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写真展を開催して、学んだこと-長崎・福岡・東京をめぐって-

2023.05.22

「写真を通して、今しかないこの瞬間や地元の良さを伝えたい」 そんな思いでカメラを携え、学生生活を過ごす山本さん。こだわりのフィルムカメラで撮った写真はこれまで約4,000枚。友人や家族、通学風景など、何気ない日常生活を丁寧に収めてきました。2022年8月には地元・九州で初の写真展を開催。写真展の開催を決めた理由、そして学んだこととは。山本さんのカメラ越しに見える景色、学生生活に迫ります。

山本 ひかる 文学部 芸術学科 4年

九州の大学でグラフィックデザインを専攻していたが、2022年、明治学院大学文学部芸術学科に編入学。平日は通学風景、休日は自宅や散歩道に東京の名所など、「今しかないこの瞬間」をカメラに収める日々を過ごす。趣味は大学ポータルサイト(ポートヘボン)の記事チェック。好きな言葉は「しんどくない幸せをねがってる」。等身大の幸せを願う自分自身の気持ちをあらわした言葉で、学内のキャンペーンでも入選した一言。

「向いているのかな」 そう思ってチャレンジした編入学

高校卒業後、九州の大学でグラフィックデザインを専攻していました。高校時代からカメラが好きなこともあり、「手に職をつける」ことに良いイメージを持っていたため、グラフィックデザインに強い関心を抱いていました。Adobe製品などグラフィックに関するツールや商品撮影の写真撮影演習など専門的な学びに向き合う日々を過ごしていましたが、「楽しいけど、向いているのかな」 そんな気持ちになることもありました。コロナ禍により在宅期間が長くなり、自分と向き合う時間ができたことも理由かもしれません。そのような気持ちも手伝い、次第にネットフリックスでさまざまな映像作品にのめりこむようになりました。「大豆田とわ子と三人の元夫」など、特に坂元裕二さんが脚本を手掛ける作品にはまり、作品の1つ1つに出てくる言葉、俳優の挙動など、1つの作品をさまざまな捉え方で読み解く楽しさに気づきました。この経験が、芸術学科(総合芸術コース)の編入学を目指した動機となりました。

編入学で3年次からスタートすることができましたが、他の同級生に追い付くためにとにかく必死に勉強しました。月、火は横浜、水、木、金は白金と、両方のキャンパスを行ったり来たり。ハードなスケジュールでしたが、学びたいことを学べる幸せと、初めて過ごす関東での刺激的な生活で、毎日あっという間に過ぎていきました。

長谷川一先生(芸術学科教授)の「芸術メディア2年次演習」では「デジタルストーリーテーリング」の手法で3分間の自己紹介動画を作り、そこで自分語りのようなものを作りました。主に自分と親友に関する話の構成にしたのですが、撮影した動画を客観視する体験そのものがとても新鮮でした。その他の授業では自分が大好きな「ロイヤルホスト」の動画を制作するため、編集チームの募集や撮影のための店舗交渉、動画編集に至るまで一連の作業を経験し、授業で発表しました。もともと写真の他に動画制作にも関心を抱いていた自分にとって、このような授業は「楽しい!」以外の何物でもありません。芸術学科の学びは「自分の学びたいこと」と「学ぶべきこと」がマッチすることが多く、4年生になった現在も充実した時間を過ごしています。

「待つ」楽しさ

ここで少し、私とカメラの出会いについて触れたいと思います。カメラで写真を撮り始めたのは高校1年生の頃でした。一緒に遊びに出かけた幼馴染が「写ルンです」を持っていて、それまでフィルムカメラを手にしたことがなかった自分には「これがカメラ?」と衝撃を受けるほどの出会いでした。何よりも驚いたことが、「撮ったのに、すぐに見れないこと」です。スマホのカメラに慣れ親しんだ自分にとって、この経験はとても新鮮でした。現像するまでのワクワク感。仕上がった写真から感じ取る、フィルム写真ならではの質感とぬくもり。気づくと、部屋の机の横のフックには、カバンではなくフィルムカメラをかけていました。

それ以降は、撮影が日々のルーティーンとなりました。家族や友人、通学時の電車や普段の散歩道など、日々の何気ない光景の中で「あ、いいかも」と思った瞬間がシャッターチャンス。「景色がきれい」「楽しそう」などポジティブな感情がはたらくときに撮影するだけではなく、悔しいときや悲しいときなど、ネガティブな感情がはたらくときの撮影も、敢えてするようにしていました。受験の時に自分も親友もうまくいかずに凹んで泣いているときや心が落ち込んでいるときなど。ただ1枚の写真でも、思い出を積み重ねるからこそ、その時の感情、成長を感じ取ることができる作品に昇華すると考えています。

2023年の現在まで、約4,000枚(27枚撮りフィルム本数にすると約140本)を撮り続けています。撮った写真を見てくれる人たちからは「元気をもらった」「こんなにきれいに撮ってくれてありがとう」など嬉しい言葉をいただくことも多く、自分の写真がだれかの役に立っていることを実感する機会も増えていきました。写真展開催を目指すようになったのも、このようなことがきっかけです。

写真展開催を後押ししてくれた「MGアクション・チャレンジ奨励金」

「1人でも多くの人に、自分の撮った写真を通じて元気を届けたい」「けれど、写真展を開催しても見に来てくれる人はいるのかな」 写真展開催を目指すようになってからは相反する気持ちに揺れ動く日々が続きました。そんなときに目に飛び込んできたのは、ポートヘボン(大学ポータルサイト)に掲載されていた「MGアクション・チャレンジ奨励金(タイプB)」申請者募集の記事です。「MGアクション・チャレンジ奨励金(タイプB)」は、明学の公認団体に属さない個人や団体に対する課外活動のスタートアップと主体的な課外活動の実施の一部を支援することを目的とした給付奨励金で、私が入学した2022年度からスタートした制度です。気づいたら必死に要項を読み、申請書を作成する自分がいました。その後に行われた面談で学生部の皆さんから撮影した写真に対してとてもポジティブな感想を多くいただけたことは、自分にとって大きな励みとなりました。

2022年7月下旬、採択された奨励金を活用して写真展開催までの具体的な準備がスタート。写真展のコンセプト決定、会場確保、展示写真の選定・配置の検討、告知(広報)など、やることは盛沢山でしたが、協力をお願いしたら二つ返事で快諾してくれた地元・九州の友人2名と一緒に目まぐるしくも充実した準備期間を過ごしていました。展示写真を配置する際は、たくさんの写真展に足を運び、それらを見ることで、どういう配置が自分にとって良い配置かを見極めるとことからスタートしました。

そこで生きたのが、芸術学科の授業の「アートマネジメント論」で学んだ「見る人のために作ることが大事」というキーワード。「どの配置にすれば写真が映えるか」「お気に入りの写真を展示しよう」など、ついつい写真や自分を主語にしがちだった自分に、「そもそも見に来てくれる人がいるから展示会が成り立つ」という、当たり前であり、大切なことに気づかせてくれた大切なキーワードでした。たどり着いたのは、「見やすさ」というポイント。大小さまざまな写真を配置することで、見に来てくださった方の視界に留まりやすい、見やすい、わかりやすい、の3拍子揃った写真展示を目指すことになりました。展示会の準備は全てが夢中だったのでトラブルらしいトラブルは特になかったのですが、やはり1番の悩みの種は集客でした。準備に力を注げば注ぐほど「大丈夫かな」と不安になりましたが、逆にそれが原動力となり、友人から提案されたフォトスポットの設置やInstagramや口コミをフル活用した広報など、思いついたことはすべてをやることができました。「不安は原動力になる」とりあえずやってみることって大切 私が準備期間で学んだ、大切な気づきです。

写真を撮ってきて、良かった

写真展は2022年8月23日、24日に福岡県中央区で開催。初日はスタートから多くの方にお越しいただき、会場は大きな賑わいを見せました。写真展のテーマは「地元の良さ」。故郷の長崎や学生生活を過ごした福岡、東京など、私の「地元の良さ」を通じて、写真をご覧いただいた方に元気になってもらいたい、という思いから決めました。「この写真、私だ!」「懐かしい」「長崎に行ってみたいな」 友人を含め、来場いただいた方からいただいた言葉の数々に、「写真を撮ってきて、良かった」と心から報われる気持ちになりました。

写真展がきっかけで、学科の友人たちからも「写真展やってたの!?」「すごい楽しそうだったね!」
など嬉しい反応があり、そのことで学科の友人同士の新たな企画にも声をかけてもらえるようになり、友人が増えるきっかけになりました。

これからも「カメラと共に」歩んでいきたい

「困ったことがあったら、大学に相談してください」 よく聞くこのような言葉も、写真展開催のおかげで、より理解できるようになりました。私はポートヘボンに出ていた大学からのお知らせを見て、相談、応募することで、自分の悩みを解決し、夢の1つを実現する手段に出会えました。明学には、自分のやりたいことを後押ししてくれる人たちがいる。今ではそのように自信をもって言えます。

今回の写真展の経験は、写真の楽しさ、すばらしさを再認識できたことはもちろん、自分から企画し、実現する楽しさ、やりがいにも出会うことができました。この経験は、将来、映像関係の仕事に就くことを目指す上でも自分の新たな価値観になりました。自分のやりたいことで、相手に喜んでもらえること。シンプルだけど尊く、普遍的なこの価値観をいつまでも大切に、これからも「カメラと共に」歩んでいきたいと思います。

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