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2018年度 卒業式 式辞

明治学院大学 学長 松原 康雄

 ご卒業・ご修了おめでとうございます。保証人の方々にも、心からお祝いを申し上げます。
 本学での4年間あるいは大学院での時のなかで豊かな学習成果と教職員、同期および先輩・後輩との有意義な絆を作られたことと思っております。そして、今後進路は異なっても、新たな学びと他者とのかかわりを得て行かれることと思います。

 さて、本学の第二代総理、現在でいうと学院長か学長にあたります、である井深梶之助は、旧会津藩士であり白虎隊の一員として新政府軍とも戦った経験のあるかたです。その後、本学の創設者であるヘボン博士やブラウン博士と知り合う機会を得て、キリスト教信者となり、牧師を経て、明治学院の総理となりました。彼はキリスト教の布教が解禁された1873年にキリスト教信者となり、牧師や教育者として活躍することになります。この時の選択決断も当時の社会状況では大変なものだったと思います。井深は、1880年、彼が27歳であったとき旧幕臣の娘である水上関子と結婚しますが、22歳のおりには、父親から旧会津藩の重職であった人の娘と結婚するようにと連絡を受けていました。当時の社会状況でいえば、父親の推薦した結婚相手と結ばれるのが当然でしたが、井深は、自分の意志で断っています。学部卒業生の方々と同じ年齢であり、結婚という大きな人生の節目に直面して、彼は親が進める相手とならば面識すらない状況であっても結婚せざるを得ないという当時の社会的慣習を打ち破って、結婚を断るという選択をしました。この社会慣習は今では想像もできませんが、井深は当時としては驚くべき、かつ主体的な選択を行い、実行したのだと思います。信仰を得たこともしかりですが、その思想と実行力を高く評価すべきでしょう。

 皆さんは、大学・大学院での勉学が卒業・修了要件を満たしたとの評価を得て、この後卒業証書授与に臨まれています。それでは、この学びや大学・大学院での経験をどう活かしていくか、今後はそれが問われることになります。人生の節目、節目で一つの選択が大きな満足を与えてくれることもある反面、期待した結果をその選択では得られないことも想定されます。ただ、大切なことはその選択を自らの意志で行ったかどうかだと思います。流されるままに、あるいは他者からいわれるままに選択を行った場合にうまくいかなかったときと、慎重に考え、決断し、選択した結果うまくいかなかった場合とでは振り返りの結果やその後は大きく異なると思います。

 日本は、そして世界は、これから益々不透明な時代を迎えます。これから出会う人生の節目にあたって、慎重に考え、社会的風潮にあえて従わないような判断をすることも皆さんにはあるかもしれません。また、社会人として自分が正面にたって選択する機会は、遅かれ早かれやってきます。キャリア形成でもライフスタイルの選択であっても是非主体的な判断を行ってください。また、最後に決断するのは自分だとしても、周囲で支えてくれる家族や友人は必須です。大学時代培った人間関係は皆さんを支えてくれます。

 本学卒業生である島崎藤村が作詞した校歌は、「心せよ学びの友よ、新しき時世はまてり、もろともに遠くをのぞみて、おのがじしを開かむ」と呼びかけます。もろともに、すなわち、友人や教職員との関係を継続発展させ、ともに未来を展望し、しかし主体的に自分の道を切り開いていくことを卒業後、修了後に実現されることを期待しています。

 時代は変化を求めています。変革の主役は若い世代、すなわち皆さんです。本日は卒業・修了誠におめでとうございます。

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