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書評【リベラルなイスラーム:自分らしくある宗教講義】

聖典『クルアーン』解釈の可能性

本書は「ですます」調で語られ講義形式で書かれているため、著者の講義を受けている気持ちで読み進めていくことができます。イスラーム教の聖典『クルアーン』の引用を適宜用いながら、過激派によるテロ行為、男女平等、同性愛など現代社会と照らし合わせて話が進んでいきます。そしてイスラームを平和的に解釈する人物が複数名登場し、クルアーンの解釈方法が紹介されています。

学生の皆さんの中にはイスラームについてネガティブな印象を抱く人も多いかもしれません。その背景には過激派によるテロ行為や男性が優位に立つイスラーム社会の存在があると思います。例えばイスラム国がテロ行為に及ぶ根拠も、クルアーンにあるとされています。しかし、クルアーンという聖典は日本でいうと聖徳太子の時代に誕生した書物のため、現代社会とはマッチしない部分も多くあります。このクルアーンを新たに捉えなおして、平和的に解釈する動きが広まりつつあるのです。本書ではこのクルアーンの平和的解釈が紹介され、テロ抑制や男女平等を目指すイスラーム教徒も登場します。

また本書には著者の大川先生がエジプトに留学した際の経験談やイスラーム教徒を対象とした調査結果なども紹介されています。日常生活で接点が少ないイスラームですが、本書を通して異文化を知ることができます。グローバル化の時代にイスラームの考え方に触れることが出来る本書を多くの方に読んでいただきたいです。

加藤彩楓(21年国際学科卒)

 

『リベラルなイスラーム:自分らしくある宗教講義』
大川玲子(国際学部教授)著
慶應義塾大学出版会 288頁 2,200円

白金通信2021年春号(No.506) 掲載