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![]() =米国の映画監督オリバー・ストーンは,次のように述べた。==== 2023年 7月 29日 21:00 https://note.com/spiderman886/n/nbfa6c0f34531 ジョー・バイデン米大統領はウクライナで「自殺行為」のような 道を歩んでおり、米国をロシアとの「愚かな対立」に引きずり込む かもしれないと、高名なオリバー・ストーン監督が最近のポッドキ ャスト出演で語った。 金曜日にリリースされた英国のコメンテーター、ラッセル・ブラ ンドのポッドキャスト『Stay Free』のエピソードで、ストーンは ウクライナの紛争を「イラク戦争を始めたネオコンサバティブの動 き」のせいだと非難し、彼らはバイデン政権でいまだに重要な地位 を占めている。 「バイデンは古い冷戦の戦士であり、旧ソ連を本当に憎んでい て、共産主義ではないロシア連邦とまた混同している。「彼は我々 を愚かにも、譲るつもりのない国との対決に引きずり込もうとして いるようだ。これは(ロシアの)国境だ。これが彼らの世界だ。 NATOがウクライナに進出している。これはまったく別の話だ」。 この著名な監督は、ウクライナの紛争を「イラク戦争を始めたネ オコンの動き」のせいだと非難した。彼が名指しした人物の中には、 ビクトリア・ヌーランド国務副長官、ジェイク・サリバン国家安全 保障顧問、アントニー・ブリンケン国務長官など、バイデン政権の 主要人物が含まれている。 ==インターネットの編成原理と21世紀社会主義 (2021年12月22日)==== イギリスのジョンソン首相は,コロナウイルスに感 染し,死の淵から救出された。その時,イギリス国民に 次のような感メッセージ送った。治療にかかわった医療 スタッフ一人一人に名前で呼びかけ「まぎれもなくNHS (国民保健サービス)のおかげで命拾いをしました。・ ・・みんなのNHSはこの国の脈打つ心臓で,この国の最 も良い部分で不屈です。」と。 そして自己隔離中に「 社会というものが存在する」とツイッターに投稿した。 医療費無料のNHSは,イギリスでは単なる医療シ ステム以上の意味がある。社会の在り方として,国民は NHSを誇りとし信奉してきた。すなわち,市場経済= 資本主義では解決できない「欠乏,病気,無知,不潔, 怠惰」という「五つの巨悪」から,すべてのイギリス人 を解放するという社会の理念をNHSが象徴している。だ からコロナとの闘いで,最前線のNHS医療従事者・職員へ 感謝を伝えることが,国民の「正義」となっているので ある。「鉄の女」サッチャー首相の後継者,「市場原理 主義者」「新自由主義の申し子」のジョンソン首相をし て,「NHSはこの国の脈打つ心臓で,この国の最も良い 部分で不屈です。」そして「社会というものが存在する」 と,言わしめたのである。市場は万能ではない。市場に 任せれば,すべてうまく行くなどということは幻想でし かない。 フレドリック・ジェイムソンは,「資本主義の終わり を想像するよりも,世界の終わりを想像することのほう が容易だ」と。そうだろう。地球環境破壊や自然災害, そして疫病。農業は,常にこの危機にさらされている。 資源と環境の有限性を自覚し,これを制約条件としつつ 需要の増大への対応を考えざるを得ない。だから地球温 暖化・格差社会・1992年リオ・アースサミットから99年 シアトルへと高まる反グローバリズム運動が地球規模で 広がっていくのである。無秩序な自然環境・生態系への 介入した結果生まれるウイルスによる人間破壊が,パラ ダイム転換を迫っている。これが,資本主義社会の限界 と未来社会への展望を見出そうとする運動を,組織して いる。そして今年(2020年)発生したコロナ・パンデミ ックで,我々はこのことを改めて思い知らされた。 「資本主義が唯一の存続可能な政治・経済制度であるの みならず,今やそれにたいする論理一貫した代替物を想 像することすら不可能だ,という意識が蔓延した状態 (=資本主義リアリズム)」は,打ち破られたのではな いか。資本主義の〔集中=私有=独占〕の「集中を計画 」に,「私有=独占を国有(国家独占)」に代えただけ のソ連・東欧型の,資本主義のアンチテーゼとして「20 世紀社会主義」のトラウマから人々は解放されつつある。 インターネットの編成原理〔分散=共有=公開〕は, 〔21世紀社会主義〕社会の編成原理と言えないか。 ==拝復 O様 「自粛」 2020年9月4日== 確かにそうですね。「『菊と星条旗』というキャッチ ・コピーのアイデアに自己陶酔」に文字どおり酔いしれ たのでしょう。白井は,ベネディクトの『菊と刀』をも じったのかもしれません。小生は「炎上」のことは知り ませんでしたが「みっともない」の一言でしょう。 愚生も,お送りした論評・エッセイ「昭和・平成・令 和の天皇代替わりと戦後日本――ドームのごとく日本を 覆うアメリカと象徴天皇制」で,山田盛太郎『分析』の 「ドームのごとき威容を誇る天皇制=軍義的官府」に倣 って,戦後のそれを「アメリカ=象徴天皇制政府」とし ました。 ここで問題は,そして悩んでいる所は,それを支える 「イデオロギー」は何か,です。山田流に言うと戦前の 官府を支える二本の柱(二層穹窿)である「家父長的家 族制度」と「ナポレオン的観念」は,「戦後では何か」 という問題です。戦前のそれを「天皇制ファシズム」と いう理解・論は,32テーゼ以来のもので,講座派理論を 継承する歴史学界の主流的見解でした。やはりここで元 に戻ってしまいます。では戦後のそれは「何か」にです。 これを考えるとき山田が,権威=権力機構を支えるも の=柱を,「家父長的家族制度」と「ナポレオン的観念 」といったことに思い当たるのです。「ファシズム」と いうと,「・・・イズム」から「マルキシズム」のよう な思想体系を連想してしまいますが,思想体系でないも のが戦前日本を真綿のように覆い,国民はそれに絡めと られていた,と思えてならないのです。くだんの「エッ セー」にも書きましたが,天皇の白馬をみると,あの瀬 永亀次郎さえ「ゾク」とした感情や「天皇=天子様をみ ると目がつぶれる(そっと見たが目はつぶれなかった) 」といった少女時代の感想が示す,「(ナポレオン的) 観念」=思い込み,ではないかと。 そこで,コロナの今日に思い当たるのです。「自粛」 です。この現象は,「世間への同調圧力」「皆さんそう してらっしゃる」という風潮です。小生が,マスクを着 けずに散歩をしていると,自転車に乗ったおじさんが, すれ違いざまに「マスクぐらいしろよ」と。自粛警察」 現象などという人もいますが,この風潮が民衆の中にあ り,これに「日の丸・君が代」「美しい国」「神の国」 と「反韓国・反中」が,のせられ,セットになってい る。 言うまでもなく自粛による行動制限・規制は,法的拘 束力がなく,国民に自己決定を強いる,いや自己決定ど ころか「皆さんに,そうしていただいている」という同 調圧力なって,社会が動く仕掛けとなっています。 これが,戦後の「アメリカ=象徴天皇制政府」を支え る太い柱の1本で,もう1本は,そう,土地所有(投機・ 零細農地・宅地)なのでしょうか。 ポスト冷戦30年の帰結(2020/7/20) ネット新世界が拓く21世紀社会主義 インターネットから見る〔21世紀社会主義〕への展望 アントニオ・ネグリとマイケル・ハートは著書『帝国 ~グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』で、 グローバル時代の民主主義の在り方を、世に問いかけた。 それは、「絶対的民主主義」である、と。今から30年も前 の1990年のことである。ネグリとハートは、ネットワーク 社会においては、多様な価値観や利益の違いをもつマルチ チュード=群衆・大衆が、差異を認めあいながら共に働き、 自らが自らを統治する、と。そしてそういう社会の政治形 態を「絶対的民主主義」社会としたのである。今、そうし た社会編成の原理が、だれの目にもはっきりと映るように なってきたのではないだろうか。 イギリスのジョンソン首相は,コロナウイルスに感染し, 死の淵から救出された。その時,イギリス国民に次のよう な感謝のメッセー送った。 治療にかかわった医療スタッ フに名前を一人一人呼びかけ 「まぎれもなくNHS(国民 保健サービス)のおかげで命拾いをしました。・・・ みんなのNHSはこの国の脈打つ心臓で,この国の最も良い 部分で不屈です。」 https://www.bbc.com/japanese/52266017 そして自己隔離中に「社会というものが存在する」とツ イッターに投稿した。 https://www.youtube.com/watch?v=KkUwuYxVmJY 医療費無料のNHSは、イギリスでは単なる医療シス テム以上の意味がある。社会の在り方として,国民はN HSを誇りとし、信奉してきた。 すなわち,市場経済 =資本主義では解決できない「欠乏、病気、無知、不潔、 怠惰」という「五つの巨悪」から、すべてのイギリス人 を解放するという社会の理念をNHSは象徴している。だか らコロナとの闘いで、最前線のNHS医療従事者・職員 へ感謝を伝えることが、国民の「正義」となっているの である。 「鉄の女」サッチャー首相の後継者,市場原理主義者 のジョンソン首相をして「NHSはこの国の脈打つ心臓で, この国の最も良い部分で不屈です。」と,言わしめた。 市場は万能ではない。市場に任せれば,すべてうまく行 くなどというのは,幻想だ。このことが今度のコロナ・ パンデミックがあぶりだした。こうした考え方は,イギ リスにとどまらない。世界の市民運動家(C20)は,G20 首脳に,真の対立軸は「新自由主義対人間と地球の持続 可能性」だとし,「新自由主義」からの脱却を主張して いる。 インターネットの編成原理〔分散=共有=公開〕は, 社会の編成原理でもある。その社会とは「共同の生産 手段で労働し自分たちのたくさんの個人的労働力を自 分で意識して一つの社会的労働力として支出する自 由な人々の結合体」(『資本論・第1巻』105頁、大月 書店)社会である。資本主義の〔集中=私有=独占〕 のアンチテーゼとしての〔20世紀社会主義:(物動) 計画と公有〕,それに代わりうる〔21世紀社会主義〕 の可能性が見えてこないか。 【付記】コロナウイルスの疫学的対処として,インター ネットの編成原理のような〔分散=共有=公開〕もとづ く、研究体制が求められてはいないか。国=製薬独占企 業による利潤をめざした開発=研究ではなく。 コロナと世界 山中 伸弥 (日本経済新聞2020年4月20日) ――国際研究の重要性も高まっています。 「生命科学の分野は非常に競争が激しく、特許戦争があ りデータを隠す場合も多い。・・・しかしお金もうけを 目的とせず気持ちを一つにすることが大切だ。国の研究 費も競争に勝つよりもデータを早く公開し、他と協力し た研究者を評価する仕組みがほしい。そうでなければパンデ ミック(世界的な大流行)に立ち向かえない」 21 世紀社会主義を切り開くネット新世界 (1)~(5) 2020年4月17日 はじめに―〔21 世紀社会主義社会〕への展望 木曽路はすべて山の中である」という一文から始まる『夜明け前』 は、明治維新前夜を背景に、新しい時代への期待をいき生きと描 き出した小説である。青山半蔵を中心に、当時の数多くの庶民たち の、木曽の片田舎で新しい時代の息吹を感じながら生きる様子、ま たその後の落胆も描かれている。藤村は、小説のタイトルを新時代 の始まり、「夜明け前」とし,「江戸の黄昏」「ポスト徳川」とは しなかった。 第二次世界大戦後の世界、冷戦時代は、社会主義体制と資本主 義体制の二つの体制の対抗の時代であった。体制間対抗の力が世界 をデフォルメしてきた。しかし 1989 年の東欧革命と 1991 年のソ 連邦崩壊をもって、その時代は終わった。ある人は、1991 年の湾 岸戦争以降をアメリカ一国覇権の時代とみ、またある人はその後の 展開を見据えて米中新冷戦時代と論じる。しかし冷戦終結後 30 年 が過ぎた。 2020年の今、新しい時代〔本来の21世紀社会主義〕の 始まり、「夜明け前」として、この時代30年を位置づけ直すこと はできないのだろうか。 「20 世紀社会主義」ではない、いわば〔21 世紀社会主義社会〕の 「夜明け前」、ポストではないプレ〔21 世紀社会主義〕期と位置 づけることはできないのであろうか。 この 30 年はどんな時代だったのか。それを一言でいえば「ヒ ト・モノ・カネ」が,国境を軽々と越えて往来するグローバリゼ ーションの時代だ,と言えよう。19 世紀末,太平洋をまたいで旧 世界=欧州と新世界アメリカをつないだものは,汽船と電信であ った。これになぞらえれば,現代のそれは,さしずめ航空機とイ ンターネットであろう。 情報=通信革命をつうじて生み出されたインターネットは,企 業活動はもちろん人々の生活に欠くことのできない社会インフラ となり,「ヒト・モノ・カネ」が国境を軽々と越えて行き来する グローバリゼーションの基盤となった。資本主義社会を旧世界に してしまう「Net新世界」が始まり広がっている。インターネッ トの編成原理〔分散=共有=公開〕が、20 世紀の〔集中=私有 =独占〕を機能不全にし〔21 世紀社会主義社会〕を切り開き つつある。 (2)インターネットの歴史と編成原理インターネットの編成原理 は、〔分散=共有=公開〕である。そもそもインターネットは、 ソ連のミサイル核攻撃から北米大陸を防御する防空システムの通 信網構築にルーツを持っている。しかしそのインターネットは、 大学間のコンピュータ・ネットワーク形成と並行して研究開発が 進められ、さらに資本・企業によってではなく、草の根の人々の 協同によって作り上げられていった。 インターネットは特定の誰かが開発したのではなく、数多くの 人々の協力によって作り上げられたのである。インターネットの 特性である〔分散=共有=公開〕が、生まれた。インターネット に必要なソフト・ウェアは、例えば UNIX にしてもその後継の LINUX にしても多くの人が関わりフリーソフトになったがゆえに 、世界標準となった。21 歳のリヌス・卜―ルヴァルド(Linus Torvalds)が 1990 年に LINUX のソースコードをインターネッ トに載せ、だれもが自由にダウンロードすることを可能にした。 トールヴァルドが利用者に求めたのはコ メントだけだった。プ ログラムとソースコードはすべての人に無料で提供され、自由 にプログラムを修正でき利用できたのである。2019 年 11 月 現在、世界最速のスーパーコンピュータ 500 台 は、すべて が Linux 上で動いている。この〔分散=共有=公開〕という編 成原理は、アルファベットや漢字などの文字の生成過程と機能に 似ている。文字は公しる共性をもち、書き記すことによって個人 を社会的に確認させる。誰の発明でもない。 (3)インターネットへの対応――国家・資本による取り込み (3-1)対応その1:アメリカ インターネットを制する者は、世界を制する。当然、国家・企業も 民衆もこれを取り込もうとしている。前者は利益の最大化を、後者 は運動を地球規模で組織していく。国家・企業 VS 民衆の対抗の中 でネット社会が形成されてゆく。1990 年代初頭からそうした動き が盛んになり、ハッキリしてきた。国家・企業の側ではアメリカの クリントン政権の下でのゴア構想がそれだが、全米を高速なコンピ ュータ・ネットワークで結び付け、アメリカの復活と成長を促そう とした。 アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)を中心として軍民両用技 術によって軍産学複合体の際限なき増強循環を軌道に乗せようとし ている。インターネットの企業・国家による取り込みは金融と情 報通信へのラッシュとなり,ニューエコノミーなどと評された情 報産業を牽引車とし1990 年代半ばからのアメリカの成長がもたら された。 さらに住宅バブルを牽引車とした金融による 2000 年代前半の成 長があった。だが前者は IT バブル、後者はリーマン・ショックと なって崩壊した。そして今は、異次元緩和による株価バブルでしの いでいる。産業の空洞化は止まらず中間・ホワイトカラー層の没 落と若者の貧困が,格差を広げている。 (3-2)対応その2:ドイツ製造業 だが,資本・国家のインターネットへの対応・取り込みは「カネ」 の面だけではない。あらゆる「モノ」がネットにつながるインター ネット(Internet of Things:IoT)は、情報交換することにより 「モノ」づくりを相互に制御する仕組みである。ドイツ政府が 20 11 年に「インダストリー4.0」構想として打ち出した。消費者のニ ーズ細かく吸い上げ,機械制大工業の「多品種大量生産」=「大 量消費」ではなく,多品種少量生産を効率よく目指そうというもの である。その構想のコンセプトは「工場のつながる化」だという。 フォルクスワーゲン社では,製造工程に RFID(Radio Frequency Identifier:無線タグ)を取り付け,組み立て工程の完全自動化 =「省力化」めざし,人手に頼ることない製造ラインの構築をめ ざしている。また RFID の「通し番号」により生産に関する情報 をインターネット上で一元管理し,タグを検索すればどのような 製造工程を経て、サプライヤーや輸送、販売などが,すぐにわか るようなシステムを構築した,という。2015 年には中国政府も 「中国製造 2025」を打ち出した。 (4)インターネットへの対応――民衆の対応と取り込み インターネットの国家・企業による取り込みは、民衆の側にも前段 (3)で述べたような強烈な副作用をもたらした。インターネット は、人・モノ・金が楽々と国境を超えるグローバリゼーションを 加速化させた。この 30 年のグローバリゼーションの過程は、同時 に格差拡大の 30 年でもあった。製造業のなどの実体経済の空洞化 は、アメリカのラストベルトを生み出し、各国製造業は海外依存を 加速させ、国内産業=雇用の空洞化を生み出した。その結果、アメ リカが典型だが、金融・情報通信の 1%の億万長者と 99%の貧困 層を生み出した。この強烈な格差は、もっとも強い痛み=主要矛盾 となって表れ、90 年代以降の民衆の国際的統一行動を組織した 。92 年リオ・アースサミット・99 年シアトルWTO総会反対デモは、 世界社会フォーラムを組織し、反グローバリズム運動は今日も続い ている。資本対賃労働にまつわる痛みは、副次矛盾となり、労働運 動は脇に追いやられる格好になった。 グローバリゼーションは、労働運動自体に深刻な打撃を与えた。 国民経済という揺(ゆり)籠(かご)の中で,資本・企業は労働組合の 賃金や労働条件改善の要求に応えることは、労働生産性向上と消費 需要拡大を実現し,労働者を資本・企業に取り込む一石二鳥の策と もいえた。しかし「ヒト・モノ・カネ」が自由に国境を超えるグロ ーバリゼーションは,このような努力を無用なものにした。労賃コ ストの上昇は,生産の海外移転を招き,国内の産業空洞化を招いた 。このように資本・企業の側の経営戦略選択の幅が広がり,労働者 側,とくに労働組合の戦略的立場を危ういものにした。労働組合は、 既得権 にしがみつく利己的な集団とみなされことも少なくない。 とりわけ非正規労働者を初めとした雇用の多様化は,社会の底辺の 者たちとの距離を広げ,労働組合への不信が蔓延した。1979 年サ ッチャー政権の誕生は,この労働組合への不満と批判にあったこと は、よく知られている。「リフ・ラフ――最下層の人々」(1991 年)や石が降るほどの貧困を描いた「レイニング・ストーンズ」 (1994 年)と敗北に終わる炭鉱労働組合の闘争を描いた「ブラス 」(1996 年)は,そうした状況を反映したイギリスを描いている。 2011 年には〈ウォール街を占拠せよ〉〈We are 99%〉を叫びな がらオキュパイ・ムーブメントがおこり、全米各都市からロンドン ,ローマ,ブリュッセルなど 100 ヵ国以上に運動は広がった。20 19 年にはスウェーデンの 16 歳の高校生が呼びかけた温暖化への 抗議は、SNS を通じて100 カ国以上に広がった。この一方で、本 流のいわばメダルの裏側に、グローバル化への反発や不満などが、 既存秩序の外で周辺化された人々の間に、ポピュリスト的エネル ギーとなってたまり、噴出している。ブグレジット(英国の EU 離脱)や外国人労働者の排斥、自国第一主義を掲げるトランプ大統 領の登場などがそれである。 民衆の国際的統一行動・反グローバリズムの本流は、"Global Justice Movement"、とくにフランスでは「もう一つの世界を志向 する人たち」という意味で"Altermondialiste"という新しい社会へ の運動も生み出している。イエズス会は 2015 年文書「グローバル 経済における正義~持続可能で、誰も排除されない社会をつくるた めに」 を発出した。その中で世界経済の格差を指摘し、「公正 な貢献」(contributivejustice)と「公正な分配」 (distributive justice)を主張している。 また「ブランドなんか、いらない」で一躍、反グローバリゼーシ ョンの旗手となったナオミ・クラインは、『資本主義 VS. 気候変動 、これがすべてを変える』で、「戦う相手は資本主義だ」と主張し ている。2020 年米大統領民主党予備選挙で、若者は民主社会 主義者・サンダースを支持し、「約 70%が『社会主義者』に投票 したい!」と、言っている。20 世紀社会主義の「しがらみ」から 解放され、「社会主義」の新しい形での「復権」が起こっている。 (5)インターネットから見る〔21 世紀社会主義〕への展望アント ニオ・ネグリとマイケル・ハートは著書『帝国~グローバル化の 世界秩序とマルチチュードの可能性』で、グローバル時代の民主 主義の在り方を、世に問いかけた。それは、「絶対的民主主義」 である、と。今から 30年も前の 1990 年のことである。ネグリ とハートは、ネットワーク社会においては、多様な価値観や利 益の違いをもつマルチチュード=群衆・大衆が、差異を認めあい ながら共に働き、自らが自らを統治する、と。そしてそういう社 会の政治形態を「絶対的民主主義」社会としたのである。今、そ うした社会編成の原理が、だれの目にもはっきりと見えるように なってきてはいないか。インターネットの編成原理〔分散=共有 =公開〕は、社会の編成原理の本質的要素、真髄である。その社 会とは「共同の生産手段で労働し、自分たちのたくさんの個人的 労働力を自分で意識して、一つの社会的労働力として支出する自 由な人々の結合体」(『資本論・第 1 巻』105 頁、大月書店) 社会である。資本主義の〔集中=私有=独占〕のアンチテーゼと しての〔20 世紀社会主義(物動)計画と公有〕を止揚する〔分 散=共有=公開〕を編成原理とした〔21世紀社会主義〕、その 可能性が見えてこないか。 ■天皇代替わりと戦後日本(2020年2月7日) 人気アイドル・グループ「嵐」が、令和元(2019)年11月9 日、皇居前広場で行われる「天皇陛下の御即位をお祝いする国 民祭典」で、パフォーマンスを披露する,という。メンバーの一 人は「おれたちでいいの、活動休止することはご存じだよね」 と驚いた、「嵐」といえばジャニーズ事務所所属のアイドル・ グループであるが、そのジャニーズ事務所オーナーで芸能プロ モーター、音楽プロデューサーのジャニー喜多川が、今(2019 )年7月に亡くなった。 ジャニー喜多川は、1931年ロサンゼルス生まれ、太平洋戦争 中は、日本に送還され家族と共に日本に在住した。敗戦後の19 47年に再渡米し、高校・大学生活を送りながら、ステージ・マ ネージメントなどの仕事をし、アメリカのエンターテインメン トを体験し身に着けていった。1952(昭和27)年に再来日し、 アメリカ合衆国大使館に勤務していたので、その間「ワシント ンハイツ」に住んでいた。その時に中学生らに、ワシントンハ イツ内の野球場で、少年たちに野球を教えていた。ある日ミュ ージカル映画「ウエスト・サイドストーリー」を見てすっかり 魅せられた4人は、「俺たちもやってみたい」 と言い出したと いう。少年野球団の名前をそのまま残した「ジヤニーズ」で、 ジャニー喜多川は、4人を「歌って踊れるアイドル」として、 芸能界にデビューさせたのである 。デビューは、1962年NHKの『夢であいましょう』のバックダ ンサーだった。その時、あおい輝彦は代々木中学の1年生であっ た。ジャニー喜多川は、1980年代以降、「たのきんトリオ」・ 「フォーリーブス」・「光GENJI」・「SMAP」・「嵐」・「ジ ャニーズWEST」と、次々に男性アイドル・グループを芸能界 に送り出し、ヒットさせていった。 戦後、音楽・芸能界の草分けたちは、米軍キャンプでジ ャズやブルースなどを演奏したり歌ったりした人たちが多かっ た。ジャニー喜多川は、日系二世として再渡米中の4年間に、 アメリカンスタイルの音楽のエンターテインメントを体験し、 早くから日本に移入・移植できた人であった。先ほどジャニ ーズのメンバーが「ウエスト・サイドストーリー」にすっか り魅せられた、と述べたが、ジャニー喜多川は、このミュー ジカルにヒントを得て、「歌って踊れる少年たち」育て、芸 能界に送り出し続けたのである。ジャニーズに限らず、それ 以降歴代のグループもそのスタイルを踏襲している。音楽評 論家の湯浅学は「ジャニーさんは黒人音楽をかなり早くから 取り入れていた。ジャニーズの歌い手であるためには、リズ ム&ブルースの素養と、歌って踊れることが最低限の条件だ った」と話す。 ジャニーズがデビューする4年前の1958年、マイケル・ジャ クソンがデビューしていた。モータウン・レコードの黒人ボ ーカル・グループ、ジャクソン家の兄弟で構成された5人組、 ジャクソン・ファイブは、末弟マイケルの天才的な歌唱力と ダンス・パフォーマンスによって一躍人気を得ていった。そ の時マイケル・ジャクソンは、11歳だった、という。それは、 コンサートでもオペラでもミュージカルでもない、これまで とは違うジャンルの「エンターテインメント」だったのであ る。エンターテインメントとは、人々を楽しませる娯楽を指 し、類語は、楽しみ・気分転換・気晴らし・遊び・息抜き、 などである。それは、サラダボウル・アメリカのアメリカ 文化であり、「エンターテインメント」こそ、日本人に教え るべきアメリカ文化だったのである。アメリカの濃い影を 感ずる。戦後日本社会をドームのようにすっぽりと覆い, 「戦後日本の復興と繁栄はアメリカのおかげ」は、信仰・ 権威となった。ジャニーズは、皇居前広場で行われる「天 皇陛下の御即位をお祝いする国民祭典」で、パフォーマン スは、戦後日本を覆っている権威=権力であるアメリ カ=象徴天皇制のそれであろう。令和の時代が始まる。 ■ポスト冷戦時代と世紀末大不況(2018/07/04) 20世紀末から今に至る長期不況・停滞は,ちょうど19世紀 末不況に重なってくる。詩人ハイネは,大陸欧州の鉄道網を 時間と空間の抹殺と評した。19世紀の後半になると,運輸・ 交通革命の進展によって,アメリカやロシア,インドから大 量の農産物が,ヨーロッパ農産物市場へ入って来るように なった。とくに新大陸アメリカでは,19世紀後半から様々 な農業機械が農作業に投入され,農業の生産性が高まった。 地代がないかあるいは非常に低いために,アメリカからの 安価な大量の農産物流入は,ヨーロッパ市場の農産物過剰 を生じさせ農産物価格を低落させた。19世紀末ヨーロッパ を中心とした長期農業恐慌である。農産物の「価格破壊」 「価値革命」である。 これと同時にアメリカではヨーロッパと全く違った工業製 品の生産システム(フォーディズムとテーラーシステム)が 生まれ,工業製品の価格破壊も同時に起きた。これに類似し た現象が20世紀末から21世紀初頭にかけて起きている。半導 体部品の性能1万倍,価格1万分の1に象徴される価格性能比 の「革命」である。今や,それは商品生産の機械化,省力化 ,自動化を超えて,デジタル化,ソフト化,IoT(Internet of Things)化、AI(artificial intelligence)化と進化し てきている。そのスピードゆえに独占がきかない。いや, スピードだけはない。デジタル化,ソフト化,IoTやAIとい った技術が,いまや生産を決定する。その編成原理が独占を 許さない。 このことはインターネットの生成史が教えてくれる。その 歴史において驚くべきことは,インターネット・プロトコル (TCP/IP)の生みの親であるV・サーフやR・カーン,WWWの 開発者でWebの父と呼ばれたT・B・リー、ハイパーテキスト を考案したT・ネルソンなど,インターネットの開発者たち は,仕様を公開し誰一人として権利(特許)を主張しなか った。多くのネットワーク関係者が共通認識をもち,一緒 に研究開発を進めなければ,自身の研究も全体の研究も進ま ない,と認識していたからでる。編成原理は分散=共有であ り,独占はできないし無意味である。 この編成原理が,編成原理が日本から始まりNICsを巻き込 み,今や「世界の工場」となった中国の工業製品の「価格破 壊」「価値革命」が,アメリカをはじめとした先進国地域の 長期停滞・不況を引き起こしている。世界は,20世紀末長期 不況の真っただ中にいる。19世紀末から20世紀初頭にかけて 資本主義は自由競争段階から独占段階に遷移した。しかし, その時代は平和には程遠い,帝国主義・冷戦帝国主義=社 会主義による熱戦と冷戦の時代だった。21世紀初頭の今, 資本主義は,自己変革し新しいステージに立てるのだろうか。 ■コインについてもっと考える その2:コインチェック騒動始末記 2018年3月17日 ビットコインは,結局カジノのチップみたいなものです。 カジノの客は,現金でチップを買ってカジノでバクチをしま す。チップ自体はカジノの中で掛け金として使えるだけで, それ以外で使えるわけでもなく,何の価値も持ちません。そ こでの賭けによって大儲けができる人もいれば大損する人 も出ます。損=得イコールです。損得がかけによって「合 理的に清算される」ので胴元を信用しているのです。胴元は チップを客が買う時に,運営費や利益を指しい引いて交換し ています。競馬の場合は25%程度が運営費や利益として差し 引かれています。競馬や競輪などは国や市が胴元ですよね。 個人がカジノを開設・運営すると罰せられます。 ではビットコインをなぜ信用されるのでしょうか。ビ ットコインがアルゴリズム,数式で運営されているので, ビットコインの購入者は信用しているのです。 ビット・ コインは,1台のコンビューターが全てのデータを記録・ 管理する「中央集権型台帳」ではなく,「分散型台帳技 術」(「P2P」)とも呼ばれる技術で結合されているそう です。そして「それぞれのブロックは暗号化された技術 で鍵がかけられており,書き換えることができ」ないそ うです。その鍵(カギ)を解いて新しいブロックを作った 人は採掘人と呼ばれ,「ビット・コイン」をご褒美として 入手できるようです。こうしてブロックは世界中の同意す る参加者のコンピュータにつながり,特定の一人(国・ 中央銀行)でなく,参加者による分散管理,いわば「万人 (参加意思のある)による管理ができる。こうして信頼 の理屈がうまれ,信任を得ることができる,,というわ けです。そのカギが,数式(Hash),アルゴリズムです。 信頼の鍵が数式だという問題です。 アメリカ特許法( たぶん日本でも)では,数式,アルゴリズムには特許が 発生しません。独占できない。たしかに,インターネッ ト生成史において,驚くべきことは,インターネット・ プロトコル(TCP/IP)の生みの親であるV・サーフやR・カ ーン,WWWの開発者でWebの父と呼ばれたT・B・リー、ハイ パーテキストを考案したT・ネルソンなど,インターネット の開発者たちは,仕様を公開し誰一人として権利(特許) を主張しなかった,そうです。多くのネットワーク関係者 が共通認識をもち,一緒に研究開発を進めなければ,自身 の研究も全体の研究も進まない,と認識していたからです 。編成原理は分散=共有であり,独占はできないというこ とです。ビットコインも分散=共有原理を体現している, かのようです。ビットコイン参加者は,数式アルゴリズム の美しさを信用しているのです。だがそれは部分です。 問題は運営です。運営は独占=占有で,分散=共有では ありません。 例えば昨2017年5月10日午前11時46分にシステム障害が発 生した際,コインチェックはその障害で発生した不利な取 引(ビットコインの暴騰)を帳消(発生時以前にロールバ ック=戻した)にしました。法定通貨にとってかわること はないでしょう。運営が共有=分散されていないから です。 数式・アルゴリズムは,現代の「釈迦如来像」 か「聖体顕示台」かも知れません。数式・アルゴリズム 信仰はビット世界の信仰の対象かもしれません。ですが, 私たちは,アトムの世界・物質の世界で生きています。 ■ビット・コインについて考える:コインチェック騒動 2018年1月24日 ビット・コインは,1台のコンビューターが全てのデ ータを記録・管理する「中央集権型台帳」ではなく, 「分散型台帳技術」(「P2P」)とも呼ばれる技術で結 合されているそうです。そして「それぞれのブロックは 暗号化された技術で鍵がかけられており,書き換えるこ とができ」ないそうです。そこで「腑に落ちた」事は, 以下のことです。その鍵(カギ)を解いて新しいブロッ クを作った人は採掘人と呼ばれ,「ビット・コイン」を ご褒美として入手できるようです。こうしてブロックは 世界中の同意する参加者のコンピュータにつながり,特 定の一人(国・中央銀行)でなく,参加者による分散管 理,いわば「万人(参加意思のある)による管理ができ るという理屈」がうまれ,信任を得ることができる。 そのカギが,数式(Hash)というわけです。では現行の ビットコインはどのように使われているのでしょうか。 ビット・コイン送金では,手数料が安くメリットがあ るとか,代金決済にも利用されているようです。例えば 音楽配信サービスの決済とアーティストへの料金配分・ 送金に利用し,著作権協会の中間マージンを節約できて いる事例もあるようです。しかし円やドルなどの法定通 貨に交換する時,「交換レート」の変動があります。 本題に戻りますが,先ほど信頼の鍵が数式だ,と言い ました。この問題です。 アメリカ特許法(たぶん日本 でも)では,数式,アルゴリズムには特許が発生しませ ん。インターネット生成史において,驚くべきことは, インターネット・プロトコル(TCP/IP)の生みの親であ るV・サーフやR・カーン,インターネットを構成するWWW の開発者でWebの父と呼ばれたT・B・リー、ハイパーテキ ストを考案したT・ネルソンなど,インターネットの開発 者たちは,仕様を公開し誰一人として権利(特許)を主 張しなかった,そうです。なぜなら,これらの人々は、 多くの関係者が新しい提案をインターネット上に公開し, 問題点や解決策等を議論し,相互に批判・検討し合うこ とがインターネットの拡大・発展には必要不可欠である, と分かっていたからです。多くのネットワーク関係者が 共通認識をもち,一緒に研究開発を進めなければ,自身 の研究も全体の研究も進まない,と認識していたからで す。編成原理は分散=共有であり,独占はできないとい うことです。ビットコインも分散=共有原理を体現して いる,と言えるでしょう。だがそれは部分です。 問題は運営です。運営は独占=占有で,分散=共有で はありません。 例えば昨2017年5月10日午前11時46分にシステム障害が 発生した際,コインチェックはその障害で発生した不利 な取引(ビットコインの暴騰)を帳消(発生時以前にロー ルバック=戻した)にしました。とうてい「通貨の番人」 にはなれません。決済機能としての発展はあるかもしれ ませんが,法定通貨にとってかわることはないでしょう。 運営が共有=分散されていないからです。 ビットコイン限らず,この共有=分散という編成原 理は,現在進行形で,多方面にわたっています。製造業 の現場でも人間の労働がなくなってきています。今では AI(Artificial Intelligence)=人工知能=コンピュ ータによる知的な情報処理が,モノづくりでもコストダ ウンの要だそうです。直接的な人間労働がどんどんなく なっています。欧州ではそれによって生ずるワーキング ・プアーの問題に対して,ベーシック・インカムをどう するかが議論され始めています。日本では,それは個人 責任とされ,更なる労働条件・賃金の劣化が押し付けら れようとしています。「裁量労働制」として。 |