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コラム

現代を斬る | 民主主義の現在

「政治に無関心な若者」という言説

「日本の若者は政治に関心がない」
「あきらめ感がただよっている」
「上の年代の方が人数が多いうえに若者は政治に参加しないから若者のための政策がおこなわれない」

授業のなかで、学生がこのようなことを述べるときがある。「そうですか?」と聞いてみると多いのが、いやよくわからないがそのように言われていると思う、といった答えである。

たしかに、そうした言説は世の中にあふれている。それは多くの場合、事態を改善するために問題点を指摘しているのだろう。つまり、「今の若者は政治に無関心だがそれではいけない。小さなことから行動を起こそう」といった具合である。

しかし残念ながら、「それではいけない」以下は、学生たちの心にあまり響いていない。影響力を持っているのは、前段のネガティブな情報の方である。その種の報道・情報に接することで、自分を含む若者や日本社会の現状を、無関心、あきらめ、閉塞感といった言葉で認識するようになっている。

民主主義についてどう考えるか

今年7月の参議院選挙は、投票率の低さが話題となった。全体の投票率は5割を切り、10代も大幅に下落した。20代の投票率は、よく知られているように以前から低い。

それに対し、いま書いたことを踏まえると、投票をおこなわないことがいかに問題かという観点で熱心に説いても、おそらく事態の改善には寄与しない。というより、かえって逆効果になりかねない。どうせ変わらないから関心を持たない、みんな参加していないから自分も参加しない、という雰囲気を助長しがちである。政治参加や投票を促すことが目的ならば、そうしたムードを変えるような言説を探っていかなくてはならない。

あるいは、若者の投票率向上に関しては、選挙が近づくごとに小中学校・高校・大学等で、とにかく投票には行くようにと言い続けることも重要だろう。そのようなことを書くとすぐに、主権者教育、政治的リテラシー、といった方向に話が進みがちだが、そうではない。投票に行くのが当然だという意識をどう生み出すかということである。難しい理屈も、多大な労力もいらない(もちろん、十分な主権者教育ができるならそれに越したことはないが)。投票に行く習慣が初めのうちに身についていれば、その時々の選挙で誰に投票したらよいかなどというのは、そのうち自分で判断基準を持っていくものである。

昨今しばしば、世界的な現象として、代議制(代表制)民主主義が機能不全を起こしていると論じられる。社会の分断、政治不信、敵意や対立を煽る指導者の台頭など、さまざまな問題が指摘されている。

問題があるなら、そこに目を向けた方がよい。しかしより重要なのは、その状況をどう変えるかである。過剰な危機感や諦念、失望感を生み出すことなく、事態を改善・漸進させるような言論を淡々とつむいでいくことが、必要とされているように思われる。

白金通信2019年秋号(No.501) 掲載

佐々木雄一 Sasaki Yuichi

法学部専任講師。
専門は日本政治外交史。
民主政治におけるリーダーシップに関心を持っている。
主著に『帝国日本の外交1894-1922』(東京大学出版会)、『陸奥宗光』(中公新書)。