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心のケアもグローバルに-公認心理師を目指すその先に-

2022.02.03

日々さまざまな出来事が起き、目まぐるしく動いていく世の中だからこそ、心のケアは誰にとっても大切なこと。「どんなに技術が発展しても、人間だからできる手助けがしたい」。将来心理職として人の心に寄り添っていきたいと願う、日比さんの明学で見つけた学びと将来の目標とは?

日比 麻記子 心理学部 心理学科 4年将来は人の心に寄り添う仕事をしてみたいという思いで心理学科に入学。中高時代からボランティアや海外での活動にも興味があり、大学入学後も国内外でさまざまな活動に参加。「スープの会」の炊き出しボランティア、インドSDGsフィールドスタディ、スペイン短期留学、そしてMGオリンピック・パラリンピックプロジェクト実行委員会の代表として、東京2020大会のボランティアスタッフも務めるなど、多くの経験を積む。大学卒業後は大学院に進学予定。趣味は中学生から続けているバドミントン、ピアノを弾くこと。座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。

人だからこそ担えること

高校時代、将来の進路について漠然と考えていた時、「人だからこそできることを極めたい」と考えるようになりました。 今はさまざまな技術が発達し、将来人に代わってロボットやAIがその役割を担う分野もたくさん出てくると思います。もちろん技術の進歩で人々の暮らしが豊かになることはいいことですが、その中で自分がどう役に立てるのかを考えた時、「心のケアは同じ人間同士でないと難しいのではないか」と思うようになったんです。その役割をぜひ担ってみたい。この思いが心理職を目指す第一歩です。

高校時代に出会ったスクールカウンセラーとのやりとりもきっかけの一つでした。人の悩みを聞くことだけなら、正直誰にでもできます。単に話を聞くだけではなく、きちんと勉強して技術を身につけ、相手に合わせた解決策を見出していく。その知識や技術を身につけるべく、心理学が学べる大学を探すようになりました。

「トラウマ」への向き合い方に迫る

大学で心理学を学ぶにつれて、日頃起こり得る身近な出来事がその人にとってトラウマになってしまうことについて研究したいという思いが強くなりました。 今は、認知行動療法を専門とする森本浩志先生のゼミに所属し、トラウマを抱える人の認知プロセスや、トラウマの克服に向けてどういったことが必要なのかを研究しています。研究によって得られた成果は、トラウマを抱える人に対するアプローチに応用したいと考えています。

臨床心理学や精神医学では基本的に、生命に関わる「致死性」のトラウマを扱うのですが、私はより人々の身近に起こり得る事柄に着目したかったので、「非致死性」のトラウマを研究テーマとして選びました。トラウマというとものすごく大きな出来事をきっかけに生じるものと考えがちですが、日頃のちょっとした失敗や人間関係のトラブルからも生じる、誰もが抱える可能性がある問題の一つです。ただそういった些細な出来事のトラウマや辛い気持ちが、後に精神疾患に結びつく可能性がある一方で、その後の人生を好転させるためのきっかけになり得るものでもあります。トラウマによる苦痛をいかに和らげ、生きていく上で次のステップに結びつけていけるのか。その方法を学問的に探究し、臨床でのアプローチにつなげていくことは、まさに人と人との関わりの中で生み出される、人間にしかできないことだと感じています。

自分の目で見て体験する大切さ

一度しかない大学生活、心理学の勉強以外にも興味のあることはとことんやってみようと思っていました。元々国際交流やボランティアにも興味があったので、大学に入ってからスペイン語やフランス語を習得したり、異文化をこの目で見るために短期留学に出かけたり、インドのフィールドスタディではSDGsについて学ぶ機会を持ったり。中でもMGオリンピック・パラリンピックプロジェクト実行委員会の存在は、私が明学への入学を決めるきっかけの一つでした。

2020年の東京大会開催に向けて、組織委員会と協力しながらさまざまな準備を重ね、おもてなし講座や観光案内ボランティア、パラスポーツ体験会やIOC講演会など、1年生の時から継続して多くの企画を運営し、団体の代表にもなりました。しかし、コロナ禍で大会延期が決まり、異例の大会となる中、私たちの活動にも多くの変更や制限が生じ、その現実に苦悩することもありました。何より、心理学や福祉について学んでいるからこそ、大会に盛り上がる人々とコロナ禍に苦しむ人々の間の、目に見える格差に葛藤を感じていました。その中でも試行錯誤しながら自分にできることを考えて取り組んだ経験や、実際に大会会場に足を運び、世界中から集まるアスリートや関係者の方へのサポートができたことは、一生の財産になると思います。

どんな場面でもそうですが、自分の目で見て、感じること。そして、失敗や挫折、思い通りに行かないことにも逃げずに向き合い、自分にできることを考えて行動していくこと。これらは、心理学の探究や臨床現場での心理支援にも絶対に必要なことだと思います。大学生活での多くの出会いや経験が、すべて学びに結びついていると言っても過言ではありません。

心のケアで国境を越える

大学卒業後は大学院に進学し、公認心理師と臨床心理士の資格取得を目指しながら研究を続けていきたいと思っています。大学院では授業や実習が多いため、忙しい日々が続きそうです。期待と不安が入り混じっているというのが正直なところですが、その分自身を鍛えられると思って進んでいく覚悟でいます。その覚悟と自信を大学時代につけられたと思います。

将来は公認心理師と臨床心理士の資格を取得し、病院や学校などさまざまな臨床現場での心理支援活動を行いたいと考えています。そして、海外でもトラウマで苦しむ人々の心のケアにあたるため、「国境なき医師団」に参加したいと考えています。 紛争地域や経済基盤の乏しい国の医療逼迫は、今なお続く大きな課題です。紛争地域の人々や難民の中には、逆境に苦しみトラウマを抱えている人が大勢いると考えられます。まさに今学んでいることを、国境を越え異国の地で役立たせる。これは高校生の頃から目標としていたことの一つでもあります。

さらに海外に拠点を持ち働くこと、研究者として経験や知識を後世へ伝えていくことなど、やってみたいことはまだまだたくさんあります。 多くの目標の実現に向けて一つひとつ、目の前の課題をクリアしながらステップアップし、自身の知見を深めていきたいと思っています。

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