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書評【 「法のカタチ」から考える 法学の基礎】

法を「多角的」に見る

本書は、「法学は難しい」という多くの人が抱く先入観を払拭する。「法」と聞くと、六法にある法律や固い文言、または難しい判例を想像する人が多い。しかし、本書は多くの人が想像する「法学」とは異なる視点からアプローチしているため、初学者でも容易に読み進めていくことができる。

本書の最大の特徴は、「法」を「カタチ」という視点からアプローチしている点である。「法」を表すカタチと言われたら何を思い浮かべるだろうか。本書では西洋のイメージ像としてユスティティア像を、東洋のイメージ像として獬豸かいち像を紹介している。ユスティティア像とは右手に剣を左手に秤を持ち、目隠しをした女神像であり、獬豸像とは角を持った想像上の動物神である。これらのイメージ像の比較を通じて、西洋と東洋での法の捉え方の違いを見ることができる。

また、身近な文学作品や映像作品を例に、西洋と東洋の法意識の違いを学ぶことができる点でも大変興味深い。特に、東洋に比べて西洋では契約書を交わすシーンが盛り込まれている作品が多いことを知り、私たちの身近なところにも法意識の相違が影響を及ぼしていることに驚きを感じた。

本書は、文字だけではなく写真や図表も多く使用しているため、より理解を深めることができる。初学者はもちろん、法律を学んだことがある人もさらに学びを深めることのできる本である。本書を通して法を多角的に見る面白さを味わってほしい。

鈴木ひかり(法律3年)

「法のカタチ」から考える 法学の基礎

西田真之(法学部准教授) 著
ミネルヴァ書房 243頁/3,520円

白金通信2022年冬号(No.513)掲載

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