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思い出の味

スペインのクリスマス菓子、トゥロン 大森洋子教授(教養教育センター)

スペインでは、12月になると街のイルミネーションが鮮やかで、クリスマス市もたち、クリスマスシーズンだということを実感する。イエス・キリストの生誕を再現したフィギュア、ベレンが並べられ、私たちの目を楽しませてくれる。日本では、クリスマスケーキの宣伝が目につく季節だが、スペインにはクリスマスケーキというものは存在しない。クリスマスのいろいろなお菓子が主流で、それらが一つのプレートにのせられ、デザートとして食べることが多い。

秋も深まってくると街のスーパー、デパートのお菓子売り場の一部の棚が、トゥロンというお菓子で埋め尽くされ、いよいよクリスマスが近づいてきたということに気づく。トゥロンは、アーモンドや蜂蜜、砂糖をベースとしたヌガーのようなお菓子で、ハードタイプとソフトタイプがある。それぞれ産地が異なり、スペインの歴史と密接に関係している。スペインを代表するお菓子として季節を問わずスペインの空港などでお土産として売られているが、やはりクリスマスシーズンのものが一番だという印象を受ける。ハードタイプはとても硬いが、トンカチなどで叩いて小さく割り、それを皆で分け合って食べるのは、最高のクリスマスのひとときと言える。

ほかにも口の中で溶けるようなポルボロンやマサパンなどのお菓子が有名で、どれも日持ちがする。12月から1月6日にかけて、お菓子を皆で味わい、クリスマスの雰囲気を楽しむため、日持ちのするものが多いと思われる。

1月6日は、レジェスマーゴス(主御公現の日)と呼ばれ、その前夜には子どもたちにはプレゼントが届く。しかし、良い子にしていないと、炭(今は炭に似せたお菓子)が届く。当日は、王冠の形をしたロスコン・デ・ レジェスという「王様のケーキ」を食べる習慣がある。中には、陶器でできた小さな人形が入っており、当たった人はラッキーという言い伝えがある。この日が終わると街は普段の生活に戻っていく。

白金通信2021年冬号(No.509)掲載

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