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2019年度 入学式 祝辞

明治学院 学院長 小暮 修也

 学生の皆さん、大学院生の皆さん、入学おめでとうございます。保証人ならびに関係者の皆様、ご子弟のご入学をお祝い申し上げます。

 

 「明治学院はどのような学校ですか?」と問われたら、私は1つの特徴を挙げたいと思います。
 それは、明治学院は「自由を大切にする学校でありたい」と願っていることです。
 明治学院には、精神の自由の土壌があり、そのために文学、絵画、音楽など、創造の自由を極めた人が多く出てきました。島崎藤村、馬場孤蝶、戸川秋骨を始めとする文学者、和田英作、岡田謙三らの画家、安部正義、鳥居忠五郎らの音楽家など、多くの芸術家が育っていきました。
明治学院には、ヴォーリズの設計したこのチャペル、インブリー宣教師が住んだ宣教師館、そして島崎藤村の時代に図書館であった記念館、あるいはオルガンの音色など、西洋の文化が映し出され、この学院の雰囲気が精神の自由や創造の自由を後押ししてきたのです。そしてその自由は、神が一人ひとりを愛し、その持っている才能の開花を願っていること、また一人ひとりは替わりになることのできない、かけがえのない存在であることを学院で心に覚えることができたからであると思います。

 今年の3月19日の朝日新聞に、明治学院出身の中島健人くんとアルフィーの高見沢俊彦さんの対談が載っていました。高見沢さんは、「自由というのは、自分に責任を持つことだ」という言葉を明治学院大学で教えられたことが鮮烈だったと語っています。自分は何をしたいのか、自由の範囲を自分で決める、ということは社会に出てからも支えになったと言っています。

 ところで、明治学院は2016年度より、「あなたの生き方が社会をつくる─明治学院の教育ビジョン」を定めました。今日以降配られますチャペルの切り絵が描かれているこの冊子を後で見ていただきたいのですが、大学のスクール・モットーを基にして、明治学院の使命として「隣人と生きる世界市民の育成」を掲げ、具体的なプランを実行しています。
現在の世界や日本を見てみると、国と国、人と人との間に壁を作り、排外的な考え方が出ています。グローバリズムと言いながら、なぜこのような排外的な考え方が出てくるのか、それを探るのが大学です。しかし、よくよく考えてみると、私たち人間は壁を作りたがる存在です。この壁を乗り越え、隣人と生きる世界市民となるためには、人をよく理解し、深く交流し、的確な理性と感性を持たなければなりません。

 有名なドイツの児童文学者ミヒャエル・エンデの『モモ』という作品を読んだことがあるでしょうか。この本では、時間ということをテーマにしています。この作品に出てくる「灰色の男たち」は、「よい暮らし」のためと信じさせて人々を操り、時間を節約させて、せかせかと生きるように仕向けます。その結果、人々の心は貧しくなり荒廃してゆきます。この物語は、現代人の生き方に警告を発しているようにも思えます。
 このミヒャエル・エンデの指摘している時間、ギリシャ語で「クロノス」は流れていく歴史的時間です。ここからCLOCK(時計)という言葉が生まれました。もう一つは、やはりギリシャ語で「カイロス」、これは神から与えられた時、チャンスということを表しています。

 私たちは流れていく時間の世界(クロノス)を生きています。しかし、時としてチャンス(カイロス)がやってくる。それを目覚めてつかむことが大切です。ぜひこの大学・大学院で多くのものに出会い、かけがえのない時を過ごし、チャンスを生かしてほしい、そのように願っています。 

 本日は、ご入学おめでとうございます。