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2024年1月25日

「AI・データサイエンス教育プログラム」から学会受賞!

2023年度からスタートした全学部対象教育プログラム「AI・データサイエンス教育プログラム」。2023年度はレベル1科目「AI・データサイエンス入門」が春学期・秋学期にそれぞれ開講されました。

春学期に開講された「AI・データサイエンス入門」では、履修者のちょっとした質問から授業内プロジェクトが立ち上がり、その研究成果が第28回日本顔学会大会(フォーラム顔学2023)でオーディエンス賞を受賞するという大きな成果になりました。

「AI・データサイエンス入門」担当の永田 毅先生、顔学会でポスター発表をした経営学科4年の高橋さん、消費情報環境法学科2年の遠藤さんのお2人に、本科目と学会受賞についてお話を伺いました。
 

履修者の「知りたい」が授業内プロジェクトに

永田 私はもともと研究のネタを探していたようなところがあって、学生と一緒に何か面白いことをやりたいと思っていました。授業内アンケートで遠藤さんが「人気のある顔の時代ごとの変遷について知りたい」という面白い質問をしてくれました。私の知る限り、断片的には研究されているものの、網羅的な研究はないことに気づき、これはとても良い研究テーマになると思いました。なぜなら、顔を研究する方なら、誰もが興味を持つテーマである一方、網羅的な収集が大変であるため、手が付けられていなかったからです。幸い私の講義の履修生は約800名いましたので、声をかけてデータを収集すれば、実現できると思いました。また、私は今回のフォーラム顔学2023の実行委員でもありましたので、当初からフォーラム顔学2023での発表を念頭に置き、計画的に研究を進めていました。manabaの掲示板で、面白いと思うからみんなもやらないか、と声をかけたら49人が声を上げてくれ、その中に高橋さんもいました。
 
高橋 先生が募集のときに、大衆文化としてアイドル像の変遷を論じたものはあるけども、顔画像を対象とした求められるアイドル像の変遷について、データサイエンス的な研究があまりないと説明されました。アイドルの顔の変遷は素朴な疑問のようなのにまだ研究が少ないんだと、そこに驚いて興味を持ちました。

永田 49人を8つのチームに分けてそれぞれにリーダーを置き、1980年代、1990年代、2000年代、2010年代と4つの年代でそれぞれ男女のアイドルの画像を収集してもらいました。

高橋 Wikipediaに載っている各年代のオリコンのランキングを全て調べて、1980年代だったら「このアイドルは何回登場するから何割集めよう」というところからチームで話し合って、それぞれの枚数をチームに分配して、ネット上の画像を集めて行きました。

遠藤 私は2010年代の女性アイドルを担当しました。最近のアイドルはネット上の画像が多いので集めやすく感じました。

永田 そして、集めたものを簡単に言えば「平均顔」にしていきます。ただ画像そのものの平均をとってしまうと、ぼけた画像になってしまうので生成系AIの潜在変数というものに変換します。画像そのものの情報ではなく、生成系のAIが扱える顔の情報に変換します。その潜在変数の情報の平均を取って画像に戻してあげると綺麗な平均顔が作ることができます。そこが我々のアプローチのちょっとユニークなところですね。驚いたことに、画像収集以降の処理は高橋さんが一人で担当したんです。

高橋 このプロジェクトをきっかけに勉強してプログラムを作り始め、バーチャルアイドルを作るプログラムを作るまでに3カ月かかりました。

遠藤 私の疑問が今回の研究テーマになったわけですが、自分が思っていたことと通じる結果だったので、すごく納得しています。コンピュータやAIを使うと本当に結果が出るんだなとびっくりもしました。



フォーラム顔学での発表、オーディエンス賞受賞へ!

遠藤 学会でのポスター発表は私が担当しました。顔の研究をしている専門家が来るわけですから、専門知識がないと厳しい質問も多く、頭が真っ白になったりして大変でした。その場でプログラムのデモを見せると、「面白いね」という反応もありました。 
 
永田 参加者の票が最も多かったものがオーディエンス賞になります。遠藤さんの着想の良さと高橋さんの実装の素晴らしさが相まって、票を入れてくれたんじゃないかなと思います。 

高橋 今回の研究に携わった人数が多かったことも受賞理由の一つだと思っています。50人近くが参加しているプロジェクトは他にはありませんでした。





「AI・データサイエンス入門」の授業について

高橋 私は経営学科なので、普段はマーケティングだったり、会計から戦略の組織論まで、履修したり、経営学以外でも理科、情報、倫理、古典研究など、幅広く履修することを意識して学んできました。私は1年生のときにコロナ禍で時間があったことをきっかけにプログラミングを勉強していました。でも独学なのでしっかりした先生からAI・データサイエンスの勉強をしてみたいなと思って、この授業を履修しました。 

遠藤 私はもともとAIなどの話には興味がありました。テレビとかニュースではなく、自分の通っている大学の先生から体系的に学べるというのはとても貴重な機会だなと思い、即断で履修を決めました。

永田 「AI・データサイエンス入門」の授業は、文系の学生にもしっかり理解してもらえるようになるべく数式を使わない、数式の問題を出さないようにしています。数学ができなくてもちゃんと理解できるように講義を設計しています。

高橋 授業では、まずAIってそもそもどういうことが得意で、日常生活でどう使われているのや、データ分析の流れとか、有名なデータ分析モデルなどを情報量たっぷりに教えてくれるのでAIやデータサイエンスに対する解像度が大きく上がったと感じます。データサイエンスを勉強して、大学生活へ生かしてみたいという人にはとてもおすすめだと思います。履修者の質問を拾い上げてプロジェクトにしてくれた点も、貴重な経験でした。 

遠藤 私は「AI・データサイエンス入門」は文系、理系を問わず全ての人にすすめたい授業だなと思っています。私は法学部ですが、犯罪捜査でも顔写真を使うことがありますし、法律とAI・データサイエンスは無関係ではないと思います。 

高橋 経済学部でも、AI・データサイエンスの学びがダイレクトに役立つことがあると思います。例えば実験とか資料分析とかマーチャンダイズ系の授業や、それ以外でも、議論の背景にある実験とか研究の話のときに、AIやデータサイエンスの授業で出てくる知識が活かせると思います。 

永田 私が得意としているデータサイエンスに社会学や心理学など私が専門ではない分野の方に入ってもらって、新しい研究ができれば面白いなと考えています。今回遠藤さんと高橋さんをはじめとしたいろんな立場の方に入ってもらいすごく面白い研究ができました。1つ残念なのは、例えば平均顔の年代ごとの変化を心理学的に社会学的に見るとどうなのかという考察を深められれば良かったのかなと思っています。そういったところを今後、学生と一緒にやっていく時にはシナジーの効果が出るような研究をしたいと思っています。

 

発表ポスター「時代ごとのアイドルの顔分析とバーチャルアイドルの生成」
受賞の様子(奥から心理学科3年・中村さん、経営学科4年・高橋さん、消費情報環境法学科2年・遠藤さん、永田先生)

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