白金通信2015年3月
ウィメンズヘルス相談では、生理痛で悩んでいる方が非常に多くみられます。治療が必要な生理痛を、婦人科的には月経困難症と呼びます。月経困難症には子宮内膜症、子宮筋腫、子宮奇形など器質的疾患を伴う器質性月経困難症と器質的疾患を伴わない機能性月経困難症があります。
痛み止めは早めに
機能性月経困難症は、子宮内膜で作られるプロスタグランディン(PG)が原因と言われています。PGは、子宮や全身の筋肉を収縮させ、頭痛や吐き気、下腹部痛、腰痛などを起こします。一般的にはまず、PG合成阻害作用のある鎮痛剤(ロキソニンなど)で経過観察します。ここで大事なのは鎮痛剤の飲み方です。なるべく薬は飲みたくないからと、痛みを我慢してから飲んでいる方が多いですが、これは逆効果です。痛みを認識する脳は「痛い」と感じることで、より痛みに敏感になり、次第により少ない痛みでも「痛い」と感じてしまうようになります。また、PGは月経前から産生しているので、月経開始一日前位から内服開始するのが良いでしょう。数か月しっかり鎮痛剤で痛みをコントロールし、その後少しずつ薬の量を減らしてみると、以前より痛みを感じなくなっていたり、薬の量を減らせるようになります。
ピルや漢方も有効
ピルは二種類の女性ホルモンが入った避妊効果のある薬です。排卵と子宮内膜の増殖が抑えられますので、PGの生成が減り、生理痛が軽減します。ピルは毎日の服用が必要な薬で、血栓症をおこし易くなる副作用もありますが、婦人科医の指導の下、安全に服用すれば月経困難症や月経前症候群(PMS)には大変有効です。骨盤内の血流を増やし、子宮の収縮を抑制する漢方療法も有効です。また、緊張やストレス、冷えなども血流を減らし子宮収縮させる原因になりますので、日頃から適度な運動で血流を増やす、リラックスする、腹部を冷やさない、しっかり食事をとり体の中から暖める、など基本的な生活習慣も非常に重要です。生理痛は必ずよくなるものです。更年期までずっと痛みを我慢しなければと憂鬱になる必要はありません。年々ひどくなる生理痛や痛み止めが全く効かない生理痛は、器質的疾患が隠れていることもありますので、心配な方は是非婦人科を受診しましょう。
ウィメンズヘルス担当校医 大鹿真美子