スマートフォン版を表示

特集:今、たしかめたい「平和」

今、平和の尊さを考える機会が増えました。しかし、そもそも「平和」とは何でしょうか。「平和」を知り、学ぶことは、日常を再認識し、より良い学生生活を過ごすことにもつながるかもしれません。

そもそも「平和」って、何だろう?

国際平和研究所所長
阿部 浩己(国際学科教授)

平和と暴力は、対の概念

「平和」を正しく知るためには、まずは対の概念となる「暴力」のことを知る必要があります。

暴力には三つの類型があります。一つ目は、相手の身体や健康を傷つける「直接的暴力」。子どもの虐待などが例で、その究極の形態が戦争です。二つ目は「構造的暴力」。社会に埋め込まれた暴力とも言えるもので、人種差別や性差別、貧困などが挙げられます。そして三つ目は「文化的暴力」。「直接的暴力」や「構造的暴力」を正当化する思想・考え方を指します。

「平和」とは、暴力がない状態を指します。暴力と向き合うことが、平和を考えることにほかならないのです。

では、いつどこで向き合うのか? 学生生活を例に考えていきましょう。

身近にある、「平和」とのつながり

あなたがゼミやサークルの食事会などに参加したとします。その時、先輩や友人から二次会に無理やり誘われて、同意なく身体を触られたり、性的な行為を強いられたら、どうしますか?

この例は、「直接的暴力」だけでなく、性差別という「構造的暴力」、さらに、そのような場面を周囲が許容する「文化的暴力」の両面をあわせ持っています。

「戦争が起きている。自分は何をすべきなのか」 このように考えることはとても大切です。それとともに、日常生活で「お互いが対等な関係で、人権が尊重される状態を作る」ことも平和の大切な要素です。

まずは自分の考えや行動を振り返ることから始めてみる。それが、平和につながる第一歩です。

秋学期から学んでみよう!「平和」に関する授業をピックアップ

「キリスト教」「法律」「科学」。さまざまな角度から「平和」を学んでみませんか?

平和×キリスト教

宗教史4 横浜キャンパス / 月曜4時限(秋学期)
渡辺 祐子(教養教育センター長・教養教育センター教授)
世界宗教でありかつ「宣教的宗教」でもあるキリスト教が、東アジア地域、中でも中国に何をもたらしたのかを中国の近現代史を見つめながら考えます。日本との関係にも注意を向けつつ、キリスト教という特別な角度から中国近現代史を眺めることによって、受講生は現在の隣国の姿をよりよく、より深く理解することができるでしょう。
消費情報環境法学科 4年
劉 世暢
日本の角度から母国を深く知り、理解ができたからこそ、カルチャーショックを乗り越える力になりました。

平和×法律

国際人道法 白金キャンパス / 金曜5時限(秋学期)
東澤 靖(法学部教授)
武力紛争や重大な人権侵害が絶えない国際社会。それを規制するために国際人道法があります。この授業では、国際人道法が今日の世界で果たす役割、そして実際の紛争を分析する視点を学びます。教科書『国際人道法講義』を使用した通常の講義のほか、人道支援活動の実際を学ぶため、日本赤十字社の講師などによる特別講義も予定しています。
グローバル法学科 4年
チン ケーシン
この授業では、国際人道法の発展、戦争手段の規制や武力紛争犠牲者の保護などについて深く学びました。

平和×科学

暴力の論理学 白金キャンパス / 金曜3時限(秋学期)
澤野 雅樹(社会学科教授)
今年度は《国家と科学と大量殺戮》がテーマです。近代物理学の諸成果を概観しつつ、歴史と政治に翻弄された科学者たちが、今度はいかにして別様な政治に巻き込まれ、殺戮に関与していったのかを見てゆきます。学びの意識は文系と理系に分けることがありますが、世界はそんな簡単な分かれ方をしてくれていないということを学ぶのも肝心です。
社会学科 3年
佐藤 一貴
科学は、なぜ大量虐殺に使われたのか。特に原子力や核は福島県出身の私にとって切実な関心事です。

キャンパスに息づく「平和」

日常の景色に溶け込む白金・横浜キャンパスの植物たちも、実は平和と深いつながりが。

アンネのバラ 白金・記念館前 横浜・4号館前 
アンネ・フランクをしのびベルギーで作られたバラ
ベルギーの園芸家が、ナチスの強制収容所で15歳の命を終えたアンネ・フランクをしのんで作ったバラです。2003年、ホロコースト記念館(広島県)から分けていただきました。春と秋が見頃で、咲き始めはオレンジ色、終わりには桃色となる鮮やかな色合いが特徴です。
被爆アオギリ 横浜・8号館前
被曝から奇跡の生還をとげたアオギリの2世
広島の原爆で爆心地から1.3km 付近で被爆しながらも、奇跡的に新芽をつけたアオギリの2世です。2011年、任意団体「Peace☆Ring」の学生たちが、長年原爆の悲惨さを訴えているシンガ ーソングライターの中村里美さんから譲り受けて、植樹が実現しました。

おすすめ