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子どもに寄り添い共に成長できる教員を目指して

2023.02.20

「特別支援教育について学びたい」という目標をもって心理学部教育発達学科に入学した大矢千尋さん。2022年、神奈川県川崎市の教員採用試験に無事合格しました。大矢さんは自身の目標に向けてどのように学生生活を過ごしたのでしょうか。大矢さんの学びの過程を紐解きます。

大矢 千尋 心理学部 教育発達学科 4年

「さまざまなことを学んだり、体験したりすること」に力を入れており、現在ボランティア活動に取り組んでいる。将来に向けて指文字や手話の勉強も開始。一方で歌や音楽が大好き。幼い頃は歌って踊る「おかあさんといっしょ」のお姉さんに憧れていたほど。中学・高校と吹奏楽部でクラリネットを担当していた。楽器の演奏や歌を歌うことが息抜きになっている。

視野を広げて定まった夢

昔から自分より年下の子どもと遊ぶのが好きでした。公園で知らない子どもと砂遊びをすることもありました。子どもの頃は、幼稚園や保育園の先生になりたいと考えていました。進路を考える中で中学生の時に担任の先生から、「小学校の先生も考えてみたら」と言ってもらい、将来の幅(視野)が広がりました。

ですが高校2年生になり、そこで大きく進路が変わりました。作業療法士に興味を持つようになったのです。リハビリテーションを通して患者さん1人1人と関わって支援ができることに魅力を感じました。ただ、本当に医療現場で働きたいかと問われたときに、病院で働くことを考えていない自分に気付きました。専門的な視点で障害がある子どものお手伝いをしたいと思っていて、学校を巡回して作業療法を行うことに興味がありましたが、改めて調べてみるとそのようなことができる作業療法士は限られていることがわかりました。

「病院で働きたいのか」「作業療法士になりたいのか」を考えた時に、「子供を支援する」「学校という場所が好き」という思いに気付き、学校で子ども1人1人と関わりたい、という気持ちが強くなりました。作業療法士への進路を考えたおかげで、自分にとって「支援」が重要なキーワードとなりました。小さい頃からお手伝いをすることが好きでしたし、人のお手伝いをするような仕事がしたいと思っていました。「手伝う」と「支援」は、近いものがあるかなと思います。このように視野を広げたおかげで、最終的に特別支援学校の教員になりたい、と目指すべき方向を定めることができました。

明治学院大学の教育発達学科へ

教育発達学科のWebサイトには「子どもたちを支える専門家」「子どもを支える仕事に従事したい」といったキーワードが紹介されており、私の将来やりたいことにピッタリでした。また、「特別支援コース」があり、特別支援学校教諭の免許を取得することができます。小学校と特別支援学校の免許が取れる大学は少ないため、とても魅力的でした。オープンキャンパスでも、障害のある方の見え方などの体験機器に触れたり、模擬授業を受けたりすると共に、教育発達学科の先生方が親身になって話を聞いてくださったことなどから、入学したいという気持ちが強くなりました。

入学後、特に印象に残った授業は「特別支援臨床基礎実習」と「特別支援臨床実習」です。大学3年生から大学院2年生までがチームを組んで、実際に心理学部付属心理臨床センターに来談している子どもの実態把握および指導プログラムに参加します。担当する子どもにあった指導目標や指導内容をチームで考えて、実践するのです。1つのことを一緒にやるため、先輩や後輩関係なく意見を出し合います。学年は違っていても活発に意見を交わしながら進めていました。

特別支援学校はチームで一人ひとりの子どもの指導や支援を考えて実施します。また、特別支援学校教諭だけが特別支援学校や特別支援学級に通う子どもを支えるわけではありません。教職員だけではなく、看護師や医師、臨床心理士や作業療法士などさまざまな専門職の方とチームを組んで支えています。将来こうしたチームの一員となると思うと、心理臨床センターでのチームによる実習はとても学びの多い時間だと考えています。

教育ボランティア・教育実習での経験

大学に入って1年生の頃から様々なボランティア活動を通して子どもと関わる経験をしてきました。1番長く取り組んでいるのが川崎市での小学校で行う教育ボランティアです。この活動を知り、自分から教育活動総合サポートセンターに問い合わせて、教育ボランティアがしたいと申し出ました。現場では授業の最初から参加し、特別支援学級の子どもと課題のプリントに取り組んだり、通常の学級の図工や体育の授業に同行してサポートをしたりしています。

自分の経験が通用せず、子どものサポートが上手くいかなかったり、指示が伝わらなかったりすることもあります。対応がうまくできず、自分の力不足を感じることはありますが、自分が関わったことで子どもが笑顔になったとき、うれしくてそのたびに特別支援学校や特別支援学級の教員っていいな、なりたいなと思っていました。「先生」って呼んでくれた時の表情が笑顔でかわいいですし、私も笑顔になり元気をもらっています。

大学やボランティアで学びを重ねつつ、4年生になり教育実習がありました。6月に小学校へ4週間、9月に特別支援学校に2週間行きました。特別支援学校への実習では、学校生活の1日を見て、小学校との違いに衝撃を受けました。これまでも小学校内に設置されている特別支援学級へボランティアの経験や特別支援学校の見学はありましたが、特別支援学校の授業に参加したり、指導や支援を行ったりするのはこの教育実習が初めてでした。特別支援学校では先に実習にいった小学校とは1日の流れなどに違いがあり、初めての経験が多くありました。朝の会の後に授業が始まる小学校とは違い、特別支援学校ではまず身体をほぐすことから始まり、身体を慣らしてから朝の会が始まります。また1コマの授業時間が短く、給食の時間は長く用意されており、時間の感覚が小学校の時とは異なるように感じました。指定された教科書もないため、学習面でも人一人の支援について専門的な視点でとても良く考えられていました。

生活上の動作で言えば、飲食物を飲み込むという「嚥下」の動作。普段何気なく飲食をしている私よりも気を付けなくてはいけない点がたくさんあります。たとえば食べ物が硬すぎては飲み込めませんし、液体にしてしまうと気管支に入ってしまう危険があります。そのため、一人ひとりに合わせたとろみをつけたり、スプーンを口に入れる際の角度に気を付けたりするなど、支援をする際に意識しなければいけないことがたくさんあるのです。もちろんこうした支援には個人差があるため個々の状況を把握していく必要があります。

こうした「日常生活」や「学習教育」に対する細部にわたった支援には専門的な知識が不可欠です。教員だけでなく、さまざまな業種の方とチームを組んで子どもたちの支援に取り組む姿を目の当たりにして、特別支援学校教諭として働くことへの意欲が一層高まりました。

教員採用試験に向けて

教員採用試験には大学の推薦制度を活用して挑戦しました。学内選考を経て、川崎市の場合は一次試験の筆記が免除となりました。筆記試験は免除となりましたが、準備すべき書類や二次試験対策もあったため、教職センターの職員や先生に助けてもらいました。小論文の添削や面接の際の回答など、教職キャリアアドバイザーの面談を予約し毎週のように相談をしていました。一方でキャリアセンターでの講座で自然と仲間ができ、一緒に集まって模擬授業や場面指導(教員役になり、児童生徒を指導する場面でどのように指導するかを実践する試験)の練習を行っていました。同じ学生目線だからこそわかることがあるのでお互いにアドバイスをすることもできました。

採用試験の結果はWebサイト上で発表されました。合格者の受験番号が掲載されているページを開くのが少し怖くてドキドキしてしまい、なかなか結果を確認することが出来ませんでした。ようやく合格者一覧の番号を見ていき、自分の番号があった時には、合格の嬉しさをかみしめ、ホッとしました。

受験までの約1年間、家族や友達、そして多くの先生方に支えられてきたので、支えてくれた方々への感謝の気持ちでいっぱいになりました。嬉しい報告ができて良かったです。

明学ってすごくあったかい

今振り返ってみると教育発達学科は人と人とのつながりが強い学科でした。チームやグループで活動する機会もあり、お互いのことを考えて協力しあう空気があります。学生同士で同じ授業を受けているからこそ、子どもへの支援の話になると熱中することもありました。先生方も距離が近く相談をしやすく、助けてもらいました。

感覚的ですけど、すごくあったかい。教務課などに相談に行った際には話に耳を傾けてもらいましたし、ボランティアセンターに行けば温かく迎えてくれ、色々な話ができました。先生に会えば、前に相談したことを気にかけて声をかけてくれます。人との繋がりが温かく、この大学の魅力なのかなと思います。

将来は子どもに寄り添い共に成長していける先生になりたいと考えています。どんな人にもいいところや素敵なところがあると思っているので、子どもの良さを見つけてほめて、悩んでいるときは寄り添って。そして子どもから学んで私も成長していきたいです。理想論かもしれません。でも私自身が大学生以前も含め多くの先生に相談して助けてもらってきました。自分が助けてもらった分、私もそのような存在になりたいと考えています。

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