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2023年度科研費実績

注目の研究テーマ

教養教育センター助教

土屋 陽祐 (Yousuke Tsuchiya)

安全な筋力トレーニングの探索

研究課題「低負荷スロートレーニングによる血管内皮機能および骨格筋の適応メカニズムの解明」

近年、筋力の向上や筋肥大を目的とした筋力トレーニングが、健康寿命延伸に大きな効果があることが数多く報告されています。しかしながら、筋力トレーニング時に大きな力を出すことによって、一時的に血圧が大きく上昇し、血管内皮機能が低下するという唯一の欠点が存在します。

そこで「スロートレーニング」に着目しました。スロートレーニングは、ゆっくりと反復することで、負荷が小さくてもトレーニング効果が得られることが明らかにされていますが、血管内皮機能への影響は不明でした。レッグエクステンション(座位での膝伸展運動)における、一般的な高強度トレーニング(強度が高く挙上時間は1秒)と、強度が低く挙上時間が3秒であるスロートレーニングを実施し、血管内皮機能への影響を検証しました。

その結果、高強度トレーニングは血圧を上昇させ、血管内皮機能を著しく低下させた一方で、スロートレーニングは血圧の上昇が小さく、かつ血管内皮機能を低下させませんでした(図)。この結果から、スロートレーニングは心臓や血管に疾患を有する方や高齢者にとって、安全な運動である可能性が示唆されました。今後も、より安全で効率的なトレーニングの方法の開発を目指しています。


文学部教授

中西 公子 (Kimiko Nakanishi)

人工知能にはできない言語の意味の理解とは?

研究課題「度量句が関わる計量の意味的制約:構成性の原理の解明に向けて」

言語の意味とは何でしょうか。最近、人工知能が人間のように会話できると話題になっていますが、本当に私たちと同じように意味を理解できているのでしょうか。実は全く理解できていません。質問の意味を理解することなく、ビッグデータに基づいて型通りの答えを返しているだけなのです。

それでは、私たちはどのように言語の意味を理解しているのでしょうか。私の専門分野である言語学の意味論では、「文全体の意味は、単語の意味と単語同士の組み合わせ方によって決まる」という構成性の原理があります。人工知能はこの原理に基づいて意味を理解できませんが、私たちは複数の単語からより複雑な表現を作り、その意味を無意識に理解することができるのです。

私の研究では、「3センチ」「5リットル」のような計量を表す「度量句」を用いて、人間の無意識の言語能力を解明することを目指しています。例えば、「5mの道」では「5m」は幅を表しますが、「道が5m広がった」では、幅ではなく何m広がったかを表しています。一方で、「木が(横に)5m広がっている」では、幅が5mであるように感じられます。いつどんな解釈が可能なのか、どんな意味的制約があるのかを研究することで、人間だけが持つ意味を理解する仕組みを明らかにしていきます。


国際学部教授

坂本 隆幸 (Takayuki Sakamoto)

教育政策、家族支援政策、労働市場政策が、経済成長、雇用、所得格差、貧困に与える影響の分析

研究課題「先進諸国のシングルマザー、非正規労働者、雇用と所得の格差ー社会投資政策効果の検証」

私は、社会のすべての人が、豊かで安心して暮らせるような社会を作るには、どのような政府の政策が必要なのかを、ここ10数年研究しています。

日本、米国、西欧などの22ほどの先進諸国で行われている政策が、どのような社会的、経済的な影響を及ぼしているのかを勉強しています。すべての人が豊かで安心して暮らせるような社会を作るには何が必要になるのかと言いますと、すべての人に所得がなければいけません。 所得を得るためには雇用が必要になります。雇用を創るためには経済成長も必要になります。また、十分な所得を得て、安心できるようにするためには、所得格差や貧困があってはいけません。こういう状態を可能にするにはどういう政策があるかと言いますと、社会保障、教育政策、労働市場政策、家族支援政策、再分配政策、などがあります。

これらの政策分野で先進諸国がどのような政策をとり、それらの政策がどのような効果を示しているかを勉強しています。なかでも、シングルマザーや非正規労働者は失業、低所得、雇用の不安に陥りやすいので、これらの人々に安心や豊かさを確保するためにどのような政策が必要かを勉強しています。例えば、スウェーデンなどの北欧諸国では、上記の社会経済状況で良好な結果を出しています。

これからもっと研究して上記の問いに答えを出すよう頑張ります。

2023年度採択一覧(継続課題含む)

文学部


氏名決定金額(総額)研究種目研究課題名
青野 純子 教授 3,500,000 基盤研究(C) 17世紀オランダ美術の受容研究-18世紀末の複製素描の考察を中心に-
杉田 由仁 教授 3,200,000 基盤研究(C) AIを活用した英文ライティング自動評価採点システムの開発
中西 公子 教授 3,400,000 基盤研究(C) 同等比較・類似構文が示唆する形容詞・動詞・名詞の語彙的意味とその普遍性
平岩 健 教授 3,300,000 基盤研究(C) 自然言語における不定語システムの統語メカニズムの記述的・理論的研究
梅澤 礼 准教授 1,800,000 基盤研究(C) 戦、金、愛─エクトール・マロの大人向け作品における近代社会とその犠牲者たちの描写
髙木 麻紀子 准教授 2,600,000 基盤研究(C) 15世紀フランス・ヴァロワ王家のタピスリーに関する総合的研究
本多 まりえ 准教授 2,800,000 基礎研究(C) 初期近代英国演劇における動物表象と社会状況に関する研究
BEAUVIEUX Marie 准教授 1,500,000 若手研究 日本のアフォリズム文学の誕生・比較文学の観点から
星野 真澄 講師 3,500,000 基盤研究(C) 初等中等教育の教育環境整備の制度的・財政的研究:日米比較を中心に
ク ミナ 研究員 2,400,000 若手研究 犯罪映画の快楽:大衆娯楽映画としての戦後犯罪映画の製作と鑑賞に関する総合的研究
平澤 剛 研究員 3,600,000 基盤研究(C) 日本におけるエクスパンデッド・シネマ、インターメディアを対象とした領域横断的研究

経済学部


氏名決定金額(総額)研究種目研究課題名
大野 弘明 教授 3,300,000 基盤研究(C) 経済発展における金融システムの移行過程に関する動学的分析
北浦 貴士 教授 2,200,000 基盤研究(C) 企業勃興期における発起人の特徴とその役割
児玉 直美 教授 15,360,000 基盤研究(B) 経済成長と経営者属性
小林 正人 教授 2,700,000 基盤研究(C) 相関反転可能で非対称なsplit-normalコピュラと金融危機・バブルの分析
神門 善久 教授 3,100,000 基盤研究(C) 近現代フィリピンの人的・物的資本形成の数量経済史
佐々木 百合 教授 2,100,000 基盤研究(C) 国際銀行規制の問題点と邦銀への影響 -自己資本比率規制の理論実証分析-
中村 友哉 教授 3,200,000 基盤研究(C) 不確実性下の戦略的状況における先行者利益と社会厚生に関する研究
室 和伸 教授 3,700,000 基盤研究(C) 信用市場の不完全性と少子高齢化のマクロ経済分析
赤松 直樹 准教授 3,600,000 若手研究 消費者逐次選択の長期的な影響に関する研究
犬飼 佳吾 准教授 11,200,000 学術変革領域研究(B) デジタル身体性経済学の創成
犬飼 佳吾 准教授 36,700,000 学術変革領域研究(B) 大規模行動実験と生態学的ライフログ研究によるデジタル身体性経済学のモデル化
岡本 実哲 准教授 3,200,000 若手研究 私的情報保護のメカニズムデザイン
木川 大輔 准教授 3,600,000 基盤研究(C) 既存プラットフォーム企業が存在する製品・サービス市場への参入戦略に関する研究
田中 鉄二 准教授 14,000,000 基盤研究(B) 農作物の早期生産予測情報に基づく市場・農業生産へのマクロ・ミクロ的影響
土屋 拓也 准教授 2,000,000 基盤研究(C) 発展型偏微分方程式における高精度数値計算手法の構築
林 祥平 准教授 3,500,000 基盤研究(C) リモートワークにおける仕事支援の研究
中野 暁 講師 2,200,000 研究活動スタート支援 顧客のオンライン情報接点とチャネル選択に関 する実証研究

社会学部


氏名決定金額(総額)研究種目研究課題名
石原 俊 教授 3,200,000 基盤研究(C) 南方離島からの戦時疎開離散者の戦後生活とその共同性:比較歴史社会学的基礎調査
武川 正吾 教授 3,000,000 基盤研究(C) Covid-19感染拡大による福祉意識の変容:時系列分析と国際比較
柘植 あづみ 教授 3,200,000 基盤研究(C) 配偶子提供を伴う生殖補助技術の拡大要因の分析
野沢 慎司 教授 3,200,000 基盤研究(C) ステップファミリーの複雑性・多様性と子どもの福祉に関する調査研究
元森 絵里子 教授 3,200,000 基盤研究(C) 子どもの能動性の社会学的再考:教育・福祉・まちづくりの言説史と事例研究から
金 圓景 准教授 3,700,000 基盤研究(B) 認知症のある人の意思決定支援のためのソーシャルワーク実践モデルの構築
関水 徹平 准教授 3,300,000 基盤研究(C) ひきこもり事例のビニェットを用いた、ソーシャルワーク実践の国際比較研究
仲 修平 准教授 3,100,000 若手研究 自営的な就労経験者の職業移動に関する社会学的研究
平澤 恵美 准教授 3,400,000 基盤研究(C) 精神障害のある人を対象としたシームレスケアモデルの開発に関する研究
宮﨑 理 准教授 3,200,000 若手研究 当事者の経験が反抑圧ソーシャルワークの推進に与える示唆:在日朝鮮人女性を例として
上杉 妙子 研究員 2,700,000 基盤研究(C) 多民族国家の民軍関係に関する人類学的研究― インド陸軍ゴルカ兵を事例としてー
北川 清一 研究員 5,900,000 基盤研究(B) 当事者の経験が反抑圧ソーシャルワークの推進に与える示唆:在日朝鮮人女性を例として
古波藏 契 研究員 2,600,000 若手研究 「沖縄的紐帯」の歴史学的研究:米国統治下沖縄における人のつながりの形成と変容
保田 幸子 研究員 2,200,000 若手研究 医療資源の分配における公正性―通時的観点から

法学部


氏名決定金額(総額)研究種目研究課題名
太田 和俊 教授 3,000,000 基盤研究(C) グラフのゼータ関数を用いたゲージ理論の研究
小野木 尚 准教授 1,900,000 若手研究 擬似外国会社規制の理論的研究と立法論の展開
久保 浩樹 准教授 3,300,000 基盤研究(C) イデオロギー的分極化は一次元か?分極化と争点の多次元性をめぐる多国間比較研究
酒井 一博 准教授 2,500,000 基盤研究(C) リサージェンスに基づく弦理論の非摂動効果の探究
吉田 豊 助手 1,500,000 基盤研究(C) 超対称局所化に基づくゲージ理論の幾何学的性質及び可積分構造の研究

国際学部


氏名決定金額(総額)研究種目研究課題名
大川 玲子 教授 3,200,000 基盤研究(C) 改宗イスラーム教徒の聖典クルアーン解釈-現代西洋におけるその宗教認識-
坂本 隆幸 教授 2,800,000 基盤研究(C) 先進諸国のシングルマザー、非正規労働者、雇用と所得の格差ー社会投資政策効果の検証
浪岡 新太郎 教授 3,000,000 基盤研究(C) フランスにおけるムスリムの市民権行使の条件:リベラルな市民権による排除と包摂
榎本 珠良 准教授 3,500,000 若手研究 「人道的軍備管理」における差別的思考の分析と超克
紺屋 あかり 講師 3,300,000 若手研究 少数言語パラオ語のデジタルアーカイブをめぐるオーラリティ研究
江川 純一 研究員 2,800,000 基盤研究(C) 西洋近代における一神教/多神教/最高存在概念の再検討
重松 尚 研究員 3,600,000 特別研究員奨励費 リトアニア「人民民主主義」における非共産主義者に関する研究

心理学部


氏名決定金額(総額)研究種目研究課題名
金沢 吉展 教授 3,200,000 基盤研究(C) カウンセリング・心理療法の中断に関する研究
金城 光 教授 3,200,000 基盤研究(C) 高齢者における否定文の理解力と関連要因の解明:質問紙を活用した眼球運動測定実験
松嵜 洋子 教授 1,000,000 基盤研究(C) 幼児初期の子どもの「身体活動に関わる保育環境尺度」の開発
森本 浩志 教授 3,100,000 基盤研究(C) 認知症の人の家族介護者を対象とした集団CBT・ACTプログラムの効果
足立 匡基 准教授 13,300,000 基盤研究(B) 大規模前向きコホートデータを活用した科学的根拠に基づく子どもの自殺予防体制の構築
鞍馬 裕美 准教授 2,300,000 基盤研究(C) 教員の復職支援に関する研究-精神疾患による病気休職者に焦点化して-
滑川 瑞穂 准教授 2,200,000 若手研究 うつのアセスメントツールとしてのワルテッグ描画テストの利用可能性
根本 淳子 准教授 3,200,000 基盤研究(C) 学習設計のスキルを深めるための「学びほぐし」を取り入れた活動の提案
杉岡 千宏 講師 2,400,000 若手研究 情緒障害等通級指導教室における援助要請スキルプログラムの開発
木村 優里 助教 3,600,000 若手研究 一般市民が科学実践に参入し継続できるための支援方法に関する基礎的研究
清水 美紀 助教 2,400,000 若手研究 幼児教育の公共性に関する理論的・実証的研究―「無償化」をめぐる政治過程の分析から
山田 達人 助教 1,700,000 研究活動スタート支援 不登校予防を目的とした保護者評定版アセスメント尺度の開発と臨床的応用

教養教育センター


氏名決定金額(総額)研究種目研究課題名
猪瀬 浩平 教授 3,300,000 基盤研究(C) 雁皮/雁皮紙の人類学:人間と自然、市場、国家の多面的関係の探究
西 香織 教授 3,200,000 基盤研究(C) 多文化共生社会NIPPONを目指した「やさしい中国語」構築の試み
鈴木 陽子 准教授 2,100,000 若手研究 使用基盤モデルによる子どもの語彙と構文知識の習得についての研究
野副 朋子 准教授 3,300,000 基盤研究(C) ムギネ酸類及びニコチアナミンを介した植物の鉄欠乏シグナル感知機構の解明
長谷部 美佳 准教授 1,800,000 基盤研究(C) 多文化共生と女性運動との関連についての研究‐インドシナ難民支援を手掛かりに
土屋 陽祐 助教 3,200,000 基盤研究(C) 低負荷スロートレーニングによる血管内皮機能および骨格筋の適応メカニズムの解明
日高 知恵実 助教 1,600,000 若手研究 中国における官話方言の新たな受容・活用の実態解明に向けた包括的研究

研究所


国際平和研究所

氏名決定金額(総額)研究種目研究課題名
土井 智義 助手 2,400,000 若手研究 米国統治下の沖縄における本土籍者の活動と「日本人意識」:1945年~1972年

延長、再延長課題は採択一覧に含みません。

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