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2010年度エッセイ

白金通信「カウンセリング」およびポートヘボンお知らせより

大学生活の課題

Q. 今年から入学した一年生です。いままで大学合格を目標にしていたので、受験勉強中心の生活をしてきました。大学で何をしようかあまり考えていなかったので、これからの大学生活、何をしていけばいいのかよくわかりません。正直、想像していたのと違ってがっかりした感じもあるのですが…。(架空相談)
A. 大きな目標が達成されたということは、それ自体は喜ばしいことではあるのですが、次に何をしていいかわからない、という気持ちになる場合もあるようです。目標の達成は目標の喪失と表裏一体となるときがあります。それに、今までは、自動的に、進学という次の目標が見えて、特に悩むこともなかったかもしれません。しかし大学入学後は、「次の受験」というような形での目標や、目標への対応方法が外側から提供されることは少ないように思えます。もちろん卒業後の進路、就職という関門がいずれは控えているのですが、それは受験のための勉強とはまた違ったふるまいが要求される課題です。全般的に、大学生活はそれまでの学校生活とはちがい、自分で考え、判断して、行動する機会が格段に多くなるように思います。
履修を自分で組むことからはじまって、授業、課外活動などに対して、より主体的な参加が前提となりますし、大学内のみならず生活全般を自分でマネージメントしていく必要もあります。どのように大学生活を送っていくかということが、自分にゆだねられているといえるでしょう。大学生活においては、与えられる個々の課題にたいして主体的に関わる程度が増えるだけではなく、どのように今後の大学生活を送っていくかという課題、つまり、どんな課題を自分で自分に設定するか、という大きな課題もあたえられているのだと思います。
今回の相談でも、こういった新たな状況に直面しての、とまどいが背景にあるのかもしれません。ただ、「想像していたのと違う」という言葉から、何かしら想像や期待をいだいていることもうかがえます。それが現実的で、具体的に計画可能なものかは別としても、そこを手がかりにして、これからのことを検討していくことは出来るのではないかと思います。ただ、課題や目標を設定することが大事であるといっても、それがつねに成功裡に終わることはなく、失敗することも多いはずです。肝要なのは、事の成否よりも、試行錯誤というプロセスを踏むことだという考え方を同時に持っておくことも必要でしょう。
(白金通信2010年4月号「カウンセリング」より転載)

光あふれる新緑の、影に立ちどまって思うこと

新年度を迎えて1ヶ月。新しい環境、新しい生活のリズムには馴染めてきましたか?4月は皆さん、軒並みエンジンをオーバーヒート気味に回転させて大学生活に溶け込もうと努める季節です。周囲に調子を合わせて、ちょっと無理して社交的に振舞ったり、友人グループや教室内で「いい人」に見られたいがために、気を遣いすぎて窮屈に感じたりしがちです。たくさんメルアドの交換をしないと友人ができたように感じられなくて焦ったり、思うように話せる友人ができずに気持ちが落ち着かなかったり、自分の居場所はここにはない気がしたり。気持ちが通じ合う友達は1ヶ月そこそこでできるわけがない、グループは変わっていくものだと、頭ではわかっているのに・・・。そんな疲れが出てくるのがこの時期、GW明けなのかもしれません。
周囲は光に満ちてまぶしく、どんどん新しい芽を出して輝いていくように見える。木陰に佇んで、ふと気がつくと、自分だけ乗り遅れたような気がしてくる。または周囲との違和感を覚える。今は変化に対する過剰な適応への疲れが出る時期なんですね。ちょっと立ち止まって自分のペースを確認し、ここからはゆっくりじっくりのギアに切り替えるのも一つかもしれません。周囲の友人も、一見陽気に振舞ってはいるものの、意外と心の裏側では木陰の冷たい風を感じている、そんなことが見えてくるかもしれません。
就職を意識している学年の皆さんの中には、形に見える成果が掴めないと、自分の立ち位置が見えなくなることもあるかと思います。周りに頑張っている人がいて、そんな人の話を聞くと、さらに焦り、気持ちが空回りをする。そんな癖は、私たち皆が持ちあわせているものなのです。エントリーシートやレポートの締め切り、サークル活動での仕事など、何かを始めなければならないのに億劫で、手をつけられず、ずるずると先延ばしするうちに、いよいよ億劫さが増して動けず、さらに気持ちまで重くなってくる・・・そんな場合の対処法。まずは小さな一歩だけを今、踏み出すことです。例えばレポートだったら、今日はまずPCに字数のフォーマットを作る。それだけでも気持ちの重さは軽くなるはずで、大切な一歩です。
また、学生相談センターではカウンセラーが、皆さんの生活の中の小さな疑問、悩みを一緒に考えていけるよう、待機しています。一度のぞいてみてはいかがですか。
(ポートヘボン「お知らせ」(5月)より転載)


就職活動と心の回復力

Q. いよいよこれから就職活動に本格的に取り組んでいくことになる三年生です。情報はいろいろと入ってくるものの、何が本当に重要なのかは今ひとつよく見えず、不安が募ります。就職活動をうまく乗り切るための心構えのようなものがあれば教えてください。(架空相談)
A. 不安を取り除き、そして幸運の女神に微笑んでもらうためには、就職活動に関する知識やスキルを身につけたり、また企業分析や自己分析を行う努力がもちろん重要です。この点は皆さんが慣れ親しんできた試験勉強と重なります。
しかし、どのようなことを勉強すればよいのかがはっきりしていて、また結果も点数となって明確に出てくる筆記試験に比べると、就職活動では、ある程度マニュアル化されているところもあるものの、何がどのように評価されているのかがよくつかめないと感じられるところがあると思います。
自分なりに一生懸命がんばって準備したつもりでも、なかなか結果につながらないということが就職活動ではしばしば生じてくるでしょう。就職活動では試行錯誤しながら、手ごたえを確かめつつ進めていくというプロセスが不可欠であるという認識が必要です。そのため、失敗したとき、うまくいかなかったときに、そこから回復する心の能力が大切になってくるということをここではお話ししておきたいと思います。
私たちは失敗しないためにはどうすればよいかということをまず考えます。もちろん大切なことです。また「失敗を怖れるな(=考えるな)」ともよく言われます。しかし失敗することをあまりに回避したり、無視することは人を脆弱にします。
これまで自分が失敗したときにどのように落ち込み、そしてどのように対応してきたのか、あるいは対応しづらかったのかを考えてみることが役に立つと思います。これは結果的により深い自己理解につながります。完璧主義に陥りやすい、考えても仕方がないことを悩み過ぎて棚上げすることができない、愚痴や弱音を吐けない、といった自分自身の姿が見えてくるだけでも不安がある程度和らぐでしょう。
就職活動ではしっかりした意志をもち、前向きな姿勢で臨むことが強調されます。一方で自分の弱さ、不安を振り返り、それにどう対応するかを考えることも大切でしょう。これはこれから社会人として地に足の着いた仕事をしていくためにも必要なことであり、そういう力を備えた人材が、特にいざというときに会社を救うのではないでしょうか。
(白金通信2010年7月号「カウンセリング」より転載)

夏休みの休み方

夏もたけなわの頃、皆さんはこの猛暑の夏休みをどのようにお過ごしでしょうか?夏休みを満喫していると実感される方から夏休みだけれども休みという実感がない方まで、本当に人それぞれで様々な夏休みがあると思います。それぞれの夏休みだけれども、大学生活を学年ごとに大まかに見てみると、大学1年生は入学して3ヶ月を経て、長かったような短かったような春学期を終え、初めての夏休み。2年生は大学生活を1年経験し、経験者として過ごす2回目の夏休み。3年生はこれまで過ごしてきた大学生活と接近してきた卒業後の社会生活を念頭に置いた夏休み。4年生は進学する方以外は、学生生活最後の夏休みになります。
そのような中、大学生なんだから大学生らしい夏休みを過ごさなければ、周りの友達を見てあんなふうに過ごさなければならないと思い込んだり、周囲の人々から「学生なんだから」「長い夏休みがあるんだから」こうしなきゃいけない、こうすべきだ、などと影に日向に囁かれたり、何気なく言われたりすると、そういう期待や要求に応えなければ、応えられそうもない、応えられてない、できない自分はダメだ、いったい何をやってるんだろう、などと思ったりしていませんか?。
他者からの期待は、その期待が過剰でなく適度に受け止められるもので、それを活用することができた場合は、何らかの向上に繋がったり、達成感に繋がったりもします。しかし、期待が過剰であったり、一方的であったり、的を得てなかったりすると受け止める側は負担になります。更には期待を期待と意識できずに、期待通りにするのが当然と思ってしまったりもします。それが重なるとだんだん疲弊しますよね。さて、皆さんは期待をどんなふうに感じてますか?
そして、今まで何度も経験してきた夏休み、ここらで、周囲を気にするのをちょっと休んでみませんか。「休む」という字は、人が木に寄りかかって休むという意味を表します。皆さんもそれぞれの木に寄りかかって、この夏を休んで見ませんか?「木が見当たらない!」そんな時は、学生相談センターにいらしてみてください。
(ポートヘボン「お知らせ」(8月)より転載)


今からでも遅くない!

皆さん、ここまでの夏休みはいかがでしたか?今夏は各地で猛暑続き、あるいは台風や大雨に見舞われて、夏を楽しむどころではなかったかもしれません。でも9月も半ばを迎え、大学が始まるまであと数日です。どうか「最後よかった~」と思えるよう過ごしていただけたらと思います。何かをしてもいいし、何もしなくてもいいと思います。え~時間が短すぎる。そんなことはありません、まだいつもの週末以上の日数がありますよ。
貴方にとって「最後に感じたあの気持ちを忘れないでいたい。そうすれば後期もきっと大丈夫、何とかなる」と感じられる時間ってどういう時間なのでしょう・・・
ある人にとっては、誰かと一緒に何かをしたり。また、ある人にとっては一人で過ごしたり、本を読んだり。また、ある人にとっては所持金の許す範囲の鈍行列車に乗って、自然豊かなところに出かけたり・・・色々あると思います。今夏こそ、ぜひそういう時間を自分にあげて欲しいと思います。特別なことをする必要はないのです、大事なことは、夏休み最後に味わった気持ちが後期のエネルギーにつながっていく、そういう経験です。
なかにはそれでも、残りの時間は予定がつまっている、自由な時間がない。物理的な時間はあるけど気持ちにゆとりがない。あるいは、前向きになれない、そういうことを考えられない・・・人もいます。皆さんの中には、実際やらなくちゃいけないと思うことが一杯あって焦っていたり、間に合うのかと不安だったり・・・とにかく休んでなんかいられない、という人も多いでしょう。わかります。
でもそうしたら、ちょっと自分に聞いてみてください。「今の気持ちで後期を迎えて大丈夫?続けられそう?」と。
とにかく、まだ夏休みなのです。最後の一週間くらい、自分の身体と心を「休」ませてあげながら、力を抜いてみてください。力を抜くというのは安心するということ。後期になって、ちゃんと力が入るために、身体と心に栄養をあげて下さい。
(ポートヘボン「お知らせ」(9月)より転載)

自信を持つにはどうすればよいか

Q. 私はだめな人間だという思いが強くて、何に対しても自信がありません。これから先の実習や就職活動にも不安を感じています。何とかこの思いを払拭して自分に自信を持ちたいのですが、どうすればよいのでしょうか。(架空相談)
A. 自分を「だめな人間」と思っていると、ちょっとした失敗にも気持ちが落ち込んで、不安や恐怖、身体症状、うつ状態まで引き起こしてしまうこともあります。すると、ますます自信がなくなるのですね。本当に「だめな人間」なのでしょうか。というのは、あなたの思い込みである場合が多いからです。この思い込みは幼少期や思春期の辛い体験から自分に下した判定のようもので、現実に即した考えとはいえません。ゆがんだ考えなのです。このことにまず気付いてください。
「自信がない」とは「自己評価が低い」と同義で、自己評価の低い人は自己批判も強く、自分に厳しいルールを課しています。例えば「白か黒かの思考」、「完ぺき主義」、「短所ばかり見て長所に気付かない」、「たった一つの出来事から自分の全人格を判定する」、「自分に対する態度が他人に対するより厳しい」、「自分の責任ではないのに自分を責める」などですが、あなたにも心当たりはありませんか。きついですよね。もっと自分に優しくしてもよいのではないでしょうか。
否定的な面ばかり見ていると、自分の肯定的な面が見えなくなってしまいます。これでは不公平です。この考え方のゆがみを直して現実に即したバランスのよい考え方に変える方法の一つに「自分のよい点を沢山見つける」というのがあります。自分の素質、才能、技能、長所などの肯定的な資質に目を向けると自己肯定感が増して自分への評価が高まります。これが自信の基なのですね。
次の質問項目は「自信を持てないあなたへ」(メラニー・フェネル著、阪急社)より抜粋したものですが、自分のよいところを沢山見つける手がかりになると思います。「たとえどんなささいなことでも、たとえ束の間でも、自分の好きだと思えるところはあるか」、「どんな肯定的な素質をあなたは持っているか」、「これまでの人生で、たとえどんなにささやかでも、成し遂げたことはあるか」、「どんなに目立たないものでも何か才能を持っていないか。どんな技能を習得したか」、「人はあなたのどんなところが好きか、また評価しているか」。
いかがですか。できるだけ沢山書き出したよい点を絶えず読み返して、肯定的な自己評価を日常的に自覚できるように行動してみましょう。すぐに身につけるのは難しいと思いますが、自信を持つきっかけにはなると思います。
(白金通信2010年10月号「カウンセリング」より転載)

なんだか、やる気が出ない

Q. 冬になると、どうも気分が落ち込むような感じがします。就職活動をやらなきゃと思ってるけど、やる気がおきてきません。どうしたらやる気が出るでしょうか?(架空相談)
A. 季節の変わり目は、体調だけでなく、気分にも影響を与えることが医学的にも認められているようです。四季のある日本では、多くの方が寒さを感じる時期になると、なんとなく気分が沈んだり、寂しさを感じやすいみたいです。
特に気分の波が大きい方は、「やらなきゃいけないとわかっていても体がいうことをきかない、動けない」と感じるようです。それで生活に支障が出ているときは、健康支援センターや学生相談センターに一度相談してみることをお勧めします。ある精神科医の先生は、「不眠、疲労、不安、孤独が重なると、人間は精神的に追い込まれる」とおしゃっています。一人で悩まずに誰かにそのことを相談してみること自体が改善に近づくことも多いようです。
また「わざわざ相談にいくほどのことじゃないと思うけど、なんとなくやる気が出ない」という方も多いようです。
そして相談者の場合は、就職活動というこれまでとは違ったことに向かっていかなければいけないという状況にあるようです。就職活動に限らず、これまでと違ったことにチャレンジする時に、人間は少なからず不安を感じるようです。中には、「こんなに自信がなかったり、不安になるのは自分が弱いからじゃないか、自分だけじゃないか」と思う方もいるかもしれません。そうすると余計にプレッシャーを感じて、やる気が出づらくなるのかもしれません。それに気分の波もあいまって、やる気のなさに拍車がかかってるのかもしれません。何か不安に感じてる場合は、同じような境遇の人や身近な人に、そのことを話してみることが支えになることもあるようです。あるいは、「やる気が出ないのは何でなのかなぁ」「なんでこんなに不安なのかなぁ」と、自分を見つめ直して、整理していくことで、自分なりのやり方でやっていこうと思えることがあるようです。そのときは、「これまで自分は同じような状態のときどうやって切り抜けたかな」「どういうときにやる気が出たかな」と思い出してみるのも一つです。自分に馴染みのある方法は他の方法よりもやりやすいところがあるみたいです。
(白金通信2010年12月号「カウンセリング」より転載)


シッポの赤い猫のお話(その2)―夢の力

ミュウ:「やぁピー、明けましておめでとう!」
スズメのピー:「おめでとう。昨日は初夢の日だったね。どんな夢を見た?」
M:「ボク?あぁそう言えば、ねぐらが火事になっちゃう怖~い夢をみたなぁ」
P「火事?それってとってもいい夢じゃない」
M「どうして?」
P「人間は、一富士二鷹三茄子って言って、初夢にどれかを見るといい年になるっていうんだ。続きもあって、四葬礼五火事ってさ」
M「へぇ、お葬式もいい夢なのかぁ。不思議だね」
P「そういえばミュウの夢は何?見る夢じゃなくて持つ方の夢」
M「う~ん、特にこれってないんだけど、今年こそおなか一杯ミルクを飲んでみたいなぁ。ホラ、時々人間がくれるヤツ」
P「えー、そんなものしかないのかい?夢がないなぁ」
M「じゃあ、ピーにはどんな夢があるの?」
P「エヘヘ、それは秘密さ。でも、ボクにはちょっとデッカイ夢があるんだ」
M「ヘー、体はちっちゃいのにね」
P「からかうなよ。だって夢は大きい方が頑張れるだろ。じゃあ言うけど、いつか世界一周の旅に出たいんだ。だから今、少しでも長く飛べるように特訓してるんだよ」
M「それはすごいや。ボクなんかホラ、この前この赤いシッポのMせいで振られちゃってから元気が出なくてさ。未来のことなんて考えられないよ。ピーに話を聴いてもらってから少し気が楽になったけど、まだあまりやる気が出ないんだよね。寒いからかなぁ。ネコは寒さに弱いからね」
P「うん、まぁ気持ちが沈んでるときって、先のことは考えられないものだって、誰か人間のお医者さんが言ってたよ。夢も希望もなくなっちゃったら、それこそ死にたくなっちゃうんだろうね」
M「あぁ、そうだよね。ボクだって振られちゃった時はちょっとそんな気分になったもんな。誰にも言えなくて突っ張ってたから辛かったな。でもさ、たまたま人間にもらったミルクがおいしくてさぁ。またそれ飲みたいっ!て思ったらちょっと元気出たかな。それと、ピーと一緒にいるうちに、また誰かを好きになってもいいかなって、ちょっとは思えるようになってきたんだよね」
P「そいつはいいや。また希望を持てるようになったんだね」
M「何でかな。次に進むのはまだ怖いけど、この前のことは諦めがついたのかな」
P「夢ってさ。誰かのせいで潰れたと思うと辛いけど、自分で諦めたとか自分で捨てたんだと思えると、ちょっとは気分が違うのかもね」
M「ふうん。夢って何なんだろうね。いっくら夢見ても、夢じゃおなか一杯にならないしなぁ」
P「ミュウの夢はお腹一杯食べることだもんね。そういえば、石田衣良とかっていう人間も作家がね。夢が自分を勇気づけるものでないなら、捨てた方がいいって言ってるんだって。カッコいいこと言うよね」
M「じゃあボクがあの娘のことをちゃんと諦められたのは良かったんだ。そう言えば火事の夢も似てるね。燃えてなくなっちゃうけど、また新しく作ればいいやって思えばいいんだもんね。あぁ、だからいい夢なのかな?でもさ、ピーは笑ったけど、お腹いっぱいミルク飲む夢は捨てたくないなぁ。だってそのことを考えてる時はちょっぴり幸せな気分になれるし、頑張ってまたエサを獲りに行こうって思えるもの。でもまだ次の恋は怖いかな。お腹いっぱいミルクを飲んで、元気になったら考えるよ」
P「そっか。笑ってごめんね。夢は大きければいいってもんじゃないんだね。身近な達成したい目標でも、叶わないかもしれない遠い憧れでも、みんな同じなんだ。どれがいいとか悪いとかじゃなくて、それがボクらを支えてくれるかどうかが大事なんだね。今日はミュウに教えられたよ」
M「ん?ボク今なんかいいこと言ったの?エヘヘ、ピーに褒められると照れちゃうなぁ。まぁ今年もよろしくね」
(ポートヘボン「お知らせ」(11月)より転載)


友達について・自分について

Q. 大学に来てから、なかなか仲のいい友人ができません。もう少し楽しく過ごせるかと期待していたのですが。自分のこんなところが良くないからか…など、気がつくと一人でうつうつと考えこんでしまっています。(架空相談)
A. 小学校から高校までは、毎日同じ級友と顔を会わせ、クラスや学年単位で集団行動をとることも多いので、それほど努力をしなくても、自然と友達と呼べる人ができてくるのではないかと思います。ところが大学に入ると、授業の取り方も生活スタイルも個人個人で異なりますし、顔見知りもいない状況に一人で飛び込むことになる人も多いため、親しい友達を作るには、自分から主体的に関わりを求めることが必要になってきます。多くの場合はゼミやサークルなどに参加することで、興味や目的を共有したり、議論したり励まし合ったり愚痴をこぼしたりできるような友達ができているのではないでしょうか。
他者との関わりについて考える時、人はどうしても自分自身を振り返るようになります。自分はどういう人間で、何が好きで、何が苦手で、どんな性格か。人間とは不思議なもので、もっとも身近であるはずの自分の顔を、自分の目で直接見ることができません。それは鏡や写真など自分を映しだすものを通してしか確認できないのです。同じように自分はどのような中身を持った人間なのかということも、自分と自分が向き合う誰かとの関わりを通して、初めて感じたり考えたりすることができるのです。大学生になると、“自分とは何か”という大きなテーマが心に浮上することが増えてくると思われます。そのような時、自分と他者との関係が心の中で大きな割合を占めるのは、むしろ当然と言えるかもしれません。
ご質問の、友達がなかなかできないという悩みは、自分探しの第一歩かもしれません。その時、自分の内側だけに向いていた目を相手にも関心を持って向けてみるということが大切になってきます。あの人はどういう人で、自分とはどう似ていてどう違っているのか。実際に話しかけてみると、更にその人の色々な顔が見えてくるかもしれません。少し勇気のいることかもしれませんが、そのようにして自分とは別の存在である“他者”を、少しずつ、できれば温かく、自分の心の中に迎え入れていくことが、友情の始まりなのかもしれません。そのことによって自分の心の器も、少しずつ大きく強くなっていくのかもしれません。
(白金通信2011年3月号「カウンセリング」より転載)

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