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書評【アメリカ環境法】

『アメリカ環境法』が示唆するもの

本書は米国の環境法研究者、ダニエル・ファーバー教授による米国環境法に関する教科書の翻訳書である。原著は初版が1983年に刊行され、約40年にわたって版を重ね、最新第10版が2019年に刊行されている。本書はその最新版をもとにしている。本学法学部の阿部満教授をはじめとするファーバー教授と旧知の環境法研究者によって丁寧に翻訳されている。

「米国の環境法・政策は政策決定者の意向に左右される」という印象をお持ちの方も多いのではないかと思う。たしかに、地球規模の環境問題に対応した国際条約に米国が参加しなかったり、参加したものの大統領が交代した後に離脱したりということが起きている。

しかし、米国環境法には長い時間をかけて積み上げてきたものがある。その内容は専門的かつ動態的で、その全体像を把握するのは容易ではない。本書は米国環境法の基本的枠組みや到達点を正確に把握するための導きの書といえる。

本書は米国における環境訴訟から始まる。この点は日本の代表的な環境法教科書との大きな違いである。環境汚染やそれによる人の健康被害の発生に直面し、問題状況の改善・克服のための資源として法が用いられ、それが司法の場で受け入れられ、あるいは拒否され、法の不足が補われていく。

環境をめぐる問題状況の改善・克服のために法は発見し構築していくもの。環境関係法令の整備が進んでも、環境法を学ぶうえで忘れないようにしたい視点である。

鶴田 順(法学部准教授)

2018年12月8日開催の本学法学部グローバル法学科開設記念講演会で、学生からの質問に答えるファーバー教授

『アメリカ環境法』
ダニエル・A・ファーバー著
辻雄一郎、信澤久美子、阿部満(法学部教授)、北村喜宣 共訳
勁草書房 246頁 6,380円

白金通信2020年冬号(No.505) 掲載