ケロッグと寿司と研究 生方雅人(経済学部教授)
賢明なる読者の方々へ、ケロッグといえば何を連想するだろうか。おそらくコーンフレークを連想したのではないだろうか。3年前の漫才日本一を決めるM-1グランプリで優勝したミルクボーイが披露したネタとしても有名である。しかし私にとってケロッグといえばノースウエスタン大学のケロッグ経営大学院(Kellogg)が先に思い浮かぶのである。1年間という客員研究員の私にその道の研究で権威のTorben Andersen教授と若くして数々の優れた論文を発表するViktor Todorov教授を繋げてくれた場所だ。
1年間の滞在が終わる直前の8月中旬、彼らとの最後のランチである。午前の研究打ち合わせが終わり、Torbenの車で連れて行ってくれたのはエバンストンの自宅から徒歩5分にあるSea Ranch という小さなスーパー兼レストランである。日本のお菓子や調味料などが売っており、他で日本食材となると車で1時間程離れたアーリントンハイツにあるMitsuwaまで行く必要があったため、私は以前から此処でよく買い物をしていた。
店内の角には小さな2つのテーブルがぽつんと無造作に置かれているのだが、2人が誘ってくれなければずっとイートインをすることはなかっただろう。こうして導かれるようにSea Ranch で語らいながら一緒に食べた寿司ロールは新鮮かつ濃厚な味わいであった。醤油でひたひたにしながら寿司を頬張る2人を眺めながら私は思った。帰国後もこの人たちと共同研究を続け、必ず論文として完成させたいと。私たちは寿司ロールを完食したその足で意気揚々とTorbenの研究室に戻るのだった。
無事論文が完成したかどうかはご想像に任せたい。私にとってケロッグとSea Ranch はひだまりのように暖かく、穏やかで、いつもほほ笑んでいられる、そういう場所であった。現在HPは以前に比べ増設され見やすいものに仕上がっており、とても嬉しい。コロナが落ち着いたらまた頂きたい。
白金通信2022年冬号(No.513)掲載