スマートフォン版を表示

2020年度 卒業式 祝辞


木暮 修也 Shuya Kogure
学院長
副学長(社会学部教授)北川 清一


皆さん、明治学院大学ならびに大学院のご卒業おめでとうございます。
保証人の皆様、ご家族の皆様、ご子弟のご卒業をお祝い申し上げます。
今年の卒業式は、100年に1回と言われるような特別な形となりました。 

現在、NHK大河ドラマ「青天を衝け」は、2024年から使用される新一万円札の人物、渋沢栄一の物語を放映しています。
この渋沢栄一の少年期は徳川幕府の末期、いわゆる幕末という激動の時代でした。この幕末の時代に、明治学院の創立者であるヘボン博士夫妻は長い航海を経てアメリカから日本にやってきました。

1850年代に、ニューヨークで4つの病院を持ち、腕が良く人格者であったヘボン博士は、当時のニューヨークで5本の指に入るほどの資産家でした。
けれども、その資産を全て投げ打って、宣教医師として日本にやってきました。
ニューヨークの人びとは「何て愚かなことをするのか、ここにいれば何不自由なく暮らせるのに」とあざ笑いました。

当時の日本は、キリスト教は禁止されていましたので、教育に力を入れるためにヘボン塾という学問を教える施設を作りました。
これが、現在の明治学院につながります。

そして、次には庶民の言葉を集めて『和英語林集成』という和英・英和辞典を作り、その第三版で使用したヘボン式ローマ字が外交官や商人に使いやすいと広まりました。
現在でもパスポートや地名表示でも使われています。
また、1873(明治6)年にキリスト教が解禁されると、聖書の和訳に力を注ぎ、1887(明治20)年には聖書の全和訳も完成させました。
さらには各地に教会を建てるお手伝いもしました。最近、千葉の九十九里の教会の歴史を知ることがありましたが、ヘボン博士が大きな協力しているのです。

今でいえば超人的な働きをしています。けれどもヘボンさんはキリスト教の道を示せればそれでよい、「道を示して、己を示さず」ということを実践した人でした。

このようなヘボン先生から私たちが学ぶことは謙虚さと共にもう一つあります。

それは、ヘボン先生が激動の時代に、自らの夢や幻に対して「これでよいのでしょうか」とたえず神に祈り、自分の頭でよく考え、心をこめて人々のために尽くしたことです。

今、私たちの社会では、パンデミックという感染症の世界的流行が起きています。
ある人は、今のリーダーは、正解が決まっている問題を早く解くのは得意だけれども、先が見えないことを試行錯誤しながら解決していくのが不得意なので、これが混乱を招いていると言います。

皆さんは、今回のことで明らかになったように、大人たちが経験して知りえた、いわゆる経験知が通用しない世界をこれから生きることになるのです。
そのような中を生きていく皆さんは、時に祈り、そして自分でよく考え、判断し、新しい道を切り開いてほしいと願っています。
旅立っていくお一人、お一人に神様の豊かな導きがありますように。
本日は、おめでとうございます。



村田 玲音 Leo Murata
学長(経済学部教授)
学長(経済学部教授)村田 玲音


卒業生の皆様、ご卒業 おめでとうございます

また、保証人の皆様、お子様のご卒業おめでとうございます。
心より、お祝いを申し上げます。

今年卒業される皆さんは、最後の一年間、コロナで思い通りの大学生活を送れなかったのではないかと思います。
大学が十全の対応をとれなかったことに対して、とても申しわけなく思います。

皆さんは、まだコロナが出てこなかった時代の大学と、コロナで急速に変貌を余儀なくされた時代の大学と、二つを同時に体験するという貴重な経験をしました。
皆さんは、この特異な大学生活、とりわけこの一年間のことを決して忘れることはないでしょう。苦難を潜り抜ければ人間も組織も社会も必ず強くなります。

社会は既に、コロナが収まった後の世界に向かって動き始めています。
今回の感染症は人間社会に予想外の大きな爪痕を残しました。
多くの人が、コロナが収まっても世界はコロナ以前の世界には戻らず、少し違った方向に進んでいくのではないかと考えています。
そして世界を新しい方向に変えていくのは、皆さんをはじめとする若い人の力です。

この一年間、私たちは、大学の機能を幾つかの要素に分け、その一つ一つを別の形で置き換えられないか、そういった努力を重ねてきました。
一部の授業を遠隔授業に置き替えたのもそのひとつです。
大学だけでなく、そうした工夫が世界規模で行われ、実際にやってみると悪いことばかりではないということが分かりました。
今後は、そうしたコロナ時代の経験や発見をどんどん取り入れながら、社会も大学も大きく変わっていくことでしょう。
その際、皆さんが明治学院大学で過ごしたコロナ禍の中の一年間は大きな意味を持ってくるのではないかと思います。

明治学院大学が教育理念として掲げる "Do for Others" はどんなときにも普遍的な意味を持つ大切な考え方だと思います。
皆さんには、この基盤の上で大学時代に学んだ知識や貴重な体験を活かし、想像力を働かせ、力を合わせて、激動の時代に世界を少しでも良いものに変えていってほしいと願っています。

まだまだ不透明な時期が続きそうです。
皆さん、これまで以上に健康に気をつけてください。
そして皆さん方の活躍と今後のご発展をお祈りします。

おすすめ