partnerships


協定関係にあるパートナーシップの関係をさらに強化し、その質を高め本学の教育目標の達成を目指します。

  • 協定を締結している大学との連携を強化し、本学の教育に貢献する独自のプログラムを構築し、協働する可能性を一つずつ模索します。
  • 国際赤十字社、UNHCRなどの国際機関との連携を強め、卒業後には国際社会で活躍し、リーダーシップを発揮できる学生の育成のため、国際貢献に携わる機関におけるインターンシップ・プログラムやプロジェクトを開発します。また民間企業、NGOなどとの連携・協働の可能性も模索します。
  • 世界の諸地域へのフィールド・スタディやボランティア実習などのプログラムを開発し、社会貢献とグローバル教育の機会を提供します。
  • これまでパートナーシップ関係があまりない世界の諸地域との連携を視野に入れます。
  • 本学のキャンパスのある東京都港区及び横浜市戸塚区、連携協定を締結している長野県小諸市や岩手県大槌町との関係を強化し、在学生、留学生そして協定大学といったネットワークを繋げて、地域連携を含む国際化を行います。


3. 国境なきラーニングの提供:ICT(情報通信技術)の利用
Offer Borderless Learning


ICT(情報通信技術)などを使った教育技法を導入し、国境を越えた教育機会をより多くの学生に提供します。

  • 国際機関と協働で実社会に触れるフィールド・スタディやインターンシップなどを、オンライン教育などと併用することによって充実させ、その学びをグローバルに共有するプラットフォームをつくります。
  • 国内外の協定校やその他の機関と協力体制を強化し、COIL (Collaborative Online International Learning)等の実践により、国境を越えた学習と異文化コミュニケーションの機会を作り出します。
  • MOOCs (Massive Open Online Courses)などオンライン教材を取り入れた授業を全学的に展開し、学習成果を分析することで国際教育の質を高めていきます。


4. 多文化共生社会へのアプローチ:国内での国際化
Embrace a Diverse Community


外国人留学生向けの日本語学習と日本人学生向けの英語や初修外国語といった言語教育に留まらず、多文化理解を促すカリキュラムを充実させることで、多言語と多文化環境の元での国際化教育を学内において推進します。

  • 多文化共生コミュニティの出発点となる環境となる「ゲートウェイキャンパス」の創設を目指し、留学生、研究者との交流を促進します。
  • 「内なる国際化」プロジェクト、国際平和研究所・キリスト教研究所との協力関係を構築し、国内での国際化を進めます。

PDFでもご覧いただけます。
国際化ビジョン2021 「国際化の土台の再構築:海外への、国内でのそしてオンラインでの国際化の多角的構築を目指して」

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