日本の近代化の使命を帯びてヨーロッパに渡った漱石や鷗外の世代とは異なり、大正から昭和にかけて活躍することになる近現代の作家たちは、しばしば独学に近い形で語学を学び、書物を通じて西洋文明の新たな潮流を感じとろうとしました。本講座では、これらの作家たちが震災や思想統制などの歴史の荒波の中で、身を削る思いで異国の言語と格闘し、新たな言語表現、造形表現の可能性を切り開いていった過程を明らかにします。訳読や翻訳という作業は、彼らにとって自らの宗教観、芸術観にあえて揺さぶりをかけ、内なる日本的なもの、土俗的なものとの共存を探る手段でもありました。自ら言語教育、外国語教育に携わった経験をもつ講演者たちが、そのダイナミックで個性的な生の軌跡をわかりやすく紹介します。
開講日 | 講演テーマ | 講演者 | |
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第1回 | 10月1日(火) | 大手拓次とボードレール |
畠山達 文学部フランス文学科准教授 |
日本詩壇近代化という潮流の中で大手拓次(1887-1934)はひときわ異彩を放つ詩人です。拓次独特の言語感覚や世界観の形成に、ボードレールの詩の翻訳や西洋の象徴詩論が果たした役割は計り知れません。その一面を翻訳や詩の分析を通して考察してみたいと思います。 | |||
第2回 | 10月3日(木) | 宮沢賢治の作品のなかのキリスト教 |
富山英俊 文学部英文学科教授 |
「銀河鉄道の夜」といった宮沢賢治の作品のなかにはキリスト教との接触の結果を示すいくつかの主題やイメージが現れますが、それらを宗教思想史に位置づけ、また根本的には仏教的であった賢治の世界観・芸術観との関連を考察します。 | |||
第3回 | 10月8日(火) | 中上健次、または伝聞形式による物語の享受 |
ジャック・レヴィ 文学部フランス文学科教授 |
中上健次(1946ー1992)における叙述の変遷をたどり、すでにいくつかの優れた中上論によって明るみに出されてきた「物語」との矛盾に満ちた関係が、しばしば引き合いに出される世界文学の作家と比べても、いかに特異な語りによるものであるのか、翻訳者としての経験を交えながら再考します。 | |||
第4回 | 10月10日(木) | 瀧口修造とシュルレアリスム ―関東大震災から太平洋戦争まで― |
巖谷國士 明治学院大学名誉教授 |
「瀧口修造とシュルレアリスム—関東大震災から太平洋戦争まで」 瀧口修造(1903ー1979)は生涯にわたってシュルレアリスムを実践・研究した詩人・批評家・芸術家。今日の日本に似た大震災以後のモダニズムとファシズムの時代に、彼がどのように実験と試行と苦闘をつづけたか、その過程を、当時の作品と資料をもとに語ります。 | |||
第5回 | 10月15日(火) | 翻訳は文学の栄養素 ―谷崎潤一郎と井伏鱒二をめぐって― |
野崎歓 放送大学教養学部教授 |
「翻訳は文学の栄養素—谷崎潤一郎と井伏鱒二をめぐって」 谷崎潤一郎と井伏鱒二。まったく対照的な二人ですが、いずれも西洋文学との対話をとおして、独自の道を切り拓いた作家たちです。両者の軌跡をたどりながら、「翻訳」がもつクリエイティヴな意味を明らかにしたいと思います。 | |||
第6回 | 10月17日(木) |
芥川龍之介と精神分析 |
篠崎美生子 教養教育センター教授 |
芥川龍之介が大量の書物を通じて摂取した西洋文化のひとつに、精神分析学もあります。当時最先端の精神分析学を参照することで、これまで、芥川の個人的な苦悩の反映として読まれがちであった晩年の小説の再解釈を試みたいと思います。 |
開講時間 | 18時45分-20時15分 ※第1回と第6回は、開講式および閉講式を行うため、終了時間が15分繰り下がり20:30となります。 |
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募集対象 | 原則、港区内在住・在勤・在学の方 |
会場 | 明治学院大学 白金キャンパス 2号館2301教室 |
募集人数 | 100名(申込先着順) |
受講料 | 2,500円(全6回) |
申込手順 |
E-mail または往復はがきの標題に、「みなと区民大学申込み」とご記入のうえ、次の事項を明記してお申し込みください。 E-mailまたは往復はがきを確認次第、E-mailまたは復信はがきにて受講票をお送りします。 ※受講料納入後の払い戻しはできませんので、あらかじめご了承ください。 |
申込期間 | 2019年9月27日(金) 消印有効 ※定員超過の場合、期限内であっても受講をお断りすることがございます。あらかじめご承知おきください。 |
申込先 | E-mailの場合 : skoukai@mguad.meijigakuin.ac.jp 往復はがきの場合 : 〒108-8636 港区白金台1-2-37 明治学院大学 総合企画室社会連携課宛 |
その他 | 開講当日、構内へは自転車を含め車両乗り入れはできません。電車・バス等の公共交通機関をご利用ください。 ※個人情報の取り扱いについて 明治学院大学では、受講生の皆様の申込時における個人情報については、「学校法人明治学院個人情報保護基本規程」に沿って厳重に管理いたします。これらの個人情報は、明治学院大学の講座・セミナー等のご案内用としてのみ利用いたします。第三者には提供いたしません。 |
パンフレット | パンフレット |
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