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2018年度エッセイ

白金通信「カウンセリング」およびポートヘボンお知らせより

  • 「新生活のなかの出会いと別れ」
  • 「やる気の出るときも、出ないときも」
  • 「幸せ」と「依存症」―スマホ愛・ゲーム愛が強すぎるあなたへ-

  • 「新生活のなかの出会いと別れ」

    Q 新一年生です。3月は入学を楽しみにしていましたが、今、なぜかストレスを感じます。大学生活に特に不満はないのに、高校時代のほうが良かったかなと思うときがあります。(架空相談)

     

    A アメリカの精神医学者のホルムスは、人生上の出来事で何がストレスの原因になるかという研究を行いました。「離婚」や「怪我」、「病気」などの別れやつらい出来事が上位に来ることは簡単に想像できますが、興味深いことに「結婚」や「昇進」などのうれしい出来事も案外ストレスになることがそこには示されています。

    もちろんおめでたいことでも、新たな生活や環境の変化に適応しなければいけないということには変わりはありませんから、様々な負担感が出てくるのも当然でしょう。「入学」という出来事もとても大きな変化です。まずは自分の今の生活に無理はないか、例えばスケジュールを詰め込みすぎではないかと考えてみることは大切です。

    入学にともなう別れ

    「入学」という経験をもう少し考えてみると、そこには「別れ」という要素も含まれていることがわかります。高校時代までの友人関係、そこでの自分のポジション、こまったときに相談していた先生等々との「別れ」が入学という新しい出会いのなかにも含まれています。住み慣れた家や両親と離れて一人暮らしを始めた人には、このことははっきりと意識されるかもしれません。このように大学への入学には、新しい出会いという経験と共に、自分が一体感を持っていた親しい人と離れたり、自分が溶け込んでいた環境や、そこでの自分の役割から離れる体験、失うという体験もともなっています。新たな環境に適応していく過程には、今まで自分が親しく関わっていた環境とお別れをする過程も絡んでいると言えます。

     大切なものの再確認

    このような分離の体験は必ずしもネガティブなものではありません。別れの悲しさやさみしさは、自分にとってどんなに大切なものだったかということの裏返しでもあります。おそらく今回相談を寄せた方の高校時代もとても充実し価値ある時間だったのでしょう。自分がこのような有意義な関係を築けたことをまず肯定的に捉えることが大事だと思います。自分にとって大切なものを再確認しつつ、新しい出会いのなかで、今度は大学時代に何をしたいのか思いをめぐらし、行動につなげることができると理想的でしょう。学生相談センターを利用して今の気持ちやこれからのことを整理してみてもいいと思います。
    (「白金通信」4月号より転載)


「やる気の出るときも、出ないときも」

  
  「やる気」や「前向き」という言葉をよく私たちは使います。勉強でもスポーツでも、成功した人の話を聞くと、「いつも前向きでやる気に満ちていてすごいな!」と感心することがあります。そして「でも私はやる気に満ち溢れているわけじゃない。そんな私はやっぱりダメ。もっと前向きにならないといけないのに」と反省したり落ち込んだりすることもあるでしょう。特に、1年の中でもこの時期、ゴールデンウィーク明けから7月の試験期間までは、祝日休みのない日々が続きます。また梅雨時でもありますから、なんとなくだるいとか、朝なかなか起きられないとか、風邪をひいてしまったなどということもあるかもしれません。  
 そういう時、「やる気」を出せないのは当然のことです。でもここで考えたいのは、勉強や活動など、外的なことをするために活力を出すことだけが大事とは限らない、ということです。外側から今の状態だけを切り取って見れば、ただ休んでいるだけ、無為徒食なだけ、と思われるような状態にある時も、そして自分自身が「今サボってるな」と自覚している時も、長い目で見てみるとそこには大事な意味が隠されていることがあります。
 私たちは、無意識的に自分自身を守る力を持っています。疲れた時に眠くなるのは、体力を回復するために必要な体の作用であることは、みなさんお分かりでしょう。これは「気持ち」についても言えることです。気力がわかないということは、もしかすると、もうこれ以上気力を使ってしまったら、もっと大変なひどい状態になってしまうから、それを防ぐために、無意識的に自分で気力を出さないようにしているのかもしれないのです。  
 このように、私たちのこころは広い視点から全体的にみると、とても複雑で不思議な動きするものだと思われます。その不思議さに気づいていくことも、自分を知るための「学び」の一つかもしれません。自分自身のこころのテーマについて考え、このような「こころの不思議」を実感してみるためにも、学生相談センターを利用されてはいかがでしょうか。
(ポートヘボン「お知らせ」(2018/6月)より転載)



  • 「幸せ」と「依存症」―スマホ愛・ゲーム愛が強すぎるあなたへ―

    ☆彡 こんにちは。いきなりですが、幸せについての質問です。
    Q1 「〇〇っていいな。幸せな気分になる。〇〇のない生活はありえない。」 〇〇に何を入れたら、自分にぴったりきますか?A群の中にはありますか?
    A群 ①おいしい食べ物 ②すてきな音楽 ③美しい顔 ④良い評判を得ること  ⑤ユーモア(笑い)⑥お金

    「何この選択肢?どういう基準?」と思ったあなた、いいカンしていますね。 この選択肢には共通点があるのです。
    どれも多くの人が「あー幸せっ!」と快楽や喜びを感じるもの、いわゆる脳の「報酬系」を活性化するものなのです(脳内では快楽物質のドーパミンがどんどん出ているわけです)。おいしい食べ物、すてきな音楽、・・たしかに幸せ気分になりますよね(嫌いな方もいらっしゃると思いますけど)。 ちなみに恋に落ちた時も、「報酬系」が活性化されるのだとか。好きな人の姿を見たり、声を聴いたりすると、脳内でドーパミンが出て、トキメキを感じるのだそうです。 他に脳の「報酬系」を活性化するものとして、「寄付などの利他行為」「(子を持つ母親の)子供の笑顔」「ねたましい相手がひどい目にあったとき」・・なーんていうものも挙げられています(参考文献参照)。

    ☆彡 さて次の質問はいかがでしょう? ▽▽にあてはまるものはありますか?
    Q2 「▽▽のない生活はありえない。ないとイライラそわそわする。
    食事や睡眠、学校生活より優先してしまう。 気づくとやっている。やめようと思えばやめられる・・とも思うけれど、もしかしたらやめられないかも?」
    ▽▽に「スマホ(ネット)」や「ゲーム」がはいる方はいませんか? A群も「スマホ」「ゲーム」も、脳の「報酬系」が活性化されるものです。 でも、「食事や睡眠より優先してしまう」「学校生活よりも優先してしまう」「時間と場所のコントロールができない」「悪影響があるのに、やめられない」状態は、幸せを通りこして、脳の「報酬系」が暴走している状態です。 主役は人間のはずなのに、スマホやゲームが「ご主人さま」になっている・・・・・・、 こうなると「依存症(嗜癖行動)」です。

    不安になった方に、とりあえずの対策をご紹介しますね。
    ★自分に問います「あれ?何のため/誰のために(ゲーム、スマホを)やっているんだっけ?」と。不必要な作業はやめるように、自分にブレーキをかける練習をします。
    ★「なぜ依存するのかな?」と考えてみます。「ついついしちゃう」心性の裏に “逃げたい何か(ストレス)”はないでしょうか?課題、試験、バイト、「対人関係がつらい」「大学生活がいやだ」「けっこう孤独・・」などの苦しさはないでしょうか?
    ★ストレスに気づくこと、ストレス軽減を図ること、ストレス対策は役立ちます。
    ★すぐできる対処としては、「開くのがメンドウなパスワードに変える」手もあります。
    ★使わない時間帯を決め、ゲームやスマホを手の届かないところ(高い所やかばんの奥底など)にしまう、のもあり。
    ★「依存になりそうなので少し距離をとるねー」とSNS仲間に伝え、すぐに返信しないようにする、・・のも有効です。
    スマホ、ゲーム、アルコール、タバコ、買い物、ギャンブル、時には盗癖、そして薬物・・・どれもある域を超えると、脳が変化を起こして「依存症の脳」になってしまい、どんなにがんばっても自分でコントロールできない状態になってしまうのです。そして、ひどくなると日常生活が壊れはじめます。精神的健康・身体的健康を失い、人間関係が壊れていってしまいます。 ・・・怖いですよね。
    そうなる前に、学生相談センターにご相談くださいね。ストレスと上手につきあって、快適なスマホ・ゲームライフ、そしてよりよい学生生活を送られることを願っています。
    何かありましたら、どうぞ遠慮なく学生相談センターに声をかけてくださいね。   参考:「図解でわかる依存症のカラクリ」磯村著 2011秀和システム
    (ポートヘボン「お知らせ」(2018/11月)より転載)