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コラム「キャンパスCLINIC」

異常値?

白金通信2015年7月号

健診の結果などをもらった時に正常範囲だと安心するが少しでも正常範囲を逸脱するとあたふたする方は多い。正常範囲を少しでも超えるとすぐに何か問題があるのか。

 正常と異常の定義
 
その前に「正常値」とはなんだろう。
  正常値の決め方は病気の人や体調不良の人などを含めない「健常な人」を沢山連れてきてその検査をする。その検査値をずらっと並べて標準曲線をかかせる。平均値や分散を求め、多くが95%の中に入るものを正常扱いする。その中に入らない場合を正常でない、その境になる値を閾値という。さて、この正常範囲を逸脱した上下2.5%ずつの人は異常なのだろうか?
  皆さんは異常でしょ?というかもしれないが、最初の大前提がある。「健常な人」を検査した、という点である。つまりこの異常を示した人も正常な人なのだ。
  ここに落とし穴がある。検査値の異常値を示しても、この一つの検査だけでは正常とも異常とも言えないのだ。反対からいうとどんな検査をしても正常の人を異常だと言っている確率が5%ある、ということになる。異常の人なのか、正常なのに検査で異常になっただけの偽の異常者なのかは、この検査単体ではわからない。しかも検査をすればするだけ偽の異常者は確実に増えていく。
  本当はその人の過去のデータや家族歴、食生活、運動などを総合的に判断して真の異常かどうかを決めざるを得ない。ここに医師の判断が必要になる。

心配なときは医者に相談
 
病院に行くとときどき「血液検査をした結果、正常値を示したから問題ない」という医者がいる。その結果からだけで正常と決めることができるなら医者は必要ない。検査技師だけが居れば良い。検査結果について、医者の総合的判断を求められるから医者が必要なのだ。
  一つ一つの検査結果がどの程度、正常値を離れた異常なのかは経験のある人にしかわからない。それが医者のはずである。あまり一つ一つのデータの異常に心を悩ませてすぐさまサプリを買ったりするのではなく、悩めば医者に相談する。それで良いと思う。

 

校医 朝比奈崇介

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