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2018年度 入学式 式辞

明治学院大学 学長 松原 康雄

皆さん、ご入学おめでとうございます。また、保証人、ご家族の方々にも心からお祝いを述べさせていただきたいと思います。これから、学部・大学院で充実した学びを遂行し、キャンパスライフも楽しんでいただきたいと思います。

私の専門は、社会福祉、わけても児童福祉分野ですので、子どもや子育てに関する話を少しさせていただきたいと思います。専門分野の関係でこれまで、何人かの子どもと係わってきました。そのなかの一人に、地元市長との懇談会に出席した中学生が地元振興策として、心霊スポット巡りを提案しました。根拠は、古戦場が多いからだそうです。さすがに、行政が心霊スポットツアーを組むことはありませんでしたが、私は若い世代らしい、面白い、しなやかな発想だなと感心したことがあります。

さて、児童福祉の制度や実践の根幹をなす法律は、児童福祉法といいます。この法律は、1947年に成立しました。まだ、日本が戦後の混乱期にあり、乳幼児用の粉ミルクの不足、戦災孤児の悲惨な生活が世の中の関心を集めるなかで、児童福祉法は、その第一条で「すべて、国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」と規定し、目の前の成長・養育課題だけではなく、ひろく子ども・子育て家庭を対象とした法律として成立しました。敗戦後の社会復興を担い、新たな次代を創り出さす存在として、子どもがとらえられていたからです。

一方で、子どもたちは、児童虐待やいじめなど、成長発達にかかわる困難に直面してきました。しかし、次代を担う存在への期待と尊重には変わりはありません。そして、一昨年2016年には、大きな法改正が行われ、第一条も「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」となりました。子どもが権利主体であることを国際的な条約である児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)を引きながら確認した内容となっています。一括りに「子ども」といっても、何歳までが、子どもであるかについてでさえ様々な議論があります。また、子ども達も様々な生活や文化を持っており、日本でも多文化共生が社会的課題となるなか、子どもの多様性を認め、保障していくことも大切なこととなっています。また、同一言語、文化を背景に持つ子どもたちにも、多様な個性があります。

個性を生かし、共に生活していこうとする延長線上に本学の教育があります。皆さんの学びや、キャンパスライフでの多様性保障とともに、皆さんが主体的な大学・大学院生活を送られることを願っています。今から「大人の事情」などのような忖度を身につけないでください。仮に「常識」とされるものであっても、意図的に関心を持ち、それにチャレンジしてください。

本学の創設者であるヘボン博士もニューヨークでの医師としての成功をなげうって、日本での伝導や、教育、聖書翻訳、辞書編纂という新たなチャレンジをされました。皆さんの目の前には、新たな霄壤、すなわち校歌にある「霄と壤」が開けているはずです。学びと交わりを大切にしてください。

本日は誠におめでとうございます。