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ネバーギブアップ-法の知識で人の役に立つために-

脳性麻痺の障がいをもつ関根康彦さん。幼い頃から憧れた弁護士を目指し明治学院大学法学部に入学します。その後、法科大学院に進み勉強を続け、司法試験に3度挑戦するも不合格。司法書士に進路を変え、6度目の挑戦で合格。難関試験を突破し、司法書士となります。身体的ハンディがありながら、いくつものハードルを乗り越え、念願の法律家となった関根さん。夢を諦めず、努力を続けることができたその理由とは?

関根 康彦 2010年 法科大学院 法務職研究科修了 2004年、明治学院大学法学部法律学科入学。2007年に飛び入学で法科大学院法務職研究科に進学。2010年3月修了。その後、資格試験に専念し、民間企業の人事・資産管理等を経て、2019年11月、司法書士試験に合格。横浜の司法書士法人勤務の後、2020年11月に出身地の埼玉県比企郡小川町に司法書士事務所を開所した。日曜日は事務所近くの小川教会に通うクリスチャン。好きな聖句は詩編23編4節。「死の陰の谷を行くときも わたしは災いを恐れない。あなたがわたしと共にいてくださる。あなたの鞭、あなたの杖 それがわたしを力づける。」

司法書士という仕事

司法書士という仕事を一言で説明すると、国民の権利と財産を擁護する法律家のことです。その業務は幅広く、不動産登記、商業登記、裁判事務、企業法務、成年後見、多重債務者の救済などがあります。日本は超高齢社会となり、認知症高齢者が急増しています。このような中で、成年後見をはじめとする高齢者の財産管理等のニーズが高まってくることが見込まれ、司法書士の果たすべき役割は大きくなっていくと思います。私はまだ開業して間もないので仕事の件数は少ないのですが、最初に受任した案件が印象に残っています。その案件は、コロナ禍で生活が困窮された方の生活保護申請の同行というものでした。依頼者のお話を時間をかけてしっかり伺うことによって信頼関係を築くことができました。役場に同行して申請をサポートし、手続きが済んだ時に、依頼者から「ありがとう」という感謝の言葉をいただきました。その時、この上ないやりがいを感じることができました。前々から社会的弱者の権利擁護に携わっていく法律家になりたいと思っていた私にとって、その思いを新たにするできごととなりました。

弁護士への憧れ

私は、将来は弁護士になりたいと思い明治学院大学法学部に入学しました。弁護士という仕事を知ったのは幼い時見たドキュメンタリー番組でした。その番組は、身体的にハンディがある方が司法試験にチャレンジして弁護士を目指すというものでした。私にも脳性麻痺という障がいがありましたので心に響いたことを覚えています。その当時はまだ弁護士の役割など分からなかったのですが、おぼろげに弁護士という職業に憧れを抱いていました。そして、高校時代、今後の進路を考える時期に、憧れの対象であった弁護士に自分もなりたいと思い法学部を志望したのです。

法律家としての土台となった明学での学び

法律学を学び始める上で、法学部の今尾真教授との出会いはとても大きかったと思います。先生には1年次の民法入門、2年次の2年次演習、3年次のゼミ、そして法科大学院での判例演習と法律学の学びの導入段階から発展段階まで教えていただきました。また、知識だけでなく、法的な思考やものの見方も教えていただき、それらは現在法律家として働いていく上での土台となっています。 また、学部時代に障がい者の権利擁護に取り組んでいる弁護士の先生の事務所を訪問する機会があり、将来は自分も弁護士としてその問題に取り組みたいという思いが一層強くなりました。

法科大学院時代

法科大学院での勉強はとてもハードでした。充分に予習した上で授業にのぞみ、授業では先生からの問いを受けて、質疑応答を繰り返しながら、理解を深め知識を定着させていく双方向型の授業でした。授業についていくために、朝から晩まで勉強漬けの生活でしたが、そんな時、仲間たちと過ごした時間、一緒にお昼を食べたり、机を並べて予習したり、お互いの回答を批評しあったり、そうした絆が今でも大きな財産となっています。

司法試験での挫折。新しい道

法科大学院修了後、司法試験を3回受験し、力不足で三振するという挫折もありました。その時は落ち込みましたが、「法律家になりたい」という夢を諦める気持ちにはなりませんでした。すぐに頭を切り替えて、司法試験のテキストを全部捨て、司法書士という道に進路を変更。しかし、司法書士試験も難関であり、苦労の末、6度目でやっと合格することができました。合格が決まったとき、これまでの緊張から解放されて、心底ほっとした気持ちに。その晩は久しぶりに、ぐっすりと眠ることができました。

多くの支え

確かに「法律家になりたい」という大きな志をもっていました。しかし、なぜ努力を続けることができたのか、自分でも不思議に思っています。これまでの歩みを振り返ったとき、ある時は困難に出くわして立ち止まって、またある時は無我夢中で走り続けるということの繰り返しだったと思います。努力を続けられたことや「法律家になりたい」という夢を持ち続けられたことは、家族をはじめ多くの方々の支えがあったから。挫けそうになったときには、温かい励ましの言葉や思いやりをいただきました。決して、私の意志が強いとか、チャレンジ精神が旺盛だという内的要因だけで努力を続けることができたのではないと思います。明治学院大学での学び、恩師や友人との出会い、その多様な体験は、大きな力になりました。

そして、これからのこと

明治学院大学の教育理念は“Do for Others(他者への貢献)”です。私はこれからも働くうえで、この理念を心に留めながら、法的知識をもって人の役に立ちたいと考えています。

今後、司法書士は、福祉分野の関係者と連携・協働しながら、高齢者・障がい者・生活困窮者等の法的な課題に総合的に取り組んでいくことが必要になっていくと思います。 現在、「司法ソーシャルワーク」*という新しい取り組みも始まっており、私も研鑽を積みつつ携わっていけたらと考えています。

*司法ソーシャルワークとは
高齢者や障害者などで法律の知識がない、またはコミュニケーションが不自由である人が法律にかかわる問題で困っているとき、司法・行政・福祉が連携して直接働きかけ、課題解決への支援をすること