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「関心」と素直に向き合い続けることで、将来の道は自ずと開ける

2022.01.12

「通訳や国際機関の職員など、将来は英語に関わる仕事に就きたい!」 入学時にそう語っていた金綱さんですが、現在では将来の目標が大きく変わったと語ります。自分の関心の赴くままに過ごした彼女の大学生活から、将来の目標を見つけるヒントが隠されています。

金綱 ななみ 文学部 英文学科 4年通訳や国際機関の職員など、英語に関わる仕事に就くために英文学科に入学。海外交流に関するボランティア活動やパソコンテイク、手話の習得を経て、「言語」そのものに強い関心を抱くようになる。趣味は音楽鑑賞とお笑い鑑賞。「クジラ夜の街」「レインボー」のファン。

拒絶・関心・疑問

もともと文学作品が好きで、英文学も含むさまざまな国の作品を読んでいました。英語に対して「好き」以上の気持ちを抱くきっかけとなったのが、高校3年生の時。20世紀の英国における女性参政権運動を描く映画「未来を花束にして」との出会いです。デモに参加し、警官に殴打される女性たち。悲痛な叫び。数々のシーンに大変な息苦しさを覚え、最後まで見ることができませんでした。「彼女たちの本質的な苦しみをどうやったら理解できるのだろう?」「語学能力を高め、言葉に込められた思いを理解できれば良いのだろうか?」描写に対する拒絶とともに沸き起こる強い関心と疑問が、私を英語の世界に誘いました。

勉強の合間にちょっと新しいことがしてみたい

英語を通じて飛び込んだアメリカ文学の世界は私にとって未知の経験の連続でした。1年次はジェンダーに対する関心がきっかけとなってゲイ・コミュニティに関する勉強にも力を注ぎましたが、今振り返ると大きな転機となったのは、パソコンでのノートテイクとの出会いです。聴覚障害のある学生と一緒に授業に参加し、授業で先生が話す内容をパソコンで文字化して伝える活動です。「勉強の合間にちょっと新しいことがしてみたい」 最初はこのような動機ではじめました。春学期はタイピングを中心としたスキル習得に向けた練習期間でしたので、パソコンテイクを本学的に開始したのは秋学期からでした。

最初の授業は「とにかく緊張した!」の一言。先生の話にタイピングが全く追いつかなかったことを覚えています。回数を重ねるうちにタイピングのスピードもあがり、授業の内容を把握できるまでになりました。誰かの授業に参加し、新たな学びを身につける。そして他の学生の支えになれる。こう考えられるようになり、やりがいと面白さを感じるようになりました。

表現できなかった「その場の雰囲気」

ただ、常に気になっていたのは障害がある学生にとってのタイムラグ。例えば教室で学生たちが授業の内容に反応して笑っている時です。笑い合っている場合、「その場の雰囲気」のようなものが大切な時ってありませんか? パソコンテイクですと文字を通じて伝えるためにタイムラグが生じ、「その場の雰囲気」まで表現することができません。

どうすれば表現できるか結構悩みましたが、光明をもたらしてくれたのが手話です。きっかけは、手話で楽しそうに会話する友人たちの姿を学生サポートセンターで見かけたことです。表情豊かな手話でのやりとりに衝撃を受けました。無音ですから、わからないことはわからないとすぐに伝えなければいけませんし、いわゆる「間を読む」といったやりとりも生じません。ランチタイムではランチが摂れなくなるほど手話に夢中になります。手話に出会って、日本語や英語など発話を必要とする言語と比較する観点で向き合い、「今まで出会ってきた中で一番面白い言語だ」と思いました。

手話で再認識。コミュニケーションの多様性

それからは手話に夢中。手話辞典に載っている手話を1日10語毎日覚える。手話を補完するために必要な指文字の習得のために、入浴中は流行りの歌を指文字で表現する。こんな毎日でした。覚えることがたくさんありましたが、当たり前と思っていた「ありがとう」「おはよう」など日常会話をはじめて手話でやりとりできた時の感動は忘れられません。

「今、先生に当てられているよ!」 パソコンテイクの時にこんなことを素早く伝えられるのも、手話のおかげです。

2年次から同じ学科のろう友人と一緒に授業を受ける機会にも恵まれました。現在も同じ授業を受けていますが、今では手話でディスカッションができるまでになっています。手話には「空気を察する」「文脈を読む」といったことがありません。伝わることは伝わるし、その逆も然りです。ただ、伝わらなければ書けば良いし、場合によっては表情で伝えても良い。手話を通じてコミュニケーションの多様性を再認識できました。

英文学の学びにおいては生田少子教授(英文学科)のゼミにて社会言語学を勉強しています。社会言語学では幅広いテーマを扱うのですが、例えば、ある会話の中で「なんか」という言葉が何のために何回出現しているかなど、言葉の構造や機能、使用方法などを学ぶことが挙げられます。現在は、女子大生が自分の弱みをさらけ出した際のナラティブ(物語的)な構造について学んでいます。英文学はもちろん、パソコンテイクや手話で触れた言語の数々を社会言語学の観点から冷静に分析することで、言葉の裏にある背景や意図を考える癖もつきました。このようにとことん言語と向き合った学生生活を経て考え出した将来のキャリアは、「言語聴覚士」への道でした。

大切なのは「関心」と素直に向き合い続けること

言語聴覚士は、「話す・聞く・食べる」のスペシャリストと言われています。ことばやきこえ、飲み込みに障がいがある方に対し訓練や指導を通して支援する専門職(仕事)です。現在は、卒業後に言語聴覚士の資格取得を目指すべく専門学校への進学を予定しています。「勉強の合間にちょっと新しいことがしてみたい」。こんな動機で始めたパソコンテイクが、手話、社会言語学を経て、英語から言語そのものに対する関心へと変わりました。その「関心」と素直に向き合い続けることができれば、将来の道は自ずと開ける。大学生活では、そのことを学べた気がします。学んだ大学生活も残りわずかですが、「明学でよかった」と笑顔で卒業式を迎える日を楽しみに、一日一日を大切に過ごしたいと思っています。

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