さて、明治学院大学を代表して、一言、お祝いの言葉を述べさせていただきます。
本学では、建学の精神である「キリスト教による人格教育」と学問の自由を基礎に、学院創設者ヘボン博士が生涯実践した“Do for Others(他者への貢献)”の教育理念に則り、教育を行っております。
現代は、ICTが急速に発展し、世界的に利益や効率が優先され、貧富の差の拡大や紛争の激化、地球温暖化などの諸問題が噴出しております。これらに対処するには、従来の専門の枠を超えた多様かつ柔軟な思考ができ、人を理解し思いやる人材が不可欠といえます。こうした中で、本学が掲げる教育理念はますます輝きを増しています。
皆さんには、本学で、専門・専攻の学問の修得とともに、この「他者への貢献」を可能にする力を身につけ、社会の将来を構想し、輝かしい未来に貢献する人になってもらいたいと思います。
そこで、皆さんの入学に際し、「考えることの大切さ」を説く教えを紹介して、これからの学業および大学生活の指針としていただきたいと思います。その教えは、こうです。
「あなたの考えに気をつけなさい。なぜなら、自分の考えは言葉になるから。」
“Watch your thoughts, for they become words.”
「あなたの言葉に気をつけなさい。なぜなら、自分の言葉は行動になるから。」
“Watch your words, for they become actions.”
「あなたの行動に気をつけなさい。なぜなら、自分の行動は習慣になるから。」
“Watch your actions , for they become habits.”
「あなたの習慣に気をつけなさい。なぜなら、自分の習慣がその人の人格になるから。」
“Watch your habits, for they become your character.”
「そして、あなたの人格に気をつけなさい。自分の人格はその人のさだめ(運命)になるから。」
“And watch your character, for it becomes your destiny.”
この教えは、イギリスの首相で“鉄の女(The Iron Lady)”と呼ばれたマーガレット・サッチャーの父親の言葉とも、またマザー・テレサの言葉ともいわれ、諸説ありますが、わたしは、この教えに非常に共感するところがあります。「考えが人間を創る」というこの教えは、これから大学・大学院で学びはじめる学生にとっての指針であるばかりでなく、まさに世の中で生きていく上でも重要な指針であると思います。
「われわれは、考えたようになる(“What we think, we become.”)」、そして、「そうなれるようにしなければなりません」。それには、真剣に考えることが大切です。
大学の4年間または大学院の2年間は、長いようで短い時間です。この間に将来を見据え、「自分をどう磨き、光らせるか」は、皆さん次第です。その際、「考えが人間を創る」という教えを指針とし、大学生活を有意義に送ってください。
あらゆる可能性が皆さんの前に広がっております。あらためて、ご入学、おめでとう。
明治学院大学へのご入学、大学院へのご進学、おめでとうございます。
また保証人の皆様、ご関係の皆様にも心よりお祝い申し上げます。学校法人明治学院を代表して祝辞を申し上げます。
明治学院の創立者であるヘボン博士は、近代日本になるための生みの苦しみを味わっていた幕末の1859年に横浜にやって来られました。この横浜に開設した英語塾がヘボン塾でした。ヘボン博士は英語を教えるかたわら、医療宣教師としてキリスト教の伝道活動をおこない、また医師として、日本人への無償の医療活動をおこないました。ヘボンが治療した日本人は6千人とも1万人ともいわれています。
ヘボン塾が発展し、他のいくつかの学校が合同して、1887年に明治学院という名称になりました。明治学院大学は、このヘボン博士の精神を受け継ぎ、またヘボンのみならず、明治学院の礎を築くために尽力した何人もの宣教師や日本人の協力者の精神を受け継ぎ、今日まで発展してきました。
みなさんはこれから大学では4年間、大学院では2年ないし3年間学生生活を送られます。明治学院大学で学ぶ日々の中でみなさんはさまざまな出会いを経験されることと思います。
以前、友人が放送大学でサン・テグジュペリの「星の王子さま」についての特別講義があると教えてくれて、さっそくオンラインで受講の申し込みをしました。定員600名のところ593番で、ギリギリで受け付けてもらえました。「星の王子さま」は何度も読んだことがあって、この特別講義はとても興味深いものでした。この講義に刺激を受けて、Amazonで新しい翻訳を4、5冊注文しました。フランス語ができればフランス語で読みたいところですが、私はドイツ語なので、ついでにドイツ語訳も注文しました。これは特別講義で聞いたことですが、「星の王子さま」は300ほどの言語に翻訳されているそうです。世界の国の数は190幾つかですから、とてつもない数の言語に翻訳されています。Amazonで調べたところ、さまざまな方言、つまり地域言語にも翻訳され、極めつきは古代エジプト語つまりヒエログリフにも翻訳されているようです。古代エジプト語の「星の王子さま」を誰が読むのかと思いますが、ヒエログリフの学習者が副読本で読むのかもしれません。宗教や文化の違いを超えて、「星の王子さま」には何か普遍的な価値があるのでしょう。