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2017年度 卒業式 祝辞

明治学院 学院長 小暮 修也

皆さん、大学のご卒業、また大学院の修了、おめでとうございます。また、保証人の皆さま、ご家族の皆さま、ご子弟のご卒業、修了おめでとうございます。

 さて、今から117年前の1901年1月23日の『報知新聞』に「20世紀の予言」、20世紀はこのような時代が来るという予言が掲載されました。

 それによれば、20世紀は形而下によれば「蒸汽力時代」「電気力時代」、形而上においては「人道時代」「婦人時代」が現れるだろうが、さらに次のような時代が来るだろうと予測しています。

 無線電信及び無線電話─マルコニー氏発明の無線電信はいっそう進歩して、ただ電信のみならず、無線電話は世界諸国に連絡して、東京にあるものがロンドン、ニューヨークにある友人と自由に対話することを得べし。

 暑寒知らず─新器械発明せられ、暑寒を調和するために適宜の空気を送り出すことを得べし。阿弗利加の進歩もこのためなるべし。

 暴風を防ぐ─気象上の観測術進歩して、天災来たらんとすることは一ケ月以前に予測することを得べく、天災中の最も恐るべき暴風起らんとすれば、大砲を空中に放ちて、変じて雨となすを得べし。

 人と獣の会話自在─獣語の研究進歩して、小学科に獣語科あり、人と犬、猫、猿とは自由に対話することを得るに至り、従って下女、下男(お手伝いさん)の地位は多く犬によって占められ、犬が人の使いに歩く世となるべし。

 20世紀はこのようになるという予測でしたが、当たっているものもあれば、いまだに実現していないものもあります。ところで、皆さんは、30年後の2048年には50代になり、社会を支えている世代となるでしょう。

 その2048年頃にはどうなるか、超少子高齢社会に加えて、AI(Artificial Intelligence、人工知能)の発達する社会、BT(Biotechnology、生物生産応用技術、例えば病気の細胞を入れ替えるというような)革命が起こり平均寿命が100歳になるかもしれない、あるいは地球環境の変化等が起こり、2018年とは大きく異なる社会となるだろうと言われています。

 特にAI(人工知能)は人間の働いている多くの業種に参入し、多くの職業がAIにとって替わられるであろうと心配している人もいます。人工知能が人間の知能を上回る日が来る特別な日のことをシンギュラリティ(Singularity)といい、それが2045年頃に起こるであろうと予測されています。

 すでに、1936年にチャップリンが映画『モダンタイムス』で、「人間は機械のようになってはいけない」ことを訴えていますが、人間と人工知能の違いは何かというと、それは創造力、あるいは感受性ではないかと思います。

 先日、辻井伸行さんというピアニストの方のコンサートに行ってきました。辻井さんは全く目が見えないのに長い曲を演奏しているのです。一音一音、ピアノの音と曲を確認して練習したのでしょう。相当な努力をしていることが伺えました。特に、カプースチンの「8つの演奏会用練習曲 作品40」は、演奏に高度の技術と集中力が必要なため、リサイタルで全曲演奏をしたピアニストは極めて少ないとのことです。辻井さんは「挑戦しました」と語っておりました。

 辻井さんの弾く演奏は柔らかくそして純粋な音が聞こえてきます。これは、人工知能や機械が楽譜通りに演奏しているのとは異なるものではないかと思うのです。

 皆さん、一人ひとりが長い歴史の上でも、そしてこの世界という空間の中でも同じ人間はいない、「Only one」の存在です。皆さんは、人工知能や機械と異なって、豊かな創造性や感受性を持って、これからの時代を生きてほしいと願っています。

 これから旅立っていくお一人お一人に神様の祝福が豊かにありますように。

 本日は、おめでとうございます。