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コラム「キャンパスCLINIC」

変化にうまく付き合い、 時間を使いこなそう

白金通信2022年春号

 新入生のみなさん、入学おめでとうございます。2年以上にわたるコロナ禍を乗り越えて入学してこられたあなたたちを心から歓迎します。大学生になると、これまでとは教育環境も生活環境も大きく変わります。教育環境でいえば、高校までは「学習」と「勉強」、すなわち「学んで習い」、「勉めて強いる」形で教育を受けます。そして大学に進むと「学問」のステージに移ります。「学」はもちろん「学ぶ」で教えてもらうことですが、「問」は「疑う」という意味があります。「疑う」とは「今まで学んできたものは本当に正しいのか?」「今まで知られていないものがあるのではないか?」と考えて研究したり証明したりするのです。このように積極的に新たな学びができることが大学の醍醐味のひとつでしょう。

「時間」の質が変わる
 生活環境でいえば、大学生になると受験期に比べて日常生活で自由に使える時間が増えますが、近年ではひとつひとつの活動にかける時間の使い方に大きな変化が起こっていると実感します。たとえば映画というものは本来、映画館に足を運んで大画面で鑑賞する、行き来に使う時間も含めてゆったりした娯楽でした。ですが近年ではサブスク(定額制)の動画配信サービスで映画史に残る大作や隠れた名作が見放題であり、どれから見ようか選ぶのに困るほどです。だけど映画は見たいがゲームもしたい、SNSもチェックしておかないといけない、もちろん勉強する時間も確保したい、そういえばバイトもあるしサークルもある…。そうなると映画にかける時間はそうも長く取れないから、1.5倍再生で見たり、極端な場合はネットなどのあらすじや評価によって見るか見ないをか判断したりするなど、どんどん時間を節約する方向に進んでいます。誰にも1日は24時間が等しく与えられており、その限られた時間をどう使うかがその人の生活スタイルになります。やりたいことはたくさんあると思いますが、時にはやることを絞って、ゆっくりした時間の使い方をしてみましょう。もちろん昼夜逆転や朝食抜きなどで生活リズムを乱すことのないようにしてください。

「ヤングケアラー」もいる
 一方で、いろいろな自分のための活動に時間をかけたくてもプライベートな理由でそれができない人もいます。それは決して自分自身の健康問題によるものとは限らず、ほかにもいわゆる「ヤングケアラー」である場合もあるでしょう。ヤングケアラーとは「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているような子ども」(厚生労働省ホームページより)のことをいい、高校生以下の生徒でこれにあたる人に該当しますが、大学に進学してからも病気や障がいを抱える家族の介護・介助や、小さいきょうだいの世話などに時間と労力を取られている人もいます。しかも、そういった人たちはプライベートのことであるからこそなかなか他人に相談できず、ため込んでしまいがちです。

悩んだときには…
 もしみなさんが現在こういった問題を抱えていないとしても、このような若者が少なからずいることを知っておいていただきたいと思います。そして、ヤングケアラーに限らず日常生活や学生生活での悩みや困りごとがあれば、学内にもさまざまな窓口がありますので、利用してみてください。相談すること、話を聞いてもらうことに使う「時間」も大事にしてください。ひとつひとつの課題を自分の力、そして周囲で助けてくれる人たちの力も上手に借りながら、有意義な学生生活を送っていただけるよう応援しています。



吉村 靖司先生 (神田東クリニック院長・ 明治学院大学 心理相談担当校医)

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