白金通信12月号
麻疹と風疹は大人の病気
麻疹は “はしか”、風疹は“3日ばしか”と云われる病気で、どちらも高熱と全身皮膚に赤い斑点がでてくるウイルスによる伝染性疾患です。少し前なら子供たちがかかる病気でしたが、今は20-50才の大人のかかる病気に様変わりしました。今の子供たちは、小学校入学前に麻疹・風疹ワクチン2回接種が義務づけられ、子供は罹らない病気になったのです。また50歳以上の世代は、子供の頃に毎年のように流行したので、どこかで罹って免疫を持っています。 一方20-50才世代は、感染したこともなく、任意だったワクチンを2回受けていない人が多く、二つの病気の残されたターゲットになっているのです。
風疹と麻疹の怖さ
マスコミの報道のように今年は風疹が流行しているので、私も33才の男性患者を診ました。数日前から関節が痛み、急に高熱と小さな赤い斑点が全身にでて私の病院にかかりました。目は充血してとてもつらそうでしたが、その皮疹と頸のリンパ節が腫れから、風疹と診断して保健所に届出をだしました。診断しても、自然に治るのを待つしかありません。しかし風疹が本当に怖いのは、免疫のない女性が妊娠初期に罹ったときです。胎児も感染して、先天性風疹症候群(心臓病・白内障・難聴)という重篤な障害を持って生まれてくるからです。2013年頃の風疹の大流行では、45人の先天性風疹症候群が生まれ11名の子供が亡くなったそうです。
麻疹は、風疹よりずっと感染力も強く、熱が下がるまでの期間も長い大変な病気です。罹ると1000人に1人ぐらいは死亡する病気で、日本でも2000年頃には毎年20-30人が亡くなっていました。更に罹ってから平均7年も経ってから、亜急性硬化性全脳炎という重篤な合併症になる人もいます。2015年にWHOは、日本に土着していた麻疹ウイルスは完全に排除されたと認定しましたが、今でも成人患者の発生が続いています。これはアジアの国々にでかけた未感染旅行客が、現地で罹って日本に持ち帰るからです。
特効薬のない麻疹・風疹に対して、唯一有効な手段はワクチンの2回接種です。自分の母子手帳を確認して2回接種されていなければ、今からでも遅くないので麻疹・風疹ワクチンを受けましょう。明治学院健康支援センター 尾形英雄