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明学で新しい世界を発見したから、世界で活躍する今がある

2023.03.02

子どもの頃から飛行機が大好き。国際航空業界で働く夢を叶え、国際民間航空機関(ICAO)で国際航空輸送のデータ分析などを担当している新井祥一郎さん。元々、人見知りで人とコミュニケーションをとるのが苦手だった新井さんは、大学時代、自ら英語サークルに飛び込み、他者を理解し人間関係を構築する方法を学んだと話します。その後、交換留学中に国際機関で働くことも検討しキャリアデザインをし始めました。現在の仕事の内容や、明学時代の思い出について語っていただきました。

新井 祥一郎 2013年 経済学部 経済学科卒業

明治学院大学を卒業後、航空リース会社や自動車メーカーのグループ会社での勤務を経て、オランダの大学院に進学。2022年4月からJPO(Junior Professional Officer)派遣制度を活用して国際民間航空機関(ICAO)で働く。
※JPO派遣制度…1961年の国連経済社会理事会決議により設けられた、各国政府の費用負担を条件に国際機関が若手人材を受け入れる制度。日本も外務省を含む複数の省庁が、国連をはじめとする国際機関に派遣を実施している。

国際航空輸送の安全運航に貢献

外務省のJPO(Junior Professional Officer)派遣制度を活用して、2022年4月から国際民間航空機関(ICAO)で働いています。主な業務は航空輸送に関する経済分析です。航空機の発着回数や乗客数など、国連に加盟している世界各国から航空局に集められた航空輸送データを収集、分析し、情報を公開します。それにより国際航空輸送の安全性向上と、効率的な運用、持続的な発展に貢献しています。データを扱う上で最も重要なのは、正確性です。複数人体制でチェックし、ミスやデータ漏洩の防止に努めています。

現在の勤務地であるカナダのモントリオールは、初めて住むエリアですが、特に夏は涼しく過ごしやすい場所です。職場には日本人スタッフも数人いて、仕事だけでなく生活面でもいろいろとサポートしていただいています。現地での暮らしにも慣れ、楽しめるようになってきました。

一緒に働くメンバーは世界各国から集まっているので、文化の違いに戸惑うこともあります。例えば、僕自身は「挨拶はコミュニケーションの基本」だと考えているのですが、そう思わない人もいます。自分からできるだけ円滑なコミュニケーションをとるように心がけながらも、文化の違いがあることを受け入れ、一喜一憂しすぎずタフな心を持つよう意識しています。

JPOとしての任期は2年ですが、周囲からの信頼を獲得し、できれば継続してICAOで働きたいと考えています。また、データの分析内容を論文としてまとめて発表し、社会の役に立つことも目標のひとつです。

海外留学を視野に、明学を選択

栃木県の足利市で生まれ育ちました。小学校低学年の時、家族旅行で飛行機に乗ったことがきっかけで、飛行機が大好きになったんです。学校でも飛行機の絵ばかり描いていました。勉強の面でも、飛行機オタクだったおかげで航空路線図から地理に関心を持ち、社会科が得意科目でした。飛行機といえば海外の仕事というイメージがあったので、将来は飛行機に関われる仕事に就こうと早い段階から国際情勢にも興味を持ち、意識して英語も勉強してきました。

明学を選んだのは、海外の留学生と交流ができることや、協定校が多くレベルの高い学校に留学できることに魅力を感じたからです。西洋かぶれでしたので、欧米風のキャンパスの雰囲気も好きでした。経済学部を選んだのは、もともと社会が好きだったのと、国際経済に興味があったからです。英語以外に、社会経済関連の専門性を身につけたいと考えました。

オシャレな学生たちに、最初は馴染めなかった

キャンパスライフをスタートし、「新しい友だちをつくろう!」と意気込んでいたのですが、すぐに燃え尽き症候群になってしまいました。もともと人見知りでコミュニケーションは苦手。地方の男子校から出てきた自分にとって、キラキラした都会の学生たちはまぶしく、なかなか馴染めませんでした。明学の学生たちは、オシャレなんですよね。僕はいつもラフなTシャツと短パンで学校に行っていたのですが、面倒見の良い先輩に「もっとちゃんとした服装をしろよ」と冗談交じりに指摘されたこともありました。僕のことを思って言ってくれたのでしょうが、正直、その時は「面倒くさいな」と思いました(苦笑)。

当初は多くの人と関わることに疲弊しやすく、授業の間の時間は空き教室にひとりでいて、気持ちを充電することもありました。そんな落ち込んでいた時に支えになったことのひとつが、当時はなかなか他の人に言いづらかったですが、大学の学生相談センターです。親身になって話を聞いてくれ、寄り添ってくれる存在に、僕は救われました。

コミュニケーションが自分の弱点だと自覚していたので、何とか乗り越えたいと考え、英語サークルに入りました。コミュニケーションに長けた仲間たちの中で、最初は苦労しましたし、失敗もありました。でも、自分から飛び込んでいったことで乗り越えられた経験が、社会人になってからのコミュニケーションでも役に立っていると感じます。

留学中に、専門にしたい学問を見つけた

大学2年生の秋学期から1年間、アメリカのカリフォルニア大学に留学しました。生まれて初めての長期の海外生活でしたが、現地の人との接し方や自ら発言していく姿勢などを学ぶことができ、貴重な経験となりました。留学中に経済地理学を学んだことで、その後、大学院に進みこの分野を究めたいと方向性が決まるきっかけにもなりました。留学準備段階から渡航中も、明治学院大学から丁寧なサポートをしていただき、無事やり遂げることが出来ました。留学を通して、国際機関で働くことも選択肢の一つとしてキャリアを検討するようになりました。

大学4年生の時には、将来ICAOで働くことも視野に、航空業界を目指して就職活動をしました。ICAOで働くには、3年以上航空業界での勤務経験が必要です。まずは航空リース会社に就職し、その後自動車メーカーのグループ会社でデータ分析などの業務を経験しました。そうして7~8年社会人経験を積み、29歳で、ICAOのJPO制度にチャレンジするためオランダの大学院に進む決心をしました。JPOには35歳以下という年齢制限があり、「早めに挑戦していこう」と、逆算してキャリアデザインをしていきました。1年半ほど大学院で経済地理学を学んだ後、JPOに挑戦して今に至ります。

大学に根づく「他者を思いやる気持ち」

明学の5つの教育目標は、社会に出て働く上で、どれも非常に重要な能力だと思います。特に、僕自身は大学時代にコミュニケーションを学びました。コロナ禍ではコミュニケーションを図ることが難しい場面も多いかもしれませんが、人とぶつかり合いながら、「他者を理解する力」は、失敗してもいいのでぜひ学生時代に学んでほしいなと思います。

明学は“Do for Others(他者への貢献)”の精神から、ボランティア活動にも注力しています。明学に入学して、多くの学生が震災ボランティアに参加していることには驚かされました。僕自身は留学や就職活動と重なってしまい一度しか参加できませんでしたが、熱心に活動する学生たちには頭が下がる思いでした。「他者を思いやる気持ち」は明学ブランドのひとつであり、「明学らしさ」だと僕は考えています。

困った時は、人に頼っていい

在学生の皆さんには、学生なので、まずは学業を優先に考え、しっかり勉強していただければと思います。大学の成績は、大学院の受験や奨学金の応募にも影響します。なかでも、統計学はさまざまな分野で応用されるので、文系の学生も将来社会で活躍するために、その基礎を学んでおくといいかもしれません。また、国際機関に興味がある人は、ぜひ海外に行って国際情勢への関心を高めてください。英語(またはフランス語)はある程度できて当たり前、その上で自身の専門性を見つけ、磨くことが、大学院への進学など次のステップにつながります。特定の分野になると、情報が勝手に転がり込むことはなかなかありません。ぜひ自分から積極的に取りに行ってほしいと思います。

学業を基本にした上で、サークルやボランティア活動など、さまざまな課外活動にもチャレンジして、自分の強みを見つけていってもらえればと思います。何かに打ち込むと、また次の目標が見えてきます。

僕と同じように、コミュニケーションに苦手意識がある学生も多くおられると思います。僕は学生相談センターに助けられましたが、困った時は人に頼ることが大切です。そうして、自分のできることから少しずつチャレンジしていってください。

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