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ボランティア活動/社会運動を架橋し社会を変えていく

ボランティアコーディネーター 砂川秀樹

2022年4月に、ボランティアコーディネーターに着任しました。これまで明治学院大学とは、国際平和研究所研究員として、また「性の多様性」に関する講演の講師として縁がありました。講演で、毎回、真摯な学生の姿勢に心打たれていたこともあり、こうして、さらに明学に関われる仕事に就けたことを嬉しく思っています。

また、私にとって、「ボランティア活動」は、人生の大きな部分を占めており、自身のアイデンティティと深く関わっていることから、ボランティアセンターという場での仕事は楽しみでもあります。

私が初めて「ボランティア活動」に関わったのは、大学2年の時です。それは、ILGA(International Lesbian and Gay Association:国際レズビアン・ゲイ協会)という国際団体の日本での窓口となっていたグループでの翻訳ボランティアでした。そのボランティアに関心を持ったのは、自身がゲイであり、社会における同性愛差別を変えていきたいという思いを抱いていたからでした。ただ、その活動に参加したのは少しだけで、本格的に「ボランティア活動」に従事するようになったのは、1990年、大学4年のときに、HIV/AIDS(以下、HIV)の問題にとりくむ市民団体に参加してからのことです。

日本では、1980年代後半に、HIV感染に関連した社会的なパニックが起きました。HIV感染症は、治療法が進んだ今でも誤解が多くスティグマの強い病気ですが、当時は今よりはるかに差別的な扱いを受けやすい病気だったのです。その後、1990年代に入り、HIVの問はほとんど関心を持たれなくなりました。しかし、一度広がったHIVに対する偏見は変わりませんでした。そのような社会状況の中で、私がHIVに関する活動に参加したのは、HIVとゲイ、あるいは外国人と強く結びつけられ、複合的な差別が生じていることを見過ごせなかったからです。

それ以降、現在に至るまで、電話相談、啓発活動など様々な形でHIVの問題に関わりました。また、無償という意味での「ボランティア」としてだけでなく、非営利のCBO(Community Based Organization:コミュニティに根ざした組織)*で事務局長として働くこともありました。
*NPO(非営利組織)、NGO(非政府組織)という言葉は、ともに広い意味を持つことから、その両方の性質を持ちながら、コミュティに根差した活動をCBOと言います。

また、私は、CBOで働いたあと大学院に入るのですが、それからは、研究者として、啓発活動やHIV陽性者のQOLなどに関する研究にも携わりました。大学院に入ったのは、学部を卒業して6年経ってからのことです。CBOで働く中で、当時関わっていた啓発活動をより効果あるものにするためには、学問的視点が必要と思ったことが、大学院に入ることにした理由の一つでした。大学院では、文化人類学コースに属し、新宿二丁目のゲイコミュニティの研究で修士論文、博士論文に取り組みました。

しかし、大学院に入り、HIVに関しても研究者として関わるようになったからといって、活動から研究に移行したわけではありません。研究者の側面を持つことにより、私にとって、市民活動と研究は人生の両輪となりました。
大学院在学中、2000年に、東京のLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア/クェスチョニング)のパレード「東京レズビアン&ゲイ・パレード」(のちの東京プライドパレード)を実行委員長として実施しました。その後も、同パレードの母体の代表を務めるなど、2000年代の同パレードの開催に深く関わりました。

また、2011年には、故郷の沖縄に戻り、「レインボーアライアンス沖縄」を設立し、2013年には「ピンクドット沖縄」という、沖縄初となるプライドイベント**を開催し、2016年まで共同代表を務めました。
**プライドイベントとは、LGBTQが社会的に顕在化したり、公正に扱われることを求めたりするためのイベントです。

そうした活動を主体的におこないながら、研究者として、活動の経験とその中で得た知見を論文/論考として書いたりもしています。

このように、HIV/AIDS、LGBTQの問題に深く関わってきましたが、その活動を通して、貧困、不登校/ひきこもり、エスニックマイノリティ、知的障害、身体障害に関連する問題に取り組む人たちともつながってきました。また、精神疾患/障害や依存症の問題にも強い関心を持っています。近年、マイノリティに関係する問題について考える際、インターセクショナリティ(intersectionality)という複数のマイノリティ性や、社会課題との交差への意識の大切さが指摘されていますが、私もその視点を大切にしたいと思っています。
私は、この30年以上にわたる自分の活動に対して「ボランティア活動」としてよりも、「社会運動に参加している」「社会を変えていく」という感覚を強く持ってきたような気がします。その経験からも、ボランティア活動/社会運動という呼び名と、その間にあるイメージを越えて、様々な社会問題に関する活動と人々をつないでいきたい、活動を興したいと思っている人の役に立ちたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

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