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一歩踏み出すことで生まれた新しい視座、新しい繋がり

2022.05.23

明治学院大学に進学した1年次、シンポジウムへの参加がきっかけとなり授業選択や学科を超えた交友関係の幅が広がった田上さん。
高校時代から志している舞台照明家への道を進む中で、大学では英語力や主体的に学ぶ力が大きく成長できたと語ります。大学で得た、学問が大学の外の世界とつながっているという気づきはどのように生まれたのか。是非ご覧ください。

田上 凪 文学部 英文学科 4年舞台技術研究会にて活動を行う。マイケル・プロンコゼミ(文学部英文学科)に所属。 中学時代から照明部に所属し、高校生の時に舞台照明の道を強く志すように。 趣味はバイクの整備やスケートボード、エレキギター・アコースティックギターの演奏など多岐にわたる。

セカンダリースクールの体験とシェアハウス

母が英語劇や音楽を通して英語を学ぶスクールを自宅で開いており、2歳から参加していました。一般的な環境よりも英語に触れる機会は多かったと思います。 このスクールのプログラムを利用して、高校3年生の時に一年間カナダのセカンダリースクールで11年生として過ごしました。(注:セカンダリースクールは中等教育を提供する学校。田上さんの通っていたスクールはYear9(13歳)からYear12(17歳)までの生徒が対象)

こうした経験がきっかけとなったかわかりませんが、現在は国際学部の友達と4名でシェアハウスをしています。一緒に音楽を作ってレコーディングをしたり、リビングで団欒したりしています。

シェアハウスは多くの人が集まる場所で、まれに外国籍の方が来ることもあります。私も一度、音楽イベントで出会ったドイツの同い年の男の子を連れてきた時がありました。彼はオリンピックの映像スタッフとして日本に数カ月滞在していて、お互いの第二言語である英語で話す中で共通の趣味のスケートボードや音楽で意気投合し、一緒にスケートボードをしたり、クラブに行ったりしました。

一歩進んだことで開いた新しい世界

大学1年次、高校時代にお世話になった先生と近況報告をする中で、「しあわせの経済国際フォーラム2019」というイベントが横浜キャンパスで開催されることを教えていただき、登壇者として参加してほしいという誘いを受けました。

登壇して話した内容は出身校での学びが中心でしたが、そのイベントにはスタッフとしても参加していたため、海外からいらした方へ英語でのご案内なども行いました。

このフォーラムに参加していた国際学部の教員の方々の活動に興味を持ち、講演会やシンポジウムに参加していくうちに国際学部の学生との繋がりが深まっていきました。

そうした活動の中で明治学院大学国際平和研究所の存在を知り、英文学科の必修科目として受けていたアカデミックライティングを教えているMITCHELL Jon先生が研究所に所属していることも知りました。授業では先生の専攻のジャーナリズムについて触れることも多く、報道のリテラシーや、社会におけるジャーナリストの役割について語られる中で、沖縄の米軍基地問題など普段見聞きするニュースや映画の内容と密接に関わっていることを改めて実感し、勉強するとは、必ずしも講義やそのための課題の中で行うことではないのだなと思いました。

1つのフォーラムに参加したことがきっかけでいろいろな角度からの視野が増え自分の主体的に学ぶ力が大きく高まったと感じています。

より英語力が鍛えられたゼミ活動

私の所属する英文学科のプロンコゼミはディスカッションが中心です。その中で得たのは、「試験のような形式的な英語ではなく、自分の意見を自分の言葉で発信する力」だと思います。少しでも日本語を使うとプロンコ先生にSpeak English!!!と言われるので、自然と英語で考え、話すことが求められます。学生同士の討議を尊重してくれる先生であり、自発的な学びを重視しているとても良いゼミだと感じています。

また、毎週講義の中で考えたことを文章でまとめますので、英語で文章を書く力は、このゼミに入って成長しました。ゼミではアメリカ文学の批評や考察を行いますが、その中で、「ストーリーを理解するだけでなく、その作品のメッセージを考察する力」も得ていると感じます。

3年次には「Repent, Harlequin, said the Tick-tock Man」というSFの短編小説で「人の一生が時間によって完全に管理され、職場に遅刻したり仕事を遅らせたりするとその分寿命が縮む」、というディストピア的な社会が設定の物語についてディスカッションを行いました。

ディスカッションの中では、「これは物語の中に限った話ではない。特に日本では電車の発着時刻が細かく設定されたり、アルバイト先に5分遅刻すると数十円給料が天引きされる。そのような社会へのアイロニーが含まれているのではないか」と話し合いました。

照明家を目指すこと、相手を引き立てるための汲み取る力

中高一貫校で視聴覚委員会照明部に所属していたので、早い時期から照明家への志を抱いていました。舞台の演者としての経験もありましたが、単体では存在できない「照明」という舞台装置が、大道具や演者、脚本それぞれを繋ぐ架け橋となるという点が自分にとっての魅力です。といっても照明はあくまで舞台の一部であり、演者を引き立てることが重要です。

大学に入って所属した舞台技術研究会ではミスコンやトークイベント、配信ライブの舞台をサポートしました。進行や台本が決まっていても照明は技術的な側面が大きいだけに一任されることが多く、照明の提案をしても演者との意見のぶつかりなどは起きません。

ただ、当日や前日のリハーサルで初めて「もっとこうしたい」という意見が出てきても当日の変更は難しいので、実際に舞台に立つ方がどうしてほしいのかを事前に汲み取り、十分に魅力を引き出す力が必要とされます。

感染拡大予防対策としては当然の部分もあるかとも思いますが、舞台技術研究会の活動は屋内での活動になるので、野外でのスポーツ団体と比べ人数制限が厳しいものがあります。

制限の中ではどうしても照明の設置・実演・撤収といった一連の練習ができないことがあったのですが、舞台規模を小さくして行うことで何とか後輩たちへ技術の継承はできたかと思います。

舞台技術研究会は2021年12月に引退しましたが、お世話になっていた照明業者さんにご紹介いただき、現在は、他大学の舞台サークルで機材講習などを行っています。

世間の逆風を受けた芸術界とありたい自分

新型コロナウイルス感染症の流行以降、舞台の分野は多大な影響を受けました。自分の知る限りでも本番前日にイベントが中止になりキャンセル料が支払われなかった事や、照明家を辞め、生活のために別の道に進んだ方がいる事を聞きました。お金のためではなく生きがいとして、人生をかけて行ってきたことができなくなる。そうした現実を目の当たりにしました。スポーツへの世の中の関心の高さに対してアート界隈への関心や支援のプライオリティが低いということも改めて実感し、進路として諦めかけたことがありましたが、自分がやりたい仕事を通して観客の方々に何かしらの楽しさを届けるという姿勢に憧れと誇りを感じ、この道を進むことを改めて決意しました。

大学でさらに伸ばした英語力を活かし、文化庁の海外研修制度などを利用して海外の舞台での照明に携わることにも挑戦し、自身の照明家としての力を伸ばしていきたいと思っています。

将来は、求める演出を100%受け止めて対応するだけでなく、演者が表現したい本質的な部分を照明の持つ力で引き出し観客に届けられる「照明の表現者」になりたいです。

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