スマートフォン版を表示

2020年度エッセイ

白金通信「カウンセリング」およびポートヘボンお知らせより

  • 「緊急事態宣言の中で心配事を抱える皆さまへ」
  • 「STAY HOME週間に、そして特別なGWに向けて」
  • 「新型コロナウィルスの心理面への影響」

  • 「緊急事態宣言の中で心配事を抱える皆さまへ」

     せっかくの新学年でのスタートの時期ですが、外出自粛要請により例年とはおよそ異なった新学期になっていますね。  
    それでも大学は先日の学長の呼びかけから始まり、オンライン授業を開始したところです。慣れない環境で私たち皆が、ストレスに曝されています。  他人との距離を保つことも含めて、人として自然なことができない状態が長引いていますので、気持ちの面でも身体の面でも窮屈さを強いられているのではないでしょうか。  
    そんな時私たちは、いろいろな感情が大きく動きやすくなります。  
    無性にイライラしたり、涙もろくなったり、心配で落ち着かなくなったり。または逆に普段よりも気持ちが動きにくくなることもあるかもしれません。 でもそれらは、私たちの心がこのストレスを心の中に柔らかく軟着陸させるための、自然な働きでもあるのです。  
    現在入構制限中のため学生相談センターでは電話面接のみ行なっております。また開室日程も不規則となっていますが、不調、心配がなかなかおさまらないときなど、必要なときにはお電話でご相談ください。
    (ポートヘボン「お知らせ」(2020/5月)より転載)

     


  • 「STAY HOME週間に、そして特別なGWに向けて」

     *現在入構規制中のため学生相談センターでは電話面接のみ行っています。また開室日程も不規則となっていますが、必要なときにはお電話でご相談ください。  

    今日は、「外出自粛とは言われても外出したくなっちゃう心理」について、ちょっと社会心理学の視点からお伝えしたいと思っています。  
    そう、私たちは誰でも「自分だけなら外出しても大丈夫」、「短時間なら飲み会しても大丈夫」、「GWなんだから思い切り遊んでも大丈夫」「自分だけが我慢しているのは馬鹿を見る」、そんな気持ちに自然になる生き物なのだと、社会心理学はみています。
    ◆共有地の悲劇  
    「共有地の悲劇」という命題を聞いたことがありますか?社会心理学や社会学では社会的ジレンマ(二者間での場合は「囚人のジレンマ」)、経済学部の方は行動経済学やナッシュの均衡理論、ゲーム理論などで触れているかもしれません。  
    「ある村に共有地があり、村人なら誰でも自由に利用できることになっていました。ある人が自分の羊たちを連れて前を通ると、おいしそうな牧草が生えていたので、そこで羊にのんびりと草を食(は)ませました。その羊の群れはその年、充分な栄養を摂り、数も増えました。その話を聞いた他の住民たちも、各々の家畜を連れて共有地を訪れました。そのうちに1頭当たりの牧草は足りなくなり、全体として減収に陥りました。そこで村人はさらに各々の家畜の数を増やし、共有地には家畜が溢れ、村人は共倒れになりました。」 というものです。共有財産問題、またはフリーライダー(ただ乗り)問題というと、わかりやすいでしょうか。このような問題を心理学では「社会的ジレンマ」という観点から説明しています。  
    「社会的ジレンマ」の状況をまとめると、次のようになります。
    ◆社会的ジレンマ
     1. 個人は「協力」「非協力」のどちらかを選択できる。
     2. 個人にとって「協力」よりも「非協力」を選択した方が望ましい結果を得られる。
     3. 全員が「非協力」を選択した場合の結果は、全員が「協力」を選択した場合よりも悪くなる。  
    いかがでしょうか。この3条件は、今の自粛による対人接触規制の状況と似ていませんか? そう、人は誰でもこのような状況に置かれると、個人の利益を求めたい気持ちに傾くものなのです。社会全体の利益、または長期的見通しが意識から抜けてしまうと、特にそのような行動選択に走りやすいようにできているもののようですね。  
    「協調-協調」関係が、社会全体の利益を高める可能性  
    では、どのように考えたら私たちはこのフリーライダーになりたい誘惑から逃れることができるのでしょうか。 学問的にはいくつかの選択肢があります。まず一つは「監視と罰を強める事」です。他人が見ていないと抜け駆けをしたくなる、ということですね。いくつかの国ではこのような対応を取ってきていますが、日本にはこれは馴染みません。  
    私たち日本人が日本人らしさを生かして社会的ジレンマに対応するためにはどんな方法があるでしょうか。 これを私たちも探っていかなければならない時期に差しかかっています。そこで一つヒントになるのが、「囚人のジレンマ」への解決策の一つである「応報戦略」の、「社会的ジレンマ」への応用です。「他人もきっと自分と同じように社会的に振る舞うだろうという暗黙の期待」を信じて、自分も社会的に期待される行動=「協調」を選択することです。安心感や相互の信頼感に基づく、人と人の「協調」関係。フリーライダーになるのではなく、皆が「協調」を基調とする行動を選択すると、社会全体の利益が最も高くなるというのが、学問的な答えです。今の状況に置き換えるなら、これからのGWに私たちが「STAY HOME」を遵守することなります。  
    その答えが5月中旬にどう反映されるか、結果を皆で祈りながらそっと待ちたいですね。
    (ポートヘボン「お知らせ」(2020/5月)より転載)

     


  • 「新型コロナウィルスの心理面への影響」


    ★現在、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、学生のみなさんの入構が禁止されています。
     そのため学生相談センターでは電話面接のみ行っています。(白金センター:03-5421-5241、横浜センター:045-863-2061)
     開室時間は両センターともに6月15日(月)~19日(金)は11時~16時となります。

     緊急事態宣言は解除となりましたが、大学への入構禁止はいまだ続いています。オンライン授業も春学期いっぱいは続くことになりました。学生のみなさんは、これまでに経験したことのないような日々を過ごされていると思います。

     私たちの生活は、常に様々なバランスの上に成り立っています。ですが、あまりにバランスが良すぎて平穏な状態が続くと、私たちは刺激が欲しくなり、時に羽目を外したりバカなことをやってみたくなったりします。そしてその刺激から元気をもらって、次の一歩が踏み出せたりします。ですから波風や苦労というものは、私たちのこころに栄養を与えて、多少の風が吹いたぐらいでは折れないように、強く鍛え、育ててくれるものでもあります。

     しかし今は、世界中のあらゆる方面でバランスがとても大きくくずれてしまっていますね。このような時というのは、思いがけず極端な気持ちが湧いてくることがあります。病気になることや大切な人を失うことへの恐怖、病気と疑われて孤立したらどうしようという不安、ずっと一人でいなければならない孤独感、何もできないという無力感などが襲ってくることもあるでしょう。またついさっきまでは元気だったのに、急に気持ちが不安定になってしまう、というようなことも起こるかもしれません。またそれに伴って身体の不調を感じることもあるかもしれません。

     今、私たちのこころは、とても大きな嵐に遭遇しているような状態かもしれません。嵐は徐々におさまりつつあるようで、またそう願いたいものですが、それでも、思いがけない所や、思いもよらない時に、ひょっこりと影響が出てしまうこともあるかもしれません。自分は無事であったにもかかわらず、そのことを申し訳なく感じてしまうこともあれば、家にこもっていることで、それまで経験していた日常の大変さからちょっと遠ざかることができてホッとしている、ということもあるかもしれません。ですが、このようなこころの状態になることは、このような大嵐の中にあっては当然のことなのです。

     私たちが何をどのように感じたり考えたりするか、ということに正解も不正解もありません。何かを感じたり考えたりすることが、安心に繋がることもあれば、不安に繋がってしまうこともあるでしょう。これらは自然に生じてくるものなのです。ですから、自分にとってこれはちょっときついな、と感じてしまうような場合は、どうか自分をいたわり、無理をせず、焦らず、自分を責めすぎず、また周りの人に対する気持ちも少しゆるめて、ひと息ついて、少しずつバランスが戻るようにこころがけてみてください。
    (ポートヘボン「お知らせ」(2020/6月)より転載)