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書評【日本が外資に喰われる】

市場経済の背後にあるもの

おカネ(貨幣)は生活に欠かせないし、100円の物・サービスを100円のおカネで買うから、貨幣は「平等」で「自由」だ。高いと思えば買わないし、等価で欲しい物・サービスを手に入れる。このおカネは交換媒体だ。だがおカネは人々の目的でもある。所得は高い方が望ましいし、数百億円の富を持つ少数者がいる傍ら、おカネつまり資産も所得もなくて困窮する多くの人々がいる。このおカネは職業・ビジネスなどの目的だ。

中尾茂夫教授は国際通貨・国際金融の研究調査に関わってきた専門家で、長年、効用極大・費用極小の市場経済モデルが隠す収奪、不平等、国際政治、腐敗こそ経済の実態である、と説いてきた。本書は、平成時代の「失われた30年」にグローバル化と国際政治、国際金融に立ち遅れ、外国資本、特に米系各種のファンドに食い荒らされた日本経済社会の実態を暴いている。

1997年アジア金融危機時や2002年の不良債権処理において、底値で買った米系資本のハゲタカ同然の収奪、2001年、貿易センターテロに際してのプット・オプション(株式指定価格販売権)投機での大儲け、タックスヘイブン(租税回避地)の英王室領・カリブ海諸島や香港・シンガポールのオフショアを従えるロンドン、デラウェア州、パナマ・マーシャル諸島を従えるニューヨークの二つの国際金融センター、それを存分に利用する多国籍企業や超富裕階級の実態などについても、本書に詳しい。

岡田裕之(法政大学名誉教授)

『日本が外資に喰われる』
中尾茂夫(経済学部教授)著
ちくま新書 318頁 1,015円

 

白金通信2019年秋号(No.501) 掲載