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データが紡ぐ、無限の可能性

2022.11.24

この勉強は、何につながるのか? 誰しも一度は考えたことがあるかもしれない問いに対して「すべての学びが社会につながる」と明快に答える石飛さん。2022年9月に行われたデータビジネス創造コンテストでは優秀賞(準優勝相当)を受賞し、データ分析の魅力、可能性に魅了されました。あらゆる勉強に夢中で取り組むその姿勢はどのように培われたのでしょうか。これまでの学生生活、これからの思いに迫ります。

石飛 友里恵 経済学部 経済学科 3年かねてより関心を持っていた教育分野の問題解決の手法を学ぶため、経済学部経済学科に入学。児玉直美教授(経済学科)のゼミに所属し、データ分析の学びに注力する傍ら、教育分野の複数のインターンに取り組む。好きな言葉は「やらない後悔よりも、やった後悔」。

やりたいことを、考え抜く

明治学院大学を知ったきっかけは、高校時代に取り組んでいた課外活動「校外プログラム大全」です。ビジネスコンテストやボランティア、起業家プログラムなどさまざまな課外活動に参加していく中で、「地域や学校に関係なく課外活動をもっと多くの高校生に身近なものにしたい!」との思いを持ち、運営メンバーの一人になりました。校外プログラム大全は中高生向けの課外活動情報を発信するWebメディアで、私はそこでWebページを制作する上で必要なHTMLやCSSなどの基礎を習得しました。この活動で明治学院大学の卒業生に出会ったご縁で、その方の出身ゼミである大竹光寿准教授(経営学科)ゼミの見学に行きました。
高校の授業は「先生が生徒に知識を与える」イメージが強かったのですが、大学の授業を例えるならば「先生と学生が与え合う」でしょうか。学生と対等に議論してくれる先生がいること、そして親身になって相談に応じてくれる面倒見の良さに惹かれ、明治学院大学に強い関心を抱きました。

そこから自分のやりたいことを考え抜きました。もともと私は「教育」に強い関心を抱いていました。自身の経験もあるのですが、家庭の収入と学びの機会が比例するデータに触れたことや高校時代に接した小中高生の実態から、「すべての子どもたちが生まれや環境にとらわれず、自分の物差しで未来を選択できる仕組みをつくりたい」と思っていたのです。その思いを声高に叫ぶだけではなく、仕組みに落とし込むことができないか。経済学には、その可能性があると強く感じました。仕組みをつくるには、マクロ経済学などを通じて仕組み(市場)の基礎を学ぶ必要がある。そう考え、経済学科に入学しました。

学びは「目的」ではく、疑問解消のための「手段」

インターンの現場で得た問題を大学の授業やオフィスアワーで解決する。大学入学後はそんな毎日を過ごしました。インターンは、入学と同時にスタートした認定特定非営利活動法人 Learning for Allにおける児童向け学習支援活動です。冒頭で触れた「教育の仕組みづくり」を学ぶために始めました。「正負の数が計算できない」といった学習の悩みから、ひとり親家庭の深刻な悩みまで。多様な悩みとその要因の特定、解消に至るまでの悩みや疑問をどう解消すれば良いのか。この動機が授業に対するモチベーションにつながりました。オフィスアワーでは大石尊之教授(経済学科)に大変お世話になりました。経済学の基礎であるミクロ経済学の授業を受けた時にこちらの質問に親身になって応じてくださり、次第にオフィスアワーの時間にも相談をするようになりました。勉強の疑問から入るべきゼミの相談、そして将来の悩みまで、こちらが理解するまで丁寧に説明してくださいました。時にはmanaba(オンライン授業支援システム)でスクロールしても読みきれないくらいの丁寧なフィードバックをいただくことも。ニュースで報じられる新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金や国の財政問題を目にするたび、「大石先生だったらどう考えるだろう?」と、事象に対して疑問を抱く「良い癖」を身につけることもできました。

日々の勉強を楽しく取り組めるようになったのは、学びを「目的」とせず、疑問解消のための「手段」と捉えることができたからだと思います。例えばミクロ経済の授業でも、「市場に対する疑問があり、その答えをどうしても知りたい」 こんな状態で臨めるかどうかで、学びの深度は大きく変わります。この点に気づけたことは、大学1・2年次の財産の1つです。

大学1・2年次は、児童向け学習支援活動に並行して高校生向けの探求プログラムや授業の企画・設計を行うインターンにも参加していましたので、1日1日の時間をフル活用していました。特にコロナが落ち着き対面授業が増えた大学3年の春からは、大学には朝1番に入構し、出構時間ギリギリ(白金キャンパス:22時00分)まで勉強する日々が続きました。体力的にはハードだったかもしれませんが、インターンで得る教育現場の疑問や問題を大学の授業で解消するサイクルに魅了され、まさに「夢中」に過ごした2年間でした。

データ分析の面白さにハマる

2022年(大学3年次)には児玉直美教授(経済学科)のゼミに入りました。データ分析を用いて国や地方の政策を評価することをメインテーマとするゼミです。例えば「AだからBである」という仮説があるとします。しかし、Bとなる要因は本当にAだけなのか?もしかしたら別の要因Cがあるのではないか?このような仮説設定と分析を、Stata(統計解析ソフト)などを使って分析し、自分なりの結論をまとめ、チームごとに発表します。春学期は「高齢化社会に与える財政政策」をテーマとした論文を取り上げ、チームで実証分析の習熟度向上に努めました、現在(2022年10月時点)取り組んでいるテーマは、「若者の将来不安を生み出す要因とその予防施策」です。不安を生み出す要因と言っても多様な背景が考えられますので、段階ごとに分析を進めます。まずは1段階目として、高卒、大卒、男性、女性、正社員、非正社員といった属性を分析します。その後、分析結果を踏まえ、2段階目では正社員、非正社員になる要因など、ロジックツリーやMECE(ミーシー)などのフレームワークの考えも生かしつつ、深掘りを進めます。データ分析も自分が知りたい、解決したい何かしらの疑問やテーマがあり、その解消のために能動的に取り組む姿勢が大切と考えています。ここでも児童向け学習支援活動の経験が生きました。

データ分析コンテストで優秀賞を受賞

2022年9月、高校時代の友人1人とチームを組んでデータビジネス創造コンテストに参加しました。慶應義塾大学データビジネス創造コンソーシアムが主催するコンテストで、「世界をいい方向に進化させる」「デジタルの力を活用する」「企業、アカデミズム、 地域社会、行政機関、世代、立場を超えて連携させる」をコンセプトにしています。膨大なデータを活用して新たな知の抽出や価値の創出を競います。コンテストを知ったきっかけは高校時代の友人から誘われたことですが、ゼミで学んだデータ分析の力を学外で試してみたい、新しい挑戦がしたいと考え、参加を決めました。コンテストのテーマは「寿命100年時代を生き抜く知恵-疾病予防と幸せな生活-」。健康習慣病の患者15万件分のレセプトデータからビジネスプランを生み出す、未知のチャレンジでした。
分析にあたり、まず注目したのが、男女別の発症年齢です。大学で雇用問題について男女別の分析を進めた際、男女別に異なる傾向が見られたことがきっかけです。男女別、年齢別と分析を進めていくと40代~50代で健康習慣病を発症する大きな山があることがわかりましたが、10代~20代の若年層でも山があることに気づきました。「健康習慣病とは無縁の印象なのに、なぜ?」 このような疑問を抱き、小学校教諭や給食の調理師など、普段子どもたちと接する仕事に就く方々にヒアリング調査を実施しました。事実はデータで理解できますが、理解を納得に昇華させるためには定性的な声も大切と考えたからです。ヒアリング結果を導いた結論は、総じて「児童の健康意識は低い」ということ。もし、子どもたちが健康習慣病にかかってしまったら、食事や行動に制限が必要となる可能性もあります。

「すべての子どもたちが生まれや環境にとらわれず、自分の物差しで未来を選択できる仕組みをつくりたい」 私がかかげる学びのテーマも手伝い、分析からビジネスプラン検討までのステップにはより一層の熱が入りました。その後さらに熱が入った体験をすることになります。8月28日から9月14日までカナダ(バンクーバ)に留学した時のことです。国際線で太平洋を横断している時、斜め前にすわっていた女性の方が食事中に痙攣して倒れてしまったのです。混乱する乗客。鳴り響くドクターコール。機内は騒然としました。偶然搭乗していた台湾の医師のおかげで事なきを得ましたが、「教育を通じて遠い誰かのためになる経験はしているけど、目の前の誰かを助けることができない」 突きつけられた事実に大きな無力感を覚えました。その一方で、そんな私でも医療データを通じてなら身近な人を助けることができるかもしれないと気付きました。帰国はビジネスプラン提出締め切りの1週間前。徹夜続きでビジネスプランを考えました。

「第15回データビジネス創造コンテスト」当日の発表資料

コンテストでは約90チームの中から本選に進む上位11チームに選ばれ、優秀賞(準優勝に相当)をいただくことができました。「え!ホントに受賞?」 結果発表時の心境はまさのこの一言でした。分析の精度、スライドの作りなど、自己評価としては他チームと比較すると詰めの甘い部分が目立つ印象ですが、10代~20代の若年層に着眼した点を特に評価いただけました。健康習慣病防止に向けたアプローチは早期であればあるほど有効であること、そして、10代~20代の若年層は、市場の成長も見込めること。私が取り組んできた教育活動のメインターゲットも10代ですので、この活動も一緒になって評価いただけたような気持になりました。何より嬉しかったのは、大会終了後に観覧の方から、お褒めの言葉や今後のアイディア実現に向けたさまざまな言葉をいただけたことです。

「児童における問題は根強いからこそこの着眼点は本当に嬉しいし今後の活動を見たい」
特に、子供の居場所支援現場に関わった経験を持つ方からいただいたこの一言は、医療データを通じてより良い社会を実現する可能性、さらにはその必要性を強く感じた出来事でした。

データが紡ぐ、無限の可能性

データ分析と出会うまでの私は、どちらかというと「現場の声」などの定性的な結果を重視する傾向でした。定性的な結果には気持ちが備わりますので、とても大切です。そしてデータ分析で得られる定量的な結果は、その想いや熱意を具体化する力を持ちます。データを扱い、仕組みを整えれば、一生かかわることができない人にもアプローチできて、その人の役に立てることができるかもしれません。データには無限の可能性がある。そう確信しています。その可能性をさらに探るべく、現在は大学院への進学を予定しています。これまで携わっている教育分野の学びをさらに深めつつ、ビジネスコンテストのように未知の分野との出会いも大切にしていきたいと思っています。学びのキーワードは「データ」。これからも、ワクワクを大切に、未来を切り開いていきます。

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