経済学部教授
神田 良 (Makoto Kanda)
日本は老舗大国です。100年以上存続している企業の数は群を抜いています。私の研究領域である経営戦略論では、企業の長期的な競争力(持続的競争力)の構築に関する理論は中核的な課題の一つです。長期存続企業である老舗の研究は、この課題を追求するものです。私は実践的な理論化を求めて定性的な事例研究や定量的な研究を進めています。
東京商工会議所中央支部老舗企業塾の創設・運営にも関わり、老舗の実践からマネジメントに関しては理論をまとめました。この研究成果から長期存続の秘訣は世代を超えて、革新をどのように繋げていくかにあることが分かりました。
今回の科研費では、老舗の革新行動に焦点を当て、市場との対話を通して自社の経営資源をどのように強化して企業存続に繋げるかを明らかにします。老舗企業塾との連携はもとより、日本生産性本部との協力で持続的競争力研究会を立ち上げ、多くの事例研究を進めています。
すでに老舗企業のマネジメントに関する日米比較研究は終わっていますので、新たに革新に焦点を当てた国際比較を考えています。
白金通信2018年7月号(No.495) 掲載
心理学部准教授
森本 浩志 (Hiroshi Morimoto)
近年、認知症を患われた方を働きながら介護されているご家族が増えています。介護と仕事を両立するうえでは難しさを感じる時もあります。これを役割間葛藤といいます。介護と仕事をうまく両立している方もいらっしゃいますが、役割間葛藤を抱えている方も少なくありません。このような方々の違いはどこにあるのか問題意識を持ったのが、この研究の始まりでした。
この研究では、介護と仕事をうまく両立するためには、これまで介護者の精神的健康を保つために重要であるとされてきた事柄(例えば、認知症という病気の理解を深め、適切な支援を受けながら、介護をうまく行える自信を高めること)だけでは不十分であり、これらに加えて注意制御機能(例えば、うまく頭や気持ちを切り替える)も重要であることが示されました。今後はこれまでの研究をさらに進め、介護と仕事の互恵的な両立をサポートする心理学的要因について調べていきます。
認知症は誰でも患う可能性がある病気であり、たとえ自分が患わなくても、介護者として関わる可能性もある病気です。身近に認知症を患われた方や介護をされている方がいらっしゃる人も、そうでない人も、一緒に考えていきたい課題です。
白金通信2018年7月号(No.495) 掲載
教養教育センター専任講師
野副 朋子 (Tomoko Nozoe)
鉄はすべての生物にとってなくてはならない存在です。土の中に豊富にある鉄ですが、水に溶けにくく生物は利用することができません。植物は土の中の鉄を溶かし出して吸収する仕組みを備えています。ムギネ酸類やニコチアナミンは、植物が鉄分を吸収して利用するために作りだすアミノ酸です。
最近、ムギネ酸類やニコチアナミンが増えると、お米やマメなどの食品中の鉄分が増えるだけでなく、植物の鉄欠乏耐性能力が増強し、砂漠などの不良土壌で生育できるようになることが分かってきました。さらに植物が鉄不足に陥っているかどうか感じるためのシグナルとして働いている可能性もあり、そのメカニズムを解明するべく研究に取り組んでいます。この研究が飢餓をなくし、緑豊かな地球の維持に少しでも貢献できると信じています。
私は社会と理科が好きで、高校の時は文系として学んでいました。大学に入る時、生物をもう少し学んでみたいと思い、理系に転向しました。生命科学の大発見を遂げた研究者は必ずしも学者ではないことが多いです。学生の皆さんにも、自分の領域を狭めるのではなく、ぜひ色々なことに挑戦して「偶然の大発見」のチャンスを広げてもらいたいと願っています。
白金通信2018年7月号(No.495) 掲載
氏名 | 職 | 決定金額(総額) | 研究課題名 |
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杉田 由仁 | 教授 | 2,400,000 | タスクに基づくライティングテストにおける自動評価採点システムの実用化開発 |
平岩 健 | 教授 | 3,400,000 | 自然言語における名詞の分解-名詞の最小構成単位と類別システムとその普遍性の解明- |
貞廣 真紀 | 准教授 | 2,100,000 | 19世紀環大西洋交流と「アメリカン・ルネサンス」リバイバル |
和田 ちはる | 講師 | 1,900,000 | ハンス・アイスラーの「音楽における愚かさ」の内容と意義の解明 |
三宅 博子 | 研究員 | 3,400,000 | コミュニティ音楽療法の包摂と排除-生態学的視点からの事例検討による多層的理解 |
平澤 剛 | 研究員 | 3,400,000 | 日本前衛映画の発掘、修復、保存、再制作と一体化した学術的方法論の構築 |
平澤 剛 | 研究員 | 11,000,000 | 1960~70年代日本前衛映画に関する横断的研究 ※国際共同研究加速基金(国際共同研究強化) |
氏名 | 職 | 決定金額(総額) | 研究課題名 |
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大村 真樹子 | 教授 | 3,500,000 | 子どもの貧困:健康格差と貧困連鎖の社会経済学的分析 |
神田 良 | 教授 | 3,400,000 | 長期存続企業の革新を通した持続的競争力構築に関する国際比較研究 |
齋藤 隆志 | 教授 | 2,700,000 | 人事制度・施策の改革と労働意欲・生産性-インサイダー・エコノメトリクスによる分析 |
佐々木 百合 | 教授 | 3,400,000 | 日本の経常収支の変動要因分析 |
鈴木 岳 | 教授 | 3,300,000 | 一般均衡モデルの理論的研究 |
中野 聡子 | >教授 | 3,100,000 | イギリス限界革命期のミクロ経済学の形成:市場の制度設計の視点の萌芽とその消失 |
室 和伸 | 教授 | 3,200,000 | 金融市場の摩擦がマクロ経済に及ぼす影響 |
山内 勇 | >講師 | 3,400,000 | 特許制度と実用新案制度のイノベーション促進効果:制度間の補完・代替関係 |
犬飼 佳吾 | 准教授 | 13,100,000 | 生活習慣病と経済行動:行動・神経経済学的アプローチによる検討 |
生方 雅人 | 准教授 | 3,100,000 | 金融市場におけるジャンプリスクと資産価格形成に関する応用研究 |
大竹 光寿 | 准教授 | 3,300,000 | ブランドマネジメントの慣性に関する実証研究:ブランドのあるべき姿の再構築 |
北浦 貴士 | 准教授 | 2,800,000 | 戦前期日本の資本市場と企業統治 |
斉藤 都美 | 准教授 | 3,300,000 | 公共財としての灯台供給における市場と政府の役割 |
中村 友哉 | 准教授 | 1,200,000 | 公共情報が内生的に生じる状況における情報の社会的価値の分析 |
氏名 | 職 | 決定金額(総額) | 研究課題名 |
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石原 俊 | 教授 | 3,000,000 | 南方離島民の戦時・戦後経験の比較歴史社会学的研究: 強制疎開と動員、帰還と離散 |
岡本 多喜子 | 教授 | 12,300,000 | 養老院・養老施設の経営・運営と処遇(ケア)の質に関する研究 |
加藤 秀一 | 教授 | 3,600,000 | 生命科学・生物学とジェンダー理論との言説的相互作用に関する概念分析的検討 |
北川 清一 | 教授 | 7,000,000 | 児童養護施設のグループを活用するソーシャルワークと建築計画学のクロスオーバー研究 |
坂口 緑 | 教授 | 2,900,000 | デンマークの若者支援に見る生涯学習実践と行政および非営利セクターの協働構造の解明 |
柘植 あづみ | 教授 | 2,500,000 | 生殖医療技術の規制に関するジェンダー分析―通文化的・通時的研究を中心に |
半澤 誠司 | 准教授 | 3,100,000 | 地方コンテンツ産業の勃興に動員される地域資源:非集積地によるイノベーション活性化 |
元森 絵里子 | 准教授 | 1,900,000 | 子どもを鍵とする社会像の問い直し:年少者像の再編期の歴史社会学と現代的変容の記述 |
有薗 真代 | 研究員 | 3,200,000 | 戦後日本における結核患者・ハンセン病者の「集団性」と社会保障要求運動の胎動 |
菅野 摂子 | 研究員 | 2,000,000 | 男性の生殖論に向けて-出生前検査における男性の経験に関する調査 |
嶽本 新奈 | 研究員 | 2,700,000 | 「からゆきさん」にみる移動・性・権力の諸相 |
嶽本 新奈 | 研究員 | 2,700,000 | 国際移動のなかの「からゆきさん」--日本の開国から戦間期にかけての通時的分析 |
洪 賢秀 | 研究員 | 3,300,000 | 東アジアにおける遺伝子関連検査の受容に関するジェンダー分析 |
保田 幸子 | 研究員 | 1,100,000 | 社会保障の規範理論ー十分性説の妥当性についての研究 |
氏名 | 職 | 決定金額(総額) | 研究課題名 |
---|---|---|---|
池本 大輔 | 教授 | 3,100,000 | グローバル化とイギリス政治の変容~ブリグジットの淵源としてのサッチャー政権期 |
太田 和俊 | 教授 | 2,000,000 | グラフ理論を用いた箙ゲージ理論の解析と新しい時空像の探求 |
井頭 麻子 | 准教授 | 3,400,000 | イオン性金属錯体の構造制御と機能性開発 |
葛谷 彩 | 准教授 | 3,400,000 | 「国際関係論」からの解放―「IR」から「歴史」への回帰 |
酒井 一博 | 准教授 | 2,500,000 | M理論における可積分構造の解明 |
久保 浩樹 | 講師 | 3,000,000 | 政党の分極化の国際比較 「分極化するアメリカ」から「世界の分極化の比較分析」へ |
坂井 大輔 | 研究員 | 2,000,000 | 天皇主権論の総合的研究――昭和戦前・戦中期を中心として―― |
氏名 | 職 | 決定金額(総額) | 研究課題名 |
---|---|---|---|
久保田 浩 | 教授 | 13,100,000 | 宗教思想研究の基礎概念再考―mysticism及び関連概念の理論的・系譜学的研究 |
張 艶 | 教授 | 3,400,000 | 中国株価のマクロ経済・金融政策との関係及び国際株式市場との連関に関する実証研究 |
浪岡 新太郎 | 教授 | 2,500,000 | リベラルな排外主義の理論的実証的研究:フランスにおけるムスリムの排除と抵抗 |
野口 久美子 | 准教授 | 3,300,000 | インディアン・カジノ時代における先住民社会のエンパワーメントの諸相 |
齋藤 百合子 | 客員教授 | 3,300,000 | 人身取引防止に関する社会開発論的研究 |
氏名 | 職 | 決定金額(総額) | 研究課題名 |
---|---|---|---|
金沢 吉展 | 教授 | 3,500,000 | 心理療法の終結に関する横断的・縦断的研究 |
金城 光 | 教授 | 3,400,000 | 生涯発達からみる高齢者の記憶の自己効力感と認知機能の関係および介在要因の解明 |
田中 知恵 | 教授 | 2,800,000 | 感情共有の機能に関する実験的検討:関係構築と集合的態度形成における役割 |
辻 宏子 | 教授 | 2,200,000 | 児童生徒の図形の概念形成に関する枠組みの見直しとカリキュラム開発 |
水戸 博道 | 教授 | 2,200,000 | 音楽科教育における移動ドと固定ドの教育実践の実態調査 |
宮本 聡介 | 教授 | 3,100,000 | 社会的文脈における説明バイアスとその抑制 |
垣花 真一郎 | 准教授 | 2,800,000 | 幼児の音韻技能を促進する歌遊びを用いたかな特殊表記の習得支援法の開発 |
鞍馬 裕美 | 准教授 | 2,000,000 | 米国における教員能力試験に関する研究 |
佐藤 公 | 准教授 | 1,900,000 | 自国史との相互接続に基づいた対外認識育成をはかる歴史教育論の日独比較研究 |
根本 淳子 | 准教授 | 3,400,000 | 教授設計理論を包含した初学者向け学習設計支援手法の開発 |
森本 浩志 | 准教授 | 3,200,000 | 認知症高齢者の家族介護者の役割間葛藤及び生活の質の改善要因の解明 |
江草 遼平 | 助手 | 1,900,000 | 教室におけるコミュニケーション支援のための聴覚障害者向け吹き出し型字幕の開発 |
氏名 | 職 | 決定金額(総額) | 研究課題名 |
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篠崎 美生子 | 教授 | 3,400,000 | 1910~30年代の文化メディアにおける日中相互表象の形成と展開 |
長谷部 美佳 | 准教授 | 2,700,000 | 日本における難民の編入モードに関する定性的研究-インドシナ難民の事例から― |
鈴木 陽子 | 講師 | 1,700,000 | 用法基盤モデルによる語彙と構文知識の習得に関する研究 |
野副 朋子 | 講師 | 3,500,000 | ムギネ酸類・ニコチアナミン分泌を介した鉄移行と鉄恒常性維持の分子メカニズムの解明 |
野副 朋子 | 講師 | 10,800,000 | ムギネ酸類・ニコチアナミン分泌を介した鉄移行と鉄恒常性維持の分子メカニズムの解明 ※国際共同研究加速基金(国際共同研究強化) |
田中 祐介 | 助教 | 3,000,000 | 活字化された日記資料群の総合と分析に基づく近代日本の「日記文化」の実態解明 |
安部 淳 | 助手 | 3,700,000 | 精子の授受を介した雌雄の配偶戦略の共進化:昆虫類を用いた精子経済理論の検証と発展 |
坂本 慶子 | 助手 | 2,100,000 | 性差を考慮したスポーツパフォーマンス評価法の構築 |
氏名 | 職 | 決定金額(総額) | 研究課題名 |
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土肥 歩 | 研究員 | 2,100,000 | 反乱と災害からみた近現代広西省の地域史叙述 |
氏名 | 職 | 決定金額(総額) | 研究課題名 |
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柴田 優呼 | 研究員 | 1,700,000 | 広島・長崎に関する言説の国際比較―知識の生産と表象の政治性 |
清水 美里 | 研究員 | 1,800,000 | 植民地台湾のインフラ(港湾・河川事業)にみる「公共」のあり方と植民地的特質 |
内藤 哲雄 | 研究員 | 2,500,000 | 異文化間対人コミュニケーションの違和感と不適応:地位と性の影響 |
秋山 道宏 | 助手 | 2,200,000 | 戦後沖縄の経済界の形成と展開に関する政治経済史的研究:建設業界を主な対象として |