スマートフォン版を表示

2020年度入学式 式辞・祝辞 

※2021年9月17日開催

村田 玲音 Leo Murata
学長(経済学部教授)
学長(経済学部教授)村田 玲音

大変遅くなりました。

2020年度生の皆様、明治学院大学への御入学おめでとうございました。
ご家族の皆様へも心よりお祝いを申し上げます。

本来なら学生の皆さんに直接チャペルでお祝いの言葉を 伝えたかったのですがそれが1年半遅れて今日になってしまいました。 しかもまだ完全な形とは言えない入学式になっています。

この一年半、2020年度生の皆さんは、先が見えない中、とても不安で、期待していたものとは違う学生生活を送ってこられたのではないかと思います。大学の舵を取ってきた私たちには、あの時何かできることがあったのではないか、あの時期にああすればよかったのではないかと、悔やまれることが幾つもあります。特に、2020年度生の皆さんには一番楽しいはずの初年次の春に、キャンパスでの体験を用意できなかったことを、非常に申し訳なく思っています。そして、皆さんが非常に難しい状況を乗り越えて大学生活をスタートし、今に至っている努力と経験に、敬意を表しています。

私たちはこのことを忘れてはいません。これまでに欠けていたことやできなかったことを取り返して、皆さんの大学生活の後半の2年半を本来の楽しいものにできるよう、教員・職員も一緒に努力していきたいと思います。

明治学院大学は、本来の充実した学生生活は、このキャンパスに於いて学生・教員・職員が互いに影響しあうところから始まると考えています。キャンパスに人や物が集まって初めて、大学がスタートするのです。

この大学では、この秋学期から 1/2 定員で教室を使い、対面授業を大きく増やそうとしています。このため、夏休みにワクチンの職域接種を行って、明治学院の集団としての抵抗力を増やそうとしました。そしていよいよ来年春から 1/1 定員、つまり元通りの大学を始めようとしています。ただし、新型コロナ感染症の状況によっては、このように計画通りに進むかどうかは分かりません。そのときは学びを止めないため、オンラインを活用しなくてはなりません。

皆さんには、こうした大学の姿勢を理解して、積極的にキャンパスに足を運び、人や物と触れ合う機会を増やしてほしいと思います。心の触れ合いの回数を増やすことによって、大学生活の充実を実感し、これまでの遅れを少し取り戻すことができるでしょう。

私たちは、2020年4月に式典の形で開催できなかった入学式がずっと気になっており、開催の機会を検討していました。そして、入学した次の年の9月になってしまった入学式への不安もありました。式を開いても果たして、2020年度生はキャンパスに来てくれるだろうか?でも、今日、これだけ多くの皆さんが集まってくれました。そして、配信にも参加してくれています。これは本当に嬉しいことです。

皆さんの側に、キャンパスに行ってこれからの大学生活を豊かなものにしようという気持ちがあれば、残りの学生生活は間違いなく楽しいものになるでしょう。2年半後の卒業式において、皆さんが「明治学院大学で良かった」と思えるように、私たちもそれを全力で応援します。

最後になりますが、健康には十分気をつけてください。

皆さん、明治学院大学への御入学、おめでとうございました。

小暮 修也 Shuya Kogure
学院長

皆さん、明治学院大学へのご入学おめでとうございます。

皆さんは、「ネガティブ・ケイパビリティ(Negative capability)」という言葉を知っていますか? negative という言葉は「否定的な、マイナスの」という意味で、capabilityは「能力、才能」を意味します。したがって直訳すると「否定的な能力、マイナスの才能」となり、何のことか意味がわかりません。もう少し、意訳すると「否定的な状況にも耐える力」、あるいは「どうにも答えの出ない事態に耐える力」であるといいます。

ネガティブ・ケイパビリティという言葉を初めて使ったのは、18世紀後半のイギリスの詩人であり、その後、20世紀に同じイギリス人の精神医学者が用いました。ネガティブ・ケイパビリティは、事実や理由をせっかちに求めず、不確実さの中でも耐える力です。実は、私たちの社会や人生はどうにもならないことや対処のしようのないこと、わからないことばかりです。例えば、何で自分には人よりもこの能力がないのか、病気やケガがなかなか良くならない、あるいは思うような進学や就職ができない、等々、満ち溢れています。この「どうにも答えの出ない事態に耐える力」をつけた人は身近なところで紹介されています。それは聖書の世界に出てくる人です。聖書には、なぜ神は自分にこんな試練を与えるのか、なぜ自分ばかりこんなに苦しみがふりかかるのか、助けてほしい、とうめきながら生きる人たちがたくさん出てきます。

現在の私たちや皆さんの状況も、ネガティブ・ケイパビリティでいう「答えの出ない事態」にさしかかっています。「何でこんな時に大学生にあたってしまったのか」「学生の大切な時間が失われてしまう」と。けれども、この厳しい時に耐える力をつけた人は、これから多くの苦難に出会っても乗り切ってゆけるのです。 また、このコロナ禍の中で、失ったものがたくさんあります。けれども、私たちには与えられているものがまだたくさんある、命や健康、家族、友人、学問や知識、そして自分にとって何が大切な事なのかという生き方を深く掘り下げて考えること、です。「失ったものではなく、得たもの、与えられているものに目を向けて学生生活を送ってほしい」、そのように願っています。

最後に、聖書のローマの信徒への手紙5章3節~4節に「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む」という言葉があります。「ネガティブ・ケイパビリティ(Negative capability)」という答えの出ない事態に耐える力を身につけ、お互いを大切にしてこの時を乗り越えてゆきたいと思うのです。

本日は、おめでとうございます。

おすすめ