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書評【「印象」の心理学】

他者の印象は本当にその人自身か

本書のタイトルから、心理学を学ぶ学生や人事担当者向けの本だと思う人が多いかもしれません。しかし、多くの学生や、全てのビジネスパーソンに読んでいただきたい一冊です。ビジネスシーンを例にさまざまな心理学的な効果が多く説明されています。これから社会に出る学生には参考になり、働いた経験のある方は「あるある」と共感しながら読めるでしょう。

仕事をする際、他者(上司、お客様など)からの印象を意識する場面は多々あります。また、私生活でも他者(パートナー、友人など)からの印象も同様です。私たちは普段"人からどう見られているか"を意識しています。

では、"自分が他者をどう見ているか"について深く考えたことはありますか? 平等に評価できているでしょうか? さまざまな考えがあると思いますが、私たちは生きてきた環境・経験によって物事を判断しています。本書では私たちが無意識に行ってしまう思考のくせ(バイアス)について知ることができ、"自分の他者への評価・印象は自分の思考のくせによって形成されている"ことを確認することができます。

人は、他者と関わること(コミュニケーションやどのような人か考えること)を避けることはできません。本書を読み、ご自身の思考のくせを一度客観的に考えてみませんか? 多面的な視点を知ることは、他者との関わりでの選択肢を増やすことに役立つでしょう。

齋木 彩(株式会社マクロミル
心理学専攻博士前期課程 田中ゼミ 2019年3月修了)

「印象」の心理学
田中知恵(心理学部教授)著
日本実業出版社 269頁/1,760円

白金通信2022年春号(No.510)掲載

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