スマートフォン版を表示

2022年度新入生向け 式辞・祝辞

村田 玲音 Leo Murata
学長
学長 村田 玲音
新入生の皆様、保証人の皆様、ご入学、おめでとうございます。
明治学院大学を代表して、皆様を心より歓迎いたします。

明治学院大学では入学式や卒業式のような大切な行事はすべて、このチャペルで行うことにしております。今年の春は、チャペルに定員の半分まで新入生に入ってもらって式を行えるまでになりました。一昨年は対面での入学式が開けず、昨年はチャペルでの入学式を遠隔で視聴していただく形でした。一日も早く、このチャペルで何の制限もなく行事を行える日が来ることを願っています。

新入生の皆さんもそうですが、この困難な二年間を潜り抜けてきた私たちは、とても大切なことを身をもって知りました。それは、人と人の交流だとか、大学に通って友人・教職員と勉強やその他の活動を一緒に行う、こういうごく当たり前にできてきたことが、ある日突然、できなくなってしまうことがあるということです。コロナの拡がりで世界中の人々が人間同士の直接的な交流に急ブレーキをかけました。また、突然ロシアに攻め込まれて国が戦場になってしまったウクライナの人々は、日常生活をすべて破壊されています。喪ってみて、私たちは人と人が直接交流する、大学に行って教室で勉強をする、これがいかに『かけがえのない物』だったかを悟っています。

こうした天災・人災の中で生きる私たちには、「できることは今やっておく」という精神がとても大切なのだと思います。皆さんは今日、大学という新しい世界に 入ってきました。きっと「さあ、大学に入った。あれもやりたい、これもやりたい」と、多くの夢やプランを持っていることと思います。そうした夢は大切にして、ぜひ実現することを考えてください。ただ、今の社会情勢下では特に、「チャンスがあったら、できるときにやる」という姿勢が大切なのだと思います。

コロナが三年目に入り、コロナの下での生活が長引くにつれて、『コロナに対する恐怖』や『コロナによる不自由な生活の影響』が人々の心の中にジワジワと拡がってきているように思います。コロナに対して世界中の人々が助け合わなくてはならないこの時期に、ロシアがウクライナに攻め込む事件が起き、ウクライナの人々はもちろん、世界中の人々がコロナへの恐怖に加えて、戦争の不安や命の心配をしなくてはならなくなっています。
こうした意味で、皆さんが大学に入ってきたときの周囲の状況は、決して明るいものではありません。しかし、諺にも「明けない夜はない」とか「降りやまない雨はない」と言われている通り、皆さんが大学生活を送る四年間は、時代が徐々に明るくなって元の社会生活に戻っていく、そうした時期と重なってくるのではないでしょうか。社会全体が長い抑圧から解放感を感じる瞬間に立ち合えるかもしれません。私たちはある意味で、とても貴重で珍しい時代に生きているのです。

まだコロナの脅威が収まったわけではありません。大学生活全体を「コロナに細心の用心を払いながら」進めていかなくてはならないのが現実です。2022年度の春学期は、対面授業と遠隔授業を併用しながら進めていくことになるでしょう。明治学院大学は「この大学の教育の基本は対面授業である」と考えていますので、なるべく対面授業を増やそうと工夫しています。また、大学は授業を教わるだけのところではありません。友人との出会い、教員・職員との出会い、知識や学問との出会い、サークル活動、等々。色々なものとの出会いの場を用意して皆さんを待っているのが大学のキャンパスです。
この大学は都会には珍しいほどの自然環境に恵まれています。これは実際に足を運んでみて、この環境の中で大学生生活を送ってみて初めてその良さや大切さが実感できるのだと思います。

新入生の皆さんはなるべくキャンパスに来てください。そして、「チャンスがあったら、できるときにやる」という精神で新しい大学生生活をこの明治学院大学で始めてみてください。

皆さんのこれからの四年間が、実り多いものであることを願っています。

本日は、ご入学おめでとうございました。

鵜殿 博喜 Hiroyoshi Udono
学院長

みなさん、大学、大学院へのご入学おめでとうございます。また保証人の皆様、ご関係の皆様には心よりお祝い申しあげます。学校法人明治学院を代表して、ひと言お祝いの言葉を述べさせていただきます。

みなさんは数ある大学から明治学院大学を選んでくださいました。
明治学院は1863年のヘボン博士のヘボン塾を起源とし、今年で創立159年目を迎えました。明治学院という名称になる前も後も外国ミッションの多大なる支援と宣教師や教師たちの大変な労力によって、その後は日本人教職員が様々な問題と格闘しながら学院の発展に力を尽くしてまいりました。

明治学院大学の教育理念は“Do for Others”という聖書からとった言葉ですが、他者への貢献という日本語にもなっています。これは滅私奉公とか、世のため人のためという意味とは少し異なります。これは、「自分にして欲しいことは他の人にもしなさい」という文脈の中の言葉なのです。あるいは「自分を愛するように、人を愛しなさい」という同じく聖書の言葉とも結びついています。みなさんにはまず自分を大切にして欲しいと思います。

明治学院では様々な有為の人々を世に送り出してきました。明治学院という名称になってからの1期生に島崎藤村がおります。「桜の実の熟する時」という明治学院時代の自伝的小説は今でも文庫で読むことができ、藤村のほろ苦い青春が描かれています。明治学院大学の記念館は藤村の時代には図書館として使われ、藤村はこの記念館で本を読んでいました。今演奏だけ聞いていただいた明治学院の校歌は藤村が作詞したもので、明治学院という校名もキリスト教も出てきませんが、若者を励ます素晴らしい歌詞です。

また、皆さんは賀川豊彦という名前を聞いたことはないでしょうか。賀川豊彦は明治学院で学んだのち神戸の神学校で学び、貧民街に身を投じて、貧しい人々、弱い人々のために人生を捧げました。また「死線を越えて」という小説を書き、大ベストセラーとなりました。戦後賀川豊彦はその業績が評価されて、ノーベル平和賞に4回、文学賞に2回ノミネートされ、国際的に名前が知られるようになりました。

アジアにはアジアキリスト教大学協会という、アジアの8つの国と地域の62校が加盟している団体があります。The Association of Christian Universities and College in Asiaという名称で、略してACUCAと言っています。日本のキリスト教主義の大学もたくさん加盟しています。10年ほど前に国際キリスト教大学ICUが幹事校になって日本でACUCAの大会が開かれました。そのとき本学は協力校として白金のチャペルで礼拝を行いました。私は礼拝の中で明治学院についての話をし、賀川豊彦についても少しお話ししました。
礼拝が終わったあと1人の参加者が寄ってきて、賀川豊彦は明治学院で学んだのですかと驚いたように尋ねてきました。そのとき思いました。賀川豊彦の名は海外でもまだ知られているのだと。明治学院で学んで社会で活躍している有名無名の人々も直接的、間接的に本学のキリスト教の精神に触れて生きているのだと思います。

本学では毎日昼休みにチャペルアワーがあり、短いながらも礼拝が行われています。せわしい中でほんの15分か20分静かなチャペルで自らを振り返ってみるのも良いのではないでしょうか。以前、本学の卒業生と話をしたら、クリスチャンではないのですが、学生時代の思い出としてチャペルが懐かしいと言っていました。アルフィーは9年ほど前にチャペルで名誉卒業式を行いましたが、アルフィーの歌の中にもチャペルが出てきて、チャペルの懐かしい思い出があるようです。

これからの4年間、大学院生は2年間あるいは5年間、長いようで過ぎてしまえば短い時間ですが、みなさんにとって人生の宝物のような時間であることを願っています。

本日はご入学おめでとうございます。

おすすめ