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コラム「キャンパスCLINIC」

麻疹顛末記

白金通信2007年10月号

 八王子の大学が麻疹の流行のため4月18日~5月6日の全学休校措置を取ったのが、関東一円での麻疹の流行を予感させる第一報であった。その後、5月になると流行拡大の兆しが見え、本学でも5月15日には学生・院生を対象にポートへボンと大学ホームページ上に、麻疹流行の現況を知らせる通知をした。翌日には専任教職員に対してグループウェアおよび掲示を通して同様の周知をした。また、具体的な感染拡大予防処置として、5月22日には“体温37.5度以上の有熱者は健康支援センターに報告”するように、呼びかけを始めた。これは学生・教職員に、有熱時は速やかに健康支援センターに報告し、登校を控えていただくためである。麻疹を疑わせる場合は速やかに医療機関を受診することを指示し、領収書を持参することで麻疹の診断がなくても学生の不利にならないよう、教務課とも連携した。教育実習、社会福祉学科の実習等では学外に学生を委託するので、大学の責務として実習予定者に対し抗体価検査を実施した。合わせて専任教職員にも抗体価検査を実施した。5月下旬から6月になると、一気に都内有名大学をはじめ関東一円で全学休校措置を取る大学が相次いだのは、報道の通りである。

 この背景には、1988年に始まった麻疹・流行性耳下腺炎・風疹混合ワクチン(新三種混合ワクチン)の接種中止がある。無菌性髄膜炎の発症が「予想外に高い」ため1993年に中止されたのである。1993年以降のワクチン未接種の児童が大学入学年齢を向かえ、麻疹に罹患して感染源になった場合が考えられている。また、一回接種していても、従来であれば感染者に接触して起こるbooster(免疫増強)効果が麻疹の流行回数が減ったことで抗体価が低いまま罹患して感染源になった可能性である。今年、指摘されているのはこのような一回接種者が感染した場合の「修飾麻疹」の存在である。一定程度の免疫は存在するので、軽症化して麻疹と診断されず、普段通りの活発な学生生活を送ることで感染を拡大させた可能性である。

  今年は7月4日をもって「麻疹の現況と有熱者報告の解除について」を発表し、本大学は在学生の皆さん、ならびに学内関係部署の協力・連携で休校措置を取らずに何とか終息を迎えられた。しかし、未接種群が大学入学の適齢年齢になるのが今後数年は続くと予想され、今年の教訓を生かして来年も万全の体制で臨みたいと思っている。


健康支援センター長 村上雅昭

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