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コラム「キャンパスCLINIC」

『多様性』ってなんだろう

白金通信2021年春号

《食文化もさまざま》

 この一年は新型コロナウイルス感染に関することで、随分と生活スタイルに変化がおきました。必然的に自宅で過ごす時間も増え、学生食堂でランチをとることも減ったことでしょう。
 さて、そばやうどんをズルズルっと豪快な音を立ててそばをすする姿は、日本人にとって珍しい光景ではないと思います。TVの食レポでもむしろそのような音を躊躇なく出しているシーンも見かけます。ところが、イタリア料理店でスパゲティを同じような食べ方をしていると、違和感どころか時には不快感さえ覚える人も多いのではないでしょうか。日本人同士でもこのようなことが起きるのですから、もしイタリア本国でそんな食べ方をしたら、なおさら複雑な感情が錯綜することでしょう。

 

《ダイバーシティ、多様性…》

 最近ではダイバーシティという用語も日常的に使われるようになってきました。一般的に「多様性の受容」と言い換えて解釈されていると思います。国籍、文化、人種、性別、年齢、能力など様々な要素に対して、そのダイバーシティの概念を適用していこうという風潮が広まっていると思います。
 さて、スパゲティを食べる音が不快であっても、「多様性」として我慢をして事態を受容しなければならないのでしょうか。また音を立てている側も「ここは日本、イタリアじゃないのだから、日本人がスパゲティをすすって何が悪いんだ」と開き直ることも「多様性」なのでしょうか。
 気をつけておきたい点として、多様性はわがままや自分勝手とは違う、ということ。「違い」を理解し、認め、配慮することによって、出来ることが増え、結果としてお互いにとっての何らかの貢献や良いことが生じ得る、そんな形を目指すことが適正な解釈なのだと思います。

 

《産業領域での実例》

 多様性の概念は、企業などにも広まってきています。その動きのひとつとして、経済産業省は、ダイバーシティ推進を経営成果に結びつけている企業の先進的な取組を広く紹介しています。取り組む企業のすそ野拡大を目指し、「新・ダイバーシティ経営企業100選」として、経済産業大臣表彰も実施しています。
 2019年度に表彰を受けたコカ・コーラボトラーズジャパン株式会社の例をご紹介します。これまでの人事制度は年功的な色合いも強かったことから、優秀な人材を早く一人前に成長させるために、成長のペースに合わせて昇進昇格が可能となる考え方を導入しました。とりわけ、候補者を募る段階でバイアスがかかり、優秀な人材を見逃すことのないように取組を進めるなど、優秀な人材を確実に確保していく上で、公平性を保つ工夫をしているようです。
 また、属人化されていた顧客情報や営業活動の進捗が容易に共有できるようシステム化し、直行直帰や家族の急病など緊急事情への対応も可能となり、より効果的な営業活動の実施につながる成果もでていると報告されています。

 

《適正な多様性の理解に向けて》

 産業領域に限らず、実は身近な道路も多様性にあふれています。道路にも、追い越し車線、走行車線、登坂車線とあり、走っている車のスピードもそれぞれ違います。そして同じ車線を走る車でも、排気量も荷物の重さも目的地も様々です。その中で感情的に前車をあおったりせず、どうすればお互いが気持ちよく目的地に向かえるのか。それぞれがそんな考えと行動を目指せることもダイバーシティではないでしょうか。
 相手が他文化の国の人であれ、日本人同士であれ、自分のことを他者に知ってもらうためには、まずは他者を理解しようという心がけがとても大事なのだと思います。大学には、それまでの学生生活以上に、自分とちょっと違う人たちと出会うことでしょう。多様性を楽しむくらいの気持ちで、最後の学生生活を送れるといいですね。

高野 知樹先生(校医)