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2022年度エッセイ


「新学期を迎えて~新しい環境で不安になったら…」

 今年も新年度が始まりましたね。この時期は変化の季節、特に新入生の方々は進学して見知らぬ環境での学校生活や人間関係であたふたすることも多いでしょう。ましてや実家が遠方で初めての一人暮らしとなった方々は、生活全体が未知の世界となり、びっくりしたり狼狽えたりすることも多いのではないかと思います。例えば地方から出てきたりすると、電車に乗ろうと思っても路線が複雑すぎて乗り方すら分からない、なんて声もよく耳にします。そんな状況の中でまだ友達どころか知り合いも近くにいなかったりすると、疑問を誰かに聞くことができず不安になったり、自分は一人ぼっちのような孤独な気持ちになって前の環境が恋しくなったりするのもままあることではないでしょうか。
 そもそも人は、予測したり理解したりするのが難しい未知のことに対して否定的感情や不安な気持ちを抱きやすい生き物です。例えば、ここ近年で急速に普及したオンライン上でのやりとり、学生の皆さんだとオンライン授業や就職活動などにはすぐ馴染めない方も中にはいらっしゃるかもしれません。だから、誰しも大なり小なり新しい環境に不安が膨らむことは自然なことでもあります。
 そんな新しい環境への不安には、やはりその環境に慣れることが一番の対応策です。そして慣れるにあたっては、その環境での人間関係を形成することがとても大事な要件になってきます。人が親密になりやすい条件の一例として、接触する機会が多いことや共通点が多いことが挙げられます。今はオンライン授業も多く、なかなか出会いを増やすのが難しいかもしれませんが、サークルや部活動に所属して関わる機会を増やしたり、同じ学科や大学の人との接点が作れるような授業やイベントに参加することで、この二つの要件は満たしやすくなるかと思います。最初は恥ずかしさや気後れがありますが、急がず焦らず参加し続けることで少しずつ親しくなっていくこともできるかと思います。
 ただし、頑張っていつもと違うテンションで接することで、疲れが溜まり五月病になることもありますので、無理をし過ぎるのは禁物です。そして、もし人間関係に一歩踏み込めなかったり頑張るのに疲れたなという場合には、大学構内や通学途中の駅や通り道などで素敵なカフェや落ち着く公園・散歩道などお気に入りの場所を作ってみるのも居場所作りに効果的です。
 それでもやはり不安ばかりで落ち着かないといった時には、その気持ちを誰かに話してみることも選択肢に加えてください。自分の気持ちを話すことで何に不安になっているか整理できたり、実は自分の思い込みだったことに気づけるかもしれません。例えば、一見すると周りは自分より馴染んでいるように見えがちですが、実は自分と同じように馴染めなくて不安に思っている人もいることに気づけるだけで、心が少し楽になったり、それが親しくなるきっかけになることもあります。
 そしてその「誰か」は、こちらの学生相談センターでもいいですし、古くからの友達や家族、新しい環境で知り合った友達や仲間でもかまいません。自分の心の内を話すことで更に関係が深まり、新しい環境に馴染む良い機会ができるかもしれませんよ。
(ポートヘボン「お知らせ」(2022/4月)より転載)

 


  • 「大学生になったら」

     早いもので、季節はもう6月になりました。忙しい毎日の中、天候や気温もめまぐるしく変わるので、体調も崩しやすい日が続いています。皆さんも心身の調子は大丈夫でしょうか。
     コロナが始まって3年目の春学期ですが、ほとんど学部で対面授業が再開されています。皆さんの中には、大学で授業を受けられたり、友達との交流も増えて、通学に楽しみを感じている人もいるでしょう。半面、オンラインでの授業に慣れてしまったので、対面授業への出席や、サークルへの参加が、何だか億劫になってしまったという声も耳にします。コロナによる影響で、当初の予定や希望が叶わなかったり、諸事情で今も制約を背負ってしまった方もいらっしゃると思います。二年生以上の学生さんはもちろんのこと一年生の皆さんも、大学生活に対して思っていたイメージと、実際の状況の違いに戸惑っていらっしゃる方もいるかと思います。学生生活は今もって落ち着かない状況が続いていますね。
     でも、あらためてですが、皆さんは入学前、大学生になることや大学に通うことに対して、どのようなイメージを抱いていたでしょうか?大学生になったら新しいことをしてみたい、今の自分と違う自分を見つけたい、今の自分をもっと成長させたい等、何らかの期待を持たれていたのではないかと思います。あるいは、今は全然前向きになれないけれど、気持ちが回復するために何かきっかけを見つけたいと思っている人もいるでしょう。
     今月は、もう一度その思いを見つめてみませんか。夏休みまでの約2ケ間、自分がやってみたかったことを思い出し考え出して、実践してみませんか。例えば、音楽や運動やボランティアなどのサークルに思い切って連絡をとってみるとか、アルバイトを探したり履歴書を送ってみるとか、運転免許や語学や簿記・料理等の諸資格を探して申し込む等、バーチャルな世界ではないリアルな体験をチャレンジしてみませんか。勿論人の迷惑になることや犯罪になることはダメですし、自分で責任が取れないような行動はしてはいけません。
     新しいことや、やってみたいことを実践するのは、ドキドキしたり怖かったりします。勇気を出さないと実行できなかったり、うまくいかないこともあるでしょう。私もそのような経験をよくしました。失敗も沢山経験しました。だからこそ思うのは、小さい勇気でいいのです。一気にやろうとしないで「軽い気持ちで」実践できる勇気でいいのです。失敗したら、次をどうしたらいいかを考えて、失敗を最小限に抑える工夫を探せばいいのです。工夫を思いついて試している間に、「あ、これ、いいかもっ」と喜びを感じて、ヒントが見つかることがあります。まずは好きなこと、自分がやってみたいことを書き出してみてください。次にいつどうやって、それを実現できるか計画してみてください。
     実は皆さんの先輩方も同じような思いをしてきました。悩んだり試行錯誤しながら、一つの何かを見つけて取り組んできました。例えば、ある学生さんは教会のオルガン練習を知って、教会に通い続けて演奏会に参加されました。他にもサークルを通じて音楽や楽器演奏が好きになった学生さんもいます。また、ある学生さんは白金通信の学生編集委員を見つけ活動を始め、そこが大学での居場所となったそうです。更に、ある学生さんはアルバイトで、その仕事の面白さを知り、卒業後も同じ方面に進むことを決断しました。先輩たちは、そうして一つのことを続けているうちに、大学時代の「出会えてよかった」経験を増やして卒業していかれました。
     学生時代は無限ではありません。状況がどうあれ「今」という時間は、一瞬後には「過去」になっています。どんな学生生活でもいつか終わる、のも現実です。そう思ったら、学生でいられる時間を有効に過ごしてみたいと思いませんか?。。。でも そうは言っても、通学や大学生活全般に慣れることに併行して、新しいことを実践するのは容易ではないでしょう。大学生活自体をどうしたらいいかわからなくなってしまった方もいるでしょう。そんな皆さんとも、一緒に考えていけたらと思いますので、一度学生相談にご連絡をしてみてください。お待ちしています。
    (ポートヘボン「お知らせ」(2022/5月)より転載)


    「中途半端でいられること」

     春学期も後半戦。梅雨に入り、心身ともに疲れが出てくる頃かもしれません。夏休みはもう少し先ですし、その前に試験もあるから落ち着かない…。今はそんな「中途半端」な時期ですね。「中途半端」というのはほんとうに嫌なもので、早く決着をつけてスッキリしたいと思わずにはいられない、そんな状態だと思います。
     「中途半端」は、何かを成し遂げたいのに、それがなかなか実現しない時にも顔を出します。その時、自分の限界を超えてまで頑張ってしまうと、どこかにしわ寄せとして問題が生じたり、体に不調が出てしまったりすることもあります。この不快を解消しようとしたのに、かえって問題が大きくなってしまうこともあります。ですから、ここはひとつ辛抱して成り行きを見守ろうか… ぐらいの「ゆるさ」があることも大事かもしれません。
     「辛抱」とは、辛いことをがまんするという意味の言葉ですが、よく見てみると、「辛さ」を「抱える」と読めますね。辛さは、ないに越したことはありませんが、どうしてもそれが避けられない状況というのもあるものです。その時に大事になるのは、なんとかその辛さを抱えていられる「こころの腕力」、いや、「こころの持久力」なのではないでしょうか。「考え方をゆるめる」というのも一つのやり方かもしれません。「こころの持久力」は一朝一夕に身につくものではないかもしれません。ですがそれは、大人になるにつれて、様々な経験を経て、少しずつ強くなっていくように思います。
     よくよく考えてみると、私たちが生きている時間というのは、常にどこか「中途半端」で、何かを「待っている」ような感覚を抱かせるものなのではないでしょうか。でもだからといって、たとえば推理小説を読む時は、いくら早く犯人を知りたいからと言って、結末を先に読んでしまっては読書の醍醐味は失われてしまいます。「幸せになりますように」と願をかけたり、「今度こそ頑張るぞ」と気合を入れたりできるのも、今が「中途半端」な待ちの状態であるからこそ、とも考えられるのではないでしょうか。
     「ちょっと疲れたらひと休み」ぐらいの感覚をもって、「中途半端」でいてみるのも、なかなか悪くないのではないでしょうか。
    (ポートヘボン「お知らせ」(2022/6月)より転載)

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