スマートフォン版を表示

辛かったコロナ禍が、自分を強くしてくれた

2021.07.07

「人生でこれほどまでに孤独を感じたことはありません。毎日が本当に辛かった」 コロナ禍に対する正直な気持ちを吐露する奈良部さんに共感する方も少なくないのでは。しかし、奈良部さんはそのコロナ禍による「孤独」が自分を強くしてくれたと語ります。奈良部さんの学生生活を紐解くと、「孤独」との向き合い方が変わるヒントが隠されているかもしれません。

奈良部 圭亮 社会学部 社会学科 4年 体育会少林寺拳法部前主将。大学入学後に少林寺拳法を始め、猛練習の末、2019年11月の全日本少林寺拳法大会 男子茶帯の部にて全国三位に入賞。現在は就職活動を経て、後輩の指導に注力しつつ11月に控える同大会にて全国一位を目指し猛練習中。好きな言葉は「我流こそ人生」

きみ、柔道部?

「いや、違います」「ほんと? 柔道やっているように見えるけどなぁ」 少林寺拳法部との出会いは先輩とのこんなやり取りでした。入学早々に横浜キャンパスで行われた勧誘イベントの一幕です。ちなみに柔道は未経験。小中では野球、高校ではテニスに取り組んでいました。格闘技は以前から興味を持っていて、声をかけていただけたのは渡りに船。というのも、初心者から全国クラスの活躍を目指せるとの前評判を聞いていたからです。見学に行き、体験し、気づいたら入部。すべて2018年4月のことでした。

それからは少林寺拳法漬けの毎日でした。少林寺拳法は中国発祥と思われることもありますが、第二次世界大戦後の香川県で生まれた日本発祥の武道です。終戦後の荒れ果てた社会を目の当たりにした宗道臣(そうどうしん)氏が香川県の多度津で正義感に溢れる人づくりの行として開いたことがルーツです。少林寺拳法は主に演武が中心であり、「剛柔一体」という言葉があるように突きや蹴りなどの「剛法」と投げ技や固め技などの「柔法」が合わさってひとつの演武になります。

稽古は、水曜、土曜の合同稽古を中心に、勉強とアルバイトの合間に自主稽古。拳の握り方や作法など、全てが初体験でしたが、新しい技術を身につけるたびに成長を実感できる毎日が楽しくて。演武をする際のペアとして組んでいる同期の北園隼人さん(消費情報環境法学科4年)とは、時には寝食をともにしながら稽古談義に明け暮れました。意見が対立しても喧嘩したことは一度もありません。お互いの意見を全て聞き、時には別の先輩に客観的な意見を仰ぐ。私も北園さんも「強くなること」でベクトルが一致していたからでしょうか。自分の意見が間違っていた時はその誤りを素直に認めることができました。2019年11月には全日本少林寺拳法大会 男子茶帯 演武の部で全国三位に入賞。全国一位を目指していたので悔しさもありましたが、認められたことで、確かな成長を実感できました。

自分の強さを誰かのために役立てたい

将来の道として、警備業界に関心を抱くようになったのもこの頃からです。自分の力を誰かのために役立てたいと考えるようになりました。しかし、役立てるとは言っても具体的にどうやって?
そんな問いが頭をよぎるようになりましたが、社会学科で学んだ「女性の社会進出」に関する考察がヒントをくれました。働く女性が増えると、特に共働き世帯の増加により自宅を空ける時間も増加しているのではないか。そうなると自宅の防犯対策に関する需要が高まるのでは?そう考え、Webサイトや警備会社の社員の方へのインタビューなどで情報収集をしたところ、まさに仮説の通り。少林寺拳法で身につけた心身の強さ、社会学科で学んだ気づき、そしてキャリア。バラバラに思えた三つの事柄がつながり、難解な問題が解けた時のようなスッキリとした気持ちになりました。

辛いときは、誰かに頼ってもいい

2020年に入っても、全国一位を目指し少林寺拳法に注力する日々を過ごしていましたが、コロナ禍がもたらした「孤独」が自分をさらに強くしてくれました。2020年4月から7月にかけて、家族や友人と一回も会えず、一人で過ごす毎日を送りました。緊急事態宣言下ですので課外活動も制限され、キャンパスに行く機会もほぼゼロに。人に囲まれて過ごせていたこと、好きなことに没頭できていたこと。これまでの生活でいかに幸せであったかを認識しました。そんな中で契機となったのは、寂しさを紛らわすために実家に電話をしたことです。コロナ前であればまずしないことでしたが、電話越しの母から「外に出なさい」と言われたことが気づきになりました。孤独を加速させていたのは何もコロナ禍だけではなく、乱れがちだった自分の生活サイクルにあるのかもしれない。そう考え、4月下旬から毎日午前6時に起き、朝ごはんを食べ、ジョギングや散歩をし、筋力トレーニングをするようになりました。梅雨の時期が重なり外に出ることが億劫な日もありましたが、毎日、別のルートを通るようにするなどちょっとした工夫を大切にしました。まさか自分が晴れた日にはお花の写真を撮るようになるとは。心境の変化にも、良い意味で驚きました。いつでも受けられるオンデマンド授業も、1時限目であればその時間内に受けるなど、とにかく規則正しい毎日を過ごすことを心がけました。

効果は2週間ほどであらわれました。Zoomを介した部のミーティング時の発言も前向きになり、同じくZoomによる筋力トレーニングにも積極的に参加できるように。食欲も増し、体力も向上。日中の活動がとても活発になり、気分も晴れていきました。「辛い時は、素直に人に頼ってもいいんだよ」「言われたことを素直にやってみるのも、時には大事だよ」もし、私の周りで同じように孤独と向き合い、悩み、苦しんでいる人がいるとしたら、こうアドバイスするでしょう。辛い日々でしたが、大きな気づきと成長に恵まれた3ヶ月でもありました。

「人を守れる」存在になりたい

2020年8月に主将になり、部を牽引する存在としてこれまで以上に部活動に注力していましたが、俯瞰する立場で部活動に向き合うことで、後輩や先輩の大切さを改めて感じることができました就職活動においては第一志望の警備会社から内々定をいただけたので、現在は2021年11月の全日本少林寺拳法大会にて悲願の全国一位の座を目指しつつ、心身ともに「人を守れる」存在になれるよう、自分の強さにさらに磨きをかける日々です。

おすすめ