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書評【図説 ハロウィーン百科事典】

ハロウィーンを「知る」楽しさ

『ハロウィーン百科事典』には、各地の伝説や習慣からハロウィーンを題材にした小説・映画まで、ハロウィーンに関するあらゆる事項が掲載されており、その数は500項目以上に上る。例えば、「天井―あるアメリカの占いでは、ハロウィーンに少女が暗い寝室で眠る前に天井を見上げると、将来の夫の顔が見えると信じられている」、「カラス―ウェールズの迷信では、ハロウィーンの午後にカラスが家の周囲で鳴くとその家の人間か動物が近日中に死体で発見されると考えられた」など、私たちの身近にあるものが、実はハロウィーンと関係していることが分かり、驚きと興奮を感じる。

ハロウィーンのシンボルとして最も有名なのは、ジャック・オー・ランタンだろう。この事典で引いてみると、アメリカではカボチャをくりぬき、装飾用に使われるのに対し、ヨーロッパではカブをくりぬき、提灯として持ち運び用に使われるのだそうだ。また、ジャック・オー・ランタンの起源は各地域で異なり、それぞれの言い伝えが幅広く掲載されている。このように、各地域の違いを比べて楽しむことができるのも本書の魅力である。

ハロウィーンを詳しく知っている日本人は少ないかもしれない。ハロウィーンと言えば、お菓子、仮装、パーティー、などといった印象を持つ人も多いだろう。それもハロウィーンの魅力の一つだが、ハロウィーンの本当の歴史や慣習を知る楽しさを、この本で多くの人に味わってほしい。

坂口直子(英文3年)

図説 ハロウィーン百科事典
リサ・モートン 著 笹田裕子、安藤 聡(文学部教授)、杉村使乃、成瀬俊一 共訳
柊風舎 402頁/ 13,200円

白金通信2021年秋号(No.508)掲載

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